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儚き想い、されど永遠の想い

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410部分:第三十一話 夏の黄金その十四


第三十一話 夏の黄金その十四

「そちらを用意させてもらいました」
「薔薇の水をですか」
「それで宜しいでしょうか」
「有り難うございます」
 微笑んでだ。真理は答えた。そうしてだった。
 彼女は運ばれてきたグラスの中のその薔薇の水を飲む。するとだった。
 その味はだ。このうえもなく優しく奇麗に感じられた。そしてプティングもだ。
 やはり優しさがあった。その優しさについてだ。真理は述べたのだった。
「薔薇は優しい花だったのでしょうか」
「そうですね。おそらくは」
 義正もだ。薔薇のワインとプティングを飲みながら答える。
「人を包み込むものだと思います」
「人をですか」
「そうではないでしょうか」
 こう話す彼だった。
「実際に私も今それを感じています」
「優しさを」
「ただ。美しいだけだと思っていました」
「しかしそうではなく」
「優しくもあるのですね」
「そうですね。この花は」
「今知りました」
 また言う彼だった。
「気付かなかったのは何故か」
「教えてくれたからでしょうか」
「そうですね。貴女に」
「私にですか」
「そして薔薇達に」
 花達からもだ。教えられたというのだ。
「そうしてもらいました」
「ではこのプティングは」
「召し上がられますね」
「最後まで」
 そうするとだ。真理は微笑んで答えてだ。実際にその薔薇の菓子を食べ終えた。
 それからだ。義正はだ。三人で店を出る時にだ。
 真理にだ。こう話したのだった。
「では今度は」
「十月はですか」
「紅葉は十一月になります」
 まだ先だった。それはだ。
「十月は十月で別のものを観に行きましょう」
「秋をですね」
「薔薇とはまた違う秋を」
 まさにそれをだというのだ。
「その秋を見ましょう」
「ではその時も」
「三人です」
 その時もだった。一人ではなかった。
「私達はずっと三人ですから」
「だから十月も」
「三人で行きましょう」
 真理だけではなくだ。義幸も見ての言葉だった。
 そうしてだった。彼は店を出てだ。車に向かいながら話すのだった。
「ではその時のことは車の中でも」
「じっくりとお話してですね」
「そうしていきましょう」
「はい、それでは」
 こう話してだった。彼等は車の中に入った。そうしてだ。今度は十月に想いを馳せるのだった。そこにも秋が、三人の秋があるからこそ。


第三十一話   完


               2011・10・31
 
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