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イギリス人と肉じゃが

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第二章

「ラム酒を飲んでるんだよ」
「それでスカパフローにもラム酒を飲めるお店が多いんだね」
「ビールとかね、勿論ウイスキーもね」
 この酒もというのだ。
「よく飲めるよ」
「強いお酒多いんだね」
「イギリスらしいよね、あとね」
「あと?」
「ビーフシチューもあるよ」
 トムリンソンはにこりと笑って宮崎にこの料理も出した。
「あれもね」
「ああ、ビーフシチューね」
「まあこのお料理欧州の何処にでもあるけれど」
「それでもだね」
「イギリスでも食べていてね」
 そうしてというのだ。
「海軍でもよく食べていたんだ」
「それでスカパフローでもだね」
「よく食べていてね」
 そうしてというのだ。
「僕も家でよく作ってもらったし今もね」
「自分で作ってるんだ」
「下宿先でね」
 学校の中にある外国人用の寮に住んでいるがそこでというのだ。
「そうしてるよ」
「へえ、そうだったんだ」
「美味しいし栄養があるし身体があったまる」
 トムリンソンは流暢な日本語で話した、他には北京語も流暢に話せる。ただしどっちもいささかイギリスのスカパフロー辺りの訛りが入っている。
「だからよく食べてるよ」
「そうなんだね、じゃあね」
「じゃあって?」
「日本のビーフシチューは知ってるから」
 宮崎は笑ってトムリンソンに聞いてきた。
「そっちは」
「ああ、日本のビーフシチューだね」
 トムリンソンはビーフシチューそのものと思い宮崎に答えた。
「日本のビーフシチューなら食堂で食べたけれどね」
「美味しかったっていうんだね」
「よかったよ、実はイギリスはね」
「ああ、お料理はだね」
「よく言われている通りだからね」
 このことにはまた苦笑いになって話したトムリンソンだった。
「だからね」
「うちの大学のビーフシチューはよかったんだ」
「イギリスの大抵のお店のより美味しいんじゃないかな」
「それは何よりだよ、けれどね」
「けれど?」
「僕は今言っているビーフシチューはね」
 それはとだ、宮崎はトムリンソンに楽しそうに話していった。
「また違うんだよ」
「違うって?」
「日本のビーフシチューなんだよ」
「あれっ、だからそれは」
「わからないかな」
「僕が食堂で食べたものじゃないのかな」
「それを今日のお昼に見せたいけれどいいかな」
 笑ったままでだ、宮崎はトムリンソンにこうも言った。
「そうしても」
「うん、お願いするよ」
 トムリンソンは好奇心を覚えて宮崎に答えた。
「それじゃあね」
「うん、じゃあ今日のお昼は一緒に食べよう」
「その日本の肉じゃがを注文してだね」
「そのうえでね」
 こう話してだ、二人は実際にこの日の昼は大学の食堂に入った、そうしてそこで一緒にその日本のビーフシチューを食べることになった。
 そしてここでだ、トムリンソンは。
 宮崎が頼んだ料理を見た、白い御飯に茸の味噌汁、鱈のムニエルにサラダというメニューに加えてだった。
 ジャガイモにスライスされた牛肉、人参に玉葱そして糸蒟蒻が入っている。醤油の香りがほのかに漂っている。
 その料理を見てだ、トムリンソンは怪訝な顔になって自分の向かい側の席にいる宮崎に対して尋ねた。
「このジャガイモ料理は」
「それがビーフシチューだよ」
 宮崎はトムリンソンに笑って答えた。 
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