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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第八十八話

暗い暗い場所に、少年がいた。

髪は長く、体は細く、顔は少女のようだった。

少年の回りには、人だかりがあった。

それは、少年に近しい者達だった。

とぷん…と少年が液体の中に放り込まれた。

何か大きなシリンダーのような容器の中に、明らかに水ではない液体の中に。

それを、見た者達が、少年から離れていく。

液体中で少年がもがくけれど、シリンダーに阻まれた彼には何も出来なかった。

やがて、人だかりは消え、そこには二人の少女がたっていた。

黒い髪を後ろで纏め佩刀した少女と、紫がかったストレートをカチューシャで抑えた少女。

最後まで残っていた彼女達も、少年から離れていった。

全てに絶望した少年だったが、隣に、もう一つシリンダーがあることに気付いた。

そのなかには、一人の女が…少年の姉が入っていた。

ガシャン! と音をたて、二つのシリンダーが砕ける。

シリンダーから這い出してへたりこむ少年を、姉が見下ろしていた。

そして、その姉すらも少年をおいていく。

少年は、姉を追おうと、立ち上がる。

だが、少年の足を何者かが掴んだ。

振り向くと、一人の男が、少年の足を握っていた。

その男の顔立ちは、少年によく似ていた。

目元が、口元が…

少年を男らしくすれば、その男のようになるだろう。

少年の口から、『織斑一夏』と、少年自身の名が…否、その男の名が漏れた。

その男は立ち上がると、今度は少年の首を掴んだ。

ギリギリと締め上げる。

少年は、抵抗するようにその男を蹴りつける。

怯んだその男は、少年の首から手を離した。

少年が五指を揃えると、その手を闇が包んだ。

その手刀は、何の抵抗もなく、その男を貫いた。

だが、次の瞬間、その男の姿が少年に変わった。

少年だった人物は、少年でもなく、男でもない誰かへと姿を変えた。

誰かは、さっきまで人物だった物を貫いている手を抜き、後ずさった。

そこで、誰かは、何かに躓いた。

誰かが、何に躓いたのかを確認すると、それはシリンダーの破片だった。

そして、シリンダーの破片に映った誰かの顔は…

目も、鼻も、口も、耳も、髪も…いや、それどころか輪郭すらない、霞みだった。









side ICHIKA

「……………朝か」

目を開けると、ホテルの一室のようだった。

昨日までのホテルと違う…箒がいない…?

「やぁ、おはよういっ君」

「束さん?」

首を動かすと、隣で束さんが頬杖をついて、俺を見ていた。

体を起こすと、束さんもその隣に、俺にぴったりとくっついて腰をおろした。

「昨日、何があったか覚えてるかい?」

昨日…?

昨日は…束さんと食事して…アイツ等とベルリンを歩いて…楯無とヴィッサリオンと飲んで…

そこまで考えて、頭の片隅がズキンと疼いた。

「っぐ…!」

その後…その後…

頭の中で、金色に煌めく髪と瞳がちらついた。

「そうだ…スーサイドマスター。
スーサイドマスターと戦って…戦って…
戦って?」

そこから、記憶に靄がかかったように思い出せない。

「戦って…奴の四肢を切った…そのあと…
その……あ……と……?」

「そのあと、いっ君はデストピアをGNカノンで消し飛ばしたんだよ」

スーサイドマスターを…?

「そう…なんですか?」

「うん。そのあと倒れたいっ君を、ここに運んだんだ。
気になるならコアの映像ログを見るといいよ」

目の前にホロウィンドウを呼び出し、ログを漁ると、確かに俺はGNカノンでスーサイドマスターを消し炭にしていた。

「デストピアは灰になった。
だから、そうそう復活しない筈だよ」

「そう…ですか」

ホロウィンドウの中でスーサイドマスターを消し飛ばした俺に、多少違和感を覚えたが、些末な事だ。

きっと飛んでいた記憶の断片がそうさせるのだろう。

映像だけでなく、機体その物のログにも、GNカノンの使用履歴がある。

「いかんな…記憶が飛ぶとは…」

「いっ君は…いっ君は一人で色々抱えすぎなんだよ」

「そうですかね?」

「いっ君が何を悩んでるかは知らないけどさ、話してみない?」

話す…? 話して、どうする…?

話して…拒絶されたら…?

あの、悪夢のように、俺達…いや、俺から離れていったら…?

束さんが、俺を包み込むように抱き締めた。

「いっ君…何に怯えてるの?」

図星をつかれた俺は、体を強張らせてしまった。

「いっ君、さっき、怯えてた。
何もかもが怖いって顔してたよ」

「そんな顔を…してましたか?」

「うん」

「束さんは、何があっても俺達姉弟を、拒絶しませんか?」

「どうして私がいっ君とちーちゃんを拒絶するの?」

「本当に…俺達を見捨てないでいてくれますか?」

「うん。私の、私の夢に誓って」

束さんの瞳が、俺の瞳を真っ直ぐに見据えている。

「束さん。俺は…俺達姉弟は…
作られた人間なんです。
日本政府主導の、プロジェクト・メシア。
その計画で作られた遺伝子強化素体【メシア】。
それが俺達なんです」

たったそれだけの、短い告白。

それに対する答えも、そっけない物だった。

「ふーん…だから、何?」

「え?」

「例えいっ君とちーちゃんが人造人間だろうとロボットだろうと、いっ君はいっ君だし、ちーちゃんはちーちゃんだよ。
出自がどーとか、生まれがどーとか、関係ないよ。
今まで一緒にいた時間が、二人を二人たらしめるんだから」

だから、と束さんは続けた。

「私が…私と箒ちゃんが、いっ君とちーちゃんを見捨てる訳無いじゃないか」

例え、と続いた。

「世界中が二人を否定するなら、私は世界を滅ぼす。
奴らがISに望んだ通りの力で以てしてね」
 
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