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儚き想い、されど永遠の想い

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394部分:第三十話 運命の一年その十四


第三十話 運命の一年その十四

「いいですね」
「西瓜の甘さがですね」
「清々しいです。本当に西瓜は」
「夏を飾ってくれますね」
「夏の味覚です」
 義正もだ。その西瓜を食べながら話す。
「その代表の一つです。そして」
「そしてですね」
「見て下さい」
 義正はこれまで彼等がいたその庭をだ。窓から見た。その庭には今は。
 初夏の朝の、まだ暑くなっていない爽やかな日差しが差し込んでいた。それを見てだ。
 彼はだ。真理に言うのだった。
「何かが違いますね」
「夏の日差しは暑いですが」
「しかし今はまだ暑くはないです」
 心地よさ、それがあった。
 その心地よさを見ながらだ。真理、そして義幸に話すのである。
「爽やかですね」
「こうしてこの中にいますと」
「どうでしょうか」
「また外に出たくなります」
 真理は目を細めさせて義正に答える。
「朝御飯の後で」
「それでは食べた後で」
「朝顔はもうしぼんでしまっているでしょうか」
「そうですね。時間を考えますと」
「それが残念ですが」
「確かに。ですが」
 それでもだとだ。義正は真理にこうも言ったのだった。
「花は朝顔だけではありません」
「他のお花もですね」
「あります。菖蒲や菫も」
 そしてだった。他には。
「百合もありますので」
「夏のお花達がですね」
「ありますので」
「でが朝御飯の後は」
「その花達を見ましょう」 
 花だった。ここでもだ。そしてだ。
 義正はさらにだ。真理にこんなことも言った。
「八月にはです」
「八月ですか」
「海に行きませんか?」
 真理とそして我が子をだ。そこに誘った。
「そしてそこで海と浜を見て」
「素晴らしいですね。それでは」
「その後で」
 まだあった。さらにだった。
「海と空の青、雲と浜の白の後にです」
「その後にですか」
「黄金を見ましょう」
 目を微笑まさせて。義正は話した。
「それを見にです」
「黄金ですか」
「夏の黄金です」
 その黄金が何かもだ。義正は話す。
「それを見に行きましょう」
「夏の黄金ですか」
「夏にしかないものです」
「それは一体」
「八月になればおわかりになります」
 今の七月ではというのだ。だがそれでもだった。
「ではその時に。宜しいですね」
「はい」
 真理はその黄金が何かわからなかった。だがそれでもだ。
 義正の言葉にだ。静かに頷いて言うのだった。
「ではお願いします」
「八月は確かに暑いです」
 神戸でもだ。それは変わらない。
 
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