東方死人録
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一章 薬師とか穢れとか
三話 生き返ったら人じゃなくなってた。何を言っているかわからねぇと思うが私もわから(ry
<前回までのあらすじ>
ケモ耳姉貴に出会った。
ケモ耳の需要って高いと思うんだ。私はエロさより癒やしの方に比重を置いたケモミミが好きです。訳がわからないって?私だけわかれば良いのです。
「でケモ姉さん。」
「だからアタシの名前は…いや、もう良いわ。それで。」
現在会話中。数年ぶりの会話に興奮しきれないぜ!なんてことはなく。それよりも、取り敢えず私は彼女に聞かなければならない。
「私って妖怪なの?」
三話 生き返ったら人じゃなくなってた。何を言っているかわからねぇと思うが私もわから(ry
どうやら彼女の話をまとめると私は妖怪の一種らしい。
曰く妖怪というのは人の恐れなどから生まれるもの。
曰く人の恐れがなければ存在できないらしい。
ということで基本的に人を驚かしたり恐怖させたり食べたりして生きるのだ。そういう理由もあって人里の近くを根城にする者が多いとかなんとか。
「いやでも私、数年間人に会ってなかったんだけど」
それが本当なら私はとっくに野垂れ死んでいる。
「そりゃお前が特別なんだろうさ、ますます面白いね。」
どうやら私は普通の妖怪と違うようだ。しかし、だとしたらなんで人間にすぐに妖怪だって言われてしまったのか。
「ああなるほど、妖力の存在も知らないわけだ。」
妖力とは妖怪の力の源みたいなもので人の恐怖や人そのものを摂取すると回復するらしい。
「門番は大体妖怪退治屋だからな、体から溢れる妖力に気づいたんだろうさ。」
妖怪退治屋なんてのも居るらしい。まるで日本昔話だ。ふむ、つまり無意識に害のあるオーラを振りまいてたの?。無知って怖い!
「じゃあ…こうしたらどう?」
「ん?…おお全く妖力が見えなくなった。器用なもんだ。」
意識を集中するとたしかに体の中に力の流れを感じた。これが妖力なのだろう。流れがあるなら私にとって扱うのは容易い。ということで妖力を抑えてみた。
「妖力をここまで器用に扱う奴は見たこと無いね。これなら人里にすんなり入れそうだな。容姿は目立つが…うん。やっぱりお前面白いな。」
ケモ姉は嬉しそうにケラケラと笑う。まるで竹を割ったような性格だなぁと思った。
「そうだあんた、うちに来なよ。どうせ行くところも無いんだろう?」
うーん。さっき始めて会った人に着いていって良いものだろうか。迷ったがしかし行く宛もないし、人里はいま警戒状態だろう(私のせいで)。というわけで彼女に着いていくことにした。
彼女は妖怪の集落みたいな所に家を構えていた。家と言っても童話に出てきそうな木でできた小屋みたいな感じ。集落を見渡すと一つ目の昔話にいそうな奴から冒険系のラノベに出てきそうな蜥蜴人みたいなやつまでいた。これが全部人の恐れによって生まれたものなのだろう。私も人間だったら驚いて腰を抜かしそうだ。
そんな妖怪集落に住み始めて数年経った。妖怪になってからと言うもの月日が流れるのが非常に早い。
「儚~!人里襲いに行こうぜ!今日は山を3つ超えた所に行ってみようと思うんだ!」
家に入ってきたケモ姉が喜々として私に声を掛ける。儚とは私の名前のことだ。以前ケモ姉が付けてくれた。昔の名前は当然男っぽいやつなわけで今のこの少女姿には全く似合わないのだ。
なんでも命名の理由は、
『見た目が儚くて謎めいていつでも消えてしまいそうなんだよなお前…中身はただのダメな奴だけど。』
だそうだ。ダメなやつは余計だ。合ってるけど。まあ割りとこの名前は気に入っている。
「嫌だ。」
「んだよ釣れねぇなぁ」
ケモ姉に人里襲撃のお誘いがあったがいつも通りお断りする。この集落の妖怪たちは時々人里を襲撃している。そうすることで妖力を集めているのだ。
「いいの。私は使わなきゃ妖力減らないんだから。たまにおどかすだけで十分。」
「そりゃそうだけど、なにより人を襲うのは楽しいじゃないか。なあ?」
生きるための食事だけじゃなくそれを楽しんでいるのだから手に負えない。別段襲われる人間のことを憐れむつもりは無いが、半分快楽目的で殺戮を繰り返すのには恐怖を通り越して呆れてしまう。
「しかし減らないっていうのは便利だよなぁ」
私の妖力が全く減らない理由はどうやら能力のおかげらしかった。無意識に流れ出る妖力の量の『大きさ』を限りなくゼロに近づけているらしい。なんて便利!『あらゆる大きさと向きを操る程度の能力』様々である。チート能力バンザイ!
「ケモ姉も使わなきゃ当分大丈夫でしょ。人に恐怖を与える為に使いすぎなだけじゃない。本末転倒だよ。」
そうなのである。妖怪には大まかだが格という物が有る。大昔に私を襲ってきた獣みたいな奴は下の下の妖怪だったらしい。ある程度格が上がると意識を持つようになる。そうするとそう簡単に存在が消えることはない。
「あ、でもどうせ行くならまた本を取ってきて欲しいかな。」
「またかよ。よく飽きないねぇ。私なんか5文字で読むのを諦めたよ。」
やれやれとポーズを取るケモ姉。集落の妖怪達は襲撃ともに人里のものを略奪してくる。お陰でこの妖怪集落は意外とものに困らない。その中には人が作った本もありそれを私は好んで読んでいた。こんな恐竜が闊歩する大昔っぽい世界なのに意外にも為になる本や面白い小説本もある。
「だってそれ以外にやることが無いんだもの。」
「だから一緒に行こうぜって言ってるじゃないか?」
「それは嫌。」
元人間だからと言うのも理由の中には欠片ほどはあるが、それよりもなによりも、争いは好まないのだ。私はインドア派なのだから。
「まあいいや。行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
ケモ姉が出ていく。
「ああ暇だ…」
そんなことをボヤく。読んでいた本が終わりを迎えたからだ。読んでいた本は冒険譚だった。騎士が姫を救い出す典型的な奴。
あれから数日経ったがケモ姉たちはまだ帰ってこない。山の向こうって言ってたから当分帰ってこないかもしれない。妖怪たちはとても時間にルーズなのである。このままだと暇さで圧死してしまう。一度死んでるけどね。
「人里…行ってみるかぁ…」
千本矢を放たれた事件以来あの人里には行っていない。別段理由は特に無い。面倒くさかっただけなのだ。しかしやることもないし、ちょうど良い機会なのかもしれない行ってみようか。ケモ姉達は当分こっちの人里には来ないだろうし。そうと決まったら吉日。私は無地の紙を取る。しかし恐竜の居る時代なのに紙があるなんて謎である。やっぱりこの世界は元いた世界とは違う世界なのだろう。そんなことを考えつつちょっと出かけてくる旨の置き手紙を拵える。その後私は家を出た。
妖怪集落は森のなかにあり人里までは少しだけ距離がある。なので人里に向かうには森の中を歩いて行かねばならない。普通の人間だったらそれは自殺に等しい行為だが私は妖怪。まったくもって無問題なのだ。
何もここ数年何もせず本の虫になってたわけではない。ちゃんと家事をこなしたり、レシピ本もとに料理を作ったり(ケモ姉はすごく喜んでくれた)、後は妖術の研究をしたりしていた。妖術というのは妖力を元に色々な事象を起こすことである。戦闘は嫌いだがこういうものの研究は好きなので色々と技を編み出した。記憶のジャ○プ漫画やラノベを中心に分身したり变化したりはたまた火の玉を出してみたり。そんなわけで戦闘にこまることはまず無いと思っている。できるなら戦闘は避けたいけどねぇ。
そんなことを思いつつ森を進んでいくと私の耳が物音を捉えた。少し気になったのでそちらの方に足を向ける。どうせ暇つぶしなのだから寄り道して行こう。
「きゃっ…」
小さな悲鳴とともに木の根に躓く。そのせいで抱えていた薬草が手から離れた。その薬草は最近人里で流行っている疫病を治すのに必要なものだった。
本来普通の人間が一人で里の外を出歩くことは無い。しかし、街の大人の半分が病に侵されている現在、薬草の採集に割ける人員は居なかった。そこで一人で森に乗り出すことに決めたのだった。
もちろん里の者からは止められたが、しかし、いつもこっそり抜け出しては薬草を採集しているので今回も大丈夫だろうと踏んでいた。
そう、慢心していたのだ。
なんのことは無い。採集中に妖怪に見つかってしまった。それも知性のない野良妖怪。普段人里を襲ってくる者たちとは比べ物にならないくらい矮小な存在だが、現在それよりももっと私の方が弱者だった。弱肉強食は世の常。この先で待つのは「死」のただ一つだけだった。
赤と青の2色に分かれているお気に入りの服に転んだせいで泥が付く。しかしそんなことを気にする暇はない。急いで立ち上がる。長めの真っ白な髪がふわりと揺れる。
しかしもう遅かった。周りは既に異形のもので囲われていた。
「あ、ああ…」
恐怖で足が崩れ落ちる。もうどうすることもできない。一人で出てきてしまった過去の自分を呪う。しかし、とっくに手遅れである。もう祈るしか無かった。せめて私が居なくなった後病で苦しむ里の人達を助けて欲しい…と。
彼女が動かなくなったのを見て一斉に異形の者達が襲いかかる。それは単なる捕食のため。本能に基づく行動だった。
しかし、次の瞬間少女の目の前が桃色の炎に包まれた。その炎は異形の者達から発していた。
「なにこれ蜘蛛?燃えて有害なガスとか出ないよね…」
上空からゆっくりと少女が降りてきた。私と同い年くらいの少女。桃色と紫の中間の目に透き通るような白の髪。色こそ私と同じだがその宙に浮かぶ少女は何処となく浮き世離れした謎めきを感じさせる。
「こんにちは、お嬢さん。無事かな?」
彼女は物語の騎士のようなセリフと共に声をかけてきた。見た目は騎士というよりもまるで妖精みたいだななんて思う。
後書き
「儚」って子供の名前に使えない字らしいですね。
次回投稿は明日。
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