相談役毒蛙の日常
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一日目
2026年、ALO、新生アインクラッド某所
モンスターを斬っていると、部下に話し掛けられた。
「相談役、昨日からマスターが探してましたけど、いいんですかい?こんな所に居て」
「うるさい気が散る、ヤローと二人きりなんてクソみてぇなシチュなんだ黙ってろ。どーせフィールドボスだろ?」
「ええ、まぁ…っぶね!」
部下の後ろを取ったモンスターを粉砕する。
「人の心配してる場合かよ…オラァァ!」
何をしてるかって?
「つーか!さっさと逃げましょうよ!何考えてるんですか!」
サイクロンで周囲のモンスターを一掃。
「何って…熟練度上げだろ?お前の」
「だからってトラップハウスに突っ込むバカがあるかぁぁぁ!」
むぅ、部下にバカ扱いされた…これでも学校の成績はトップ、全国模試も500位以内なのに…
「バカって言われたバカって言われたバカって言われた…」
この悲しみはモンスターにぶつけよう…
「バカって言われたバカって言われたバカって…」
「落ち込んでるならさっさと出ましょうよ!」
「そだな、出るか」
剣がライトエフェクトを纏いながら、モンスターを一刀両断。
やっぱサイクロンはいいな、気持ちが良いし威力もまぁまぁだ。
ダッシュでトラップハウスを出る。
「どうだ?あがったか?」
「はい!」
「そいつぁ上々。さて、もう一セット…」
「却下です!マスターに貴方を連れて来るよう言付かってますので」
はぁ…
「わかった、わかったから。つーかヤローと手ェ繋ぎたくないんだけど?」
「カトラスの姉御がいないんで我慢してください。
貴方は手を握ってないと直ぐに何処かへ行くので、迷子みたいに、迷子みたいに」
「おい、テメェ今何で二回言った?大事な事ですってか?お?」
「わかってるじゃないですか」
ごそごそ…ごそごそ…とおもむろにバックを漁り…
「お、あったあった」
出てきたのは青い結晶だった…やべぇ…
「悪い、用事を…」
「逃がしませんよ?転移!アルン!」
ちくせう、捕まった…
央都アルン一等地カオスブレイブズ本部
ギルドマスター執務室
「喚ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!
トード現着させられましたー。んで、なに?フィールドボスにてこずってンの?」
執務室の奥の机に居る男。
名前はテルキス。
多種族混合ギルドカオスブレイブズの団長であり、俺の親友だ。
種族はシルフで刀がメインウェポン。
タイマンに滅法強い剣士だ。
「トード、お前昨日の夜は何をしていた?」
「アミュスフィアでエロゲーしてた。
輝秋もどう?紹介状書くよ?」
輝秋…じゃなくてテルキスは青筋を浮かべながら言った。
「そうか、貴様がナニしている間にフィールドボスは倒された。
これから迷宮区に入る。パーティーを率いて攻略に入れ」
紹介状の下りは無視か。
しかしようやくだ…この層に入って八日、待ってたぜ…
「カオスブレイブズ相談役ポイズントード!ギルドマスターの命を受け迷宮区攻略を開始します!」
俺は大声で答え執務室を後にした。
向かう先は相談役執務室。
俺が与えられた部屋だ。
まぁ、ほぼ物置だが。
ガチャリ、とドアを開ける。
「遅せぇよ、今まで何やってた?ナニか?」
中では少女が姿見の前であられもない格好をしていかがわしいポージングを決めていた。
「一つ聞こう、カトラス、遂に逝ったか?頭が」
奴の名前はカトラス。
シルフの刀使い。
150センチ程の身長に垂れた犬耳のような癖毛。
そんな少女が部屋の中に居る。
普通なら喜ぶ、そう、普通なら。
「トード…俺は気付いてしまった 、ALO内の俺は美少女だ…
つまり、可愛い女の子の体に好き放題だ!
俺って天才じゃね!?トードもこのスクショ要るか!?」
この女、否男、それもちがうか…兎に角コイツは始終この調子だ、というのも。
「お前さ悩みじゃないのか?〔性同一性障害〕」
そう、コイツはリアルでもゲームでも中身は男、体は女なのである
「トード、俺は既にその件は受け入れた…」
なんだと!?
幼馴染の悩みが解決したことは喜ばしいがそれよりも驚愕の方が大きい。
コイツは一時期それを原因としてイジメを受け不登校になった事も有ったからだ。
「ど、ど、ど、どうしたんだ葵!?
具合でもわるいのか!?」
だからリアルネームまで出して心配した俺は悪くねぇ。
「バカ野郎!ドア開けっ放しでリアルネーム叫ぶなバカ!」
「す、すまん。でもお前!」
悩みが解決したってどういう事だ、と続けようした時、彼女は語りだした。
「トード、俺、気付いたんだ」
「な、何にだ?」
「俺が女ならあんな事やそんな事が女子同士のキャッキャウフフで済まされるとォォォ!!!」
心配した俺がアホだったな。
「迷宮区攻略行くぞ準備しろ」
「え?無視?無視なの?俺の世紀の発見を無視?」
はぁ…
「では逆に聞こう、どう返せと?」
「最近俺の理解者(仮)が冷たい件について」
お前の変態的思考なんて理解したくねぇよ。
「喧しいお前の生理の度に『イライラする』つって殴られる俺の気にもなれ」
と、言った瞬間カトラスが此方を向いた、あ、やべぇ…
「チェストォォォ!」
あっぶねぇ!いきなり斬りかかって来やがった!
「わ、悪い!カトラス!悪気は無いんだ!」
「当たり前だ!有ったらタマを潰す!リアルでだ!」
やべぇ!ガチギレしてるぅ!
俺は部屋から即座に離れ、エントランスに向かった。
「チクショウ!何で無駄に広いんだこのギルドホームは!」
そう、悪態を付きながらエントランスを出てアルンの街に出る。
「まぁてぁ!クソガエル!」
「俺をそんなギャグキャラの名前で呼ぶなぁぁ!うおぉ!?」
後ろから追ってきたカトラスにツッコミを入れ振り向いたその刹那、こちらに十本の矢が飛んできた。
「チッ!」
「テメェ!こんな事でそんな物を持ち出s…のぅあ!?」
カトラスが一度つがえる度に十の矢が翔ぶ。
「これぞ究極のボウガン!」
そう叫び十の矢をつがえるカトラス。
「テメェ!まさかソレの試射がしたいだけじゃねぇよな!?」
「ハッハー!当たりだ!オティヌスの弩の威力を見せてやらぁ!」
そう、奴が持つボウガンの名は『オティヌスの弩』。
このALOの元である北欧神話において主神オティヌス(オーディン)が得物としたものだ。
オーディンといえばグングニールが有名だがこの弩もバカには出来ない。
何故なら先程からカトラスがやっているように『十の矢をつがえ、十の矢を放つ』事が出来るからだ。
つい先日のアインクラッド攻略戦フロアボス戦でカトラスがラストアタックボーナスとして入手した物だ。
「ちぃ!当たれやクソガエル!」
「誰があたるか!麻痺矢を混ぜるなぁぁぁ!」
ンの野郎しれっと麻痺矢を混ぜてやがる。
しかも既製品じゃなくてウチの技工部特性の麻痺矢だ。
アレは確か対ボスモンスター用に試作されたものだったはず。
不幸にもボスモンスターには効かなかったが対異常スキルカンストプレイヤーには通った筈だ、つまり…。
「当たったらゲームオーバーじゃねぇか!」
いや、実際にゲームオーバーはしないけど男として、最古参として終わる気がする。
「チクショウ!やっぱトードにゃ当たンねぇか!」
後ろを確認しカトラスがオティヌスの弩をストレージに直したのを見て安心する、が…
「やっぱコレだよなぁ!」
とカトラスはおもむろにポーションを飲み…加速した…アレはスピードポーションか?
「ハッハァー!古参と言えどシルフにノームが勝てるわけねぇよなぁ!トードぉ!」
突進してくるカトラスを避けながら転移門へ向かう。
「おい!カトラス!オティヌスの弩の試射じゃねぇのかよ!?」
「お前を殴る理由なんざどうだっていいんだよぉ!」
クソッ!俺の幼馴染がバイオレンスな件について!
「まてやぁ!」
よし!門が見えた!
俺は門の直前に急停止し…叫ぶ!
「転移!始まりの街!」
俺が光の粒子になると同時に十の矢が飛来した…
「チッ!逃がしたか!」
始まりの街の転移門についた俺は…
「転移!イグドラシルシティ!」
再び光の粒子になる。
「ふぅ、ここまで来ればカトラスも…」
スッ、と首筋に冷たい物が当てられた。
「俺が、何だって?」
何で居るのさ…
「小便はすませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする準備はOK?」
こえぇよ…
「まて!話せば分かる!」
「問答無用!」
その日世界樹樹上イグドラシルシティに一人の男の叫び声が響いた。
しかし、特に変わった様子もなくプレイヤー達はゲームを楽しんだ。
「待って!その関節はそっちには!」
「だぁいじょぶだって、ペインアブソーバがあ・る・か・ら!」
「心が痛てぇよ!ギャァァァー!」
今日も妖精郷は平和です。
後書き
在りし日の会話。
ビショップ「GGO書きたい」
ヴォジャノーイ「あっそ」
ビショップ「だからお前はSAOとALO書け」
そんな訳で「相談役毒蛙の日常」はハーメルンでビショップが連載中の「戦場に散るロマン」へ続くストーリーとなります。
なお相談役ではアリシゼーションまで書きます。
それと、アリシゼーションが終わり、GGOから分岐するのが私が投稿している「エァツェルング・フォン・ザイン」となります。
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