FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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荒れ狂う戦場
前書き
一昨日にはできていたのに投稿するのを忘れていました・・・orz
舞台は南方、ハルジオンの港から後退してきた蛇姫の鱗と人魚の踵の連合軍はベースキャンプを敷いて対策を練っていた。
「何という物量なんだ」
「街に入ることができないなんて・・・」
シェリアの回復魔法により復活したリオンを中心として作戦会議を行っている中、カグラはそこには加わらずテントの外で正座をしていた。
「カグラちゃん大丈夫?」
「・・・」
ミリアーナが心配そうに彼女の顔を覗く。カグラは自分が受けた辱しめのことを思い出し、どんどん表情が暗くなっていく。
「大丈夫・・・ではない」
「だよね」
ただでさえ男性が苦手である彼女が深く知らない男たちから裸体を見られたことはこの上なく恥ずかしいこと。それを知ってか知らずか蛇姫の鱗の男たちは彼女のことをイヤらしい目で見つめており、リズリーがそれを追い払っていた。
「それよりも重大なのはソフィアを拐われたことでしょ?」
そこにやって来たのは至るところに包帯を巻かれているレオン。彼は少しでも空腹を満たすためにとアラーニャやサクラたちが作ってくれているスープを持ってきたようだ。
「そうだよね・・・」
「ソフィア・・・変な目にあってなきゃいいけど・・・」
連れ去られた仲間の奪還すらできなかったことに歯痒さを感じずにはいられない。カグラは手を強く握り、顔を俯かせる。
「あんたは大丈夫なのかい?そのケガ」
「問題ないです。すぐに良くなりますよ」
治癒ができるシェリアに手早く治してもらうこともできるが、彼女も貴重な戦力。少しでも魔力の消費を抑えておきたい。そのため大きなケガ以外は消毒する程度に留めている。
「レオン、カグラ。来てくれ」
そこにリオンが現れ彼らを呼び寄せる。二人は言われるがままにテントに入ると、この日のことを質問された。
「お前たちが戦った二人のことを教えてくれ」
「何か打開策が出てくるかもしれねぇ」
リオンとユウカに言われて顔を見合わせるレオンとカグラ。なかなか口を開かない二人を見て、彼らは訝しげな顔をした。
「どうした?何かあったのか?」
しばしの沈黙。すると、カグラが最初に口を開いた。
「わからなかった・・・」
「何?」
「奴がどんな魔法を使うのか、何もわからなかった・・・」
続けてレオンに顔を向けると、彼も同様に首を振る。カグラが対峙したディマリアは魔法を使ったことは確実だが、それが何なのかは一切不明。一方のレオンに至っては天海に魔法を使わせることすらできておらず、細かな情報が何もないのだ。
「そうなると対策のしようがないな・・・」
「オオーン」
「捕虜のやつも口を一切割らないしな」
ナインハルトは捉えられているものの一切情報を口外しようとしない。彼らが拷問をしないことがわかっているのか、余裕の表情すら浮かべていた。
「俺が拷問するよ。慣れてるし」
「やめろ。それでは奴等と一緒になる」
シリルと共に相手に口を割らせることが得意になってきたレオンの提示をリオンが退ける。しかし、レオンはそれしか方法はないと食って下がっていると、突然テントに大慌てでラミアの仲間が入ってきた。
「リオン!!大変だ!!」
「どうした?」
「おい!!お前見張りはどうしたんだ!?」
彼はナインハルトの見張りを担当していたうちの一人。彼がここにいては見張りが手薄になっているのではと尋ねると、あることに気がつく。
「お前・・・なんだその血は・・・」
衣服に付いている血痕。しかし、それは彼のものではない。リオンが聞くと見張りの人物は申し訳なさそうに口を開いた。
「捕虜にしてた16の奴が・・・殺されたんだ」
「「「「「!?」」」」」
いきなりの報告に訳がわからずリオンたちも捕虜を捉えていた場所へと急ぐ。そこに付くと、彼の言っていた通り捕虜が殺されており、共に見張りをしていたうちの一人も血の海に沈んでいた。
「・・・誰に殺されたんだ?」
「わからねぇ・・・ただ、黒装束を着ている奴で、“ティオス”って呼ばれてた」
「ティオス・・・」
聞いたことのない名前に全員の不安が高まる。そいつが何者なのかわからない限り、安息の地はない。
「・・・みんな、疲れているところ悪いが見張りの数を増やす。そう伝えてくれ」
「わかった!!」
慌ただしく動き回る仲間たち。レオンはそんな中、手のひらから血が出てくるほどに拳を強く握り締めていた。
「ティオス・・・誰だか知らねぇが、絶対許さねぇぞ」
怒りに震える少年に同調する仲間たち。不安が脳裏を過る中、彼らは明日のための作戦会議へと戻っていった。
その頃妖精の尻尾の地下では、ある異変が起きていた。
ヒュンッ
牢屋に捉えられていたアジィール。その牢屋の中に瞬間移動してくるものがいた。
「いい様だな、アジィール」
「ティオス」
魔封石によって魔法を封じられているアジィールの元に現れたのは北部にいるはずのティオス。いるはずのない人物の登場に驚いたアジィールは、彼の方を睨み付ける。
「そう怒るな。俺はお前を助けに来たんだぜ」
「助けに・・・だと?」
アジィールはその言葉を信じることができなかった。元々ティオスは彼らの敵であるため、その気持ちもわからなくはない。
「あれ?ブランディッシュは?」
「あいつなら死にかけて地上に連れていかれたぞ」
ふーんとどうでも良さそうな反応を見せたティオスは、アジィールに近付くと彼の魔封石を外す。
「・・・悪いな」
「いやいや、気にすることないよ」
疑って悪かったといった意味で謝罪したアジアンだったが、ティオスはあろうことか彼の顔に手をかけた。
「そのままじゃ無様すぎて死ぬに死にきれないだろ?」
「なっ・・・おま―――」
反撃しようとしたアジィールだったがそれよりも先にティオスが彼の顔を吹き飛ばす。青年は血まみれになったかつての仲間を見て、舌なめずりしていた。
「ブランディッシュは地上か。面倒だから、後で始末することにしようか」
そう言って再び瞬間移動の魔法を使いその場から立ち去るティオス。アルバレスとフィオーレの戦いだと思われていた戦争は、思わぬ方向へと進んでいたのだった。
その頃北部の戦いから一時撤退していたスティングたちは、南部同様に作戦会議を開いていた。
「こっちの被害が大きすぎる」
「敵の数が多すぎるんですよ」
「こっちの何倍もいるよね」
「フローもそーもう」
「しかし、ここを食い止めねば」
「はい」
敵の強さ、物量を前にネガティブな意見しか出てこない。しかも彼らを逃がすためにアルバレス軍に立ち向かった四つ首の番犬のメンバーはいまだに戻らない。それがどういうことなのかは、彼らには容易に想像できた。
「何か相手の弱点とかないの?」
「今考えてる・・・けど、そんなものがあったらこうはなっていないだろうね」
「クソッ!!どうすればいいんだ!!」
トライメンズも苛立ちを隠せない。彼らは仲間を一人失い、司令塔である一夜もこの場にいないこともありストレスも疲労も大きくなっているのだ。
「あの黒装束・・・あいつが向こうの最大戦力だよな?」
「あぁ。彼より大きい魔力はなかったと記憶している」
横になっていたグラシアンが上体を起こしながらルーファスに確認を取る。彼はしばし頭を悩ませると、あることを提案した。
「・・・俺に秘策があるんだが、やってみていいか?」
「秘策があるのか?」
その時の彼の表情にスティングは何かを感じていた。しかし、追求する気にはならなかったようで、スルーしてしまう。
「そうだ。ただ、これにはスティングもローグにも手伝ってもらいたい。だから、他の奴等をお前らに何とかしてほしい」
一人でティオスの相手をするのは自殺行為。それは彼が一番よくわかっていた。グラシアンの問いかけに全員が頷く。
「聖十の男は我々が対処しよう」
「おおよ!!任せておけ!!」
「なら、僕たちはあの死神を」
「うん!!」
「しょうがねぇな」
ゴッドセレナの相手を買って出たルーファスとオルガ。それに続いてトライメンズがブラッドマンの相手に名乗りを上げた。
「3人の相手はいい。問題はもう1人だ」
「え?もう1人?」
ミネルバの言葉に驚いたスティング。彼女は彼に向かって頷いてみせると、ある事実を話し始めた。
「アルバレス軍の奥から強大な魔力を感じた。おそらく、奥にもう1人16がいる」
それを聞いて全員が顔を見合わせる。まさかここまで出てきている戦力の他にも強者が隠れているとは・・・考えただけで嫌になってくる。
「そいつが前線に上がってこない限りは対処のしようがないよ」
「そうね。まずは見える敵を倒さなくっちゃ」
「はい」
ヒビキ、ジェニーのもっともな意見にユキノが頷き、ミネルバも納得した。拭いきれない不安の中、夜は更けていった。
シリルside
「明日にはハルジオンに着く。今日はゆっくり休んでおくんだ」
「はい」
「わかりました」
ハルジオン港の解放の加勢に向かっている俺たちは森の中で野宿をしていた。今ハルジオンがどんな状態なのかはわからないが、これ以上の犠牲者を出さないためにも頑張らなければ。
「あんたも無理しすぎないでよね」
「看病するのはシリルとウェンディなんだから~」
アジィールとの戦いにより全身ボロボロのエルザさん。それでもこちらに来てくれた彼女には本当に頭が下がる。
「グレイ様、こんなこともあろうかと二人入れる寝袋を用意しました」
「ヤダよ、熱いし」
気を効かせたつもりなのだろうが、顔が見えるところがハート型の寝袋を出したジュビアさんだがあっさり拒絶されてショックを受けていた。
「で、あいつは何をしてるんだ?」
とりあえずジュビアさんの寝袋にはエルザさんが入ることになったようで、眠る準備をしていたところ、俺たちから離れたところで月を見上げているラクサスさんが気になった。
「しばらく一人にしてくれだとさ」
「あいつの気持ちもわからんではないが、あまり追い込みすぎないでほしいものだ」
この一年同じギルドに所属していた人物の死・・・それは彼の心に大きな傷跡を残していた。
俺たちは彼のその気持ちを察し刺激しないように眠りに着く。そろそろ眠れそうかと思っていたところで、ウェンディの隣にいたシャルルが勢いよく飛び起きた。
「どうしたの?シャルル」
ウェンディとセシリーはすでに眠っているので俺が声をかける。彼女は真っ青な顔をしており、額には大粒の汗が滲み出ている。
「な・・・なんでもないわ・・・」
しらを切ろうとするが彼女の様子がおかしいのは明らか。俺はシャルルを連れ出すと、何があったのかを問いかける。
「もしかして予知で何か見えた?」
「えぇ・・・最悪の未来がね」
シャルルが見たのは多くの人々が倒れている中傷一つなく立っている髪を後ろに流している男、吹雪の中動かないグラシアンさんを見て号泣するスティングさんとローグさん。そして極めつけは・・・
「顔が見えない強大な悪?」
シャルルの予知ですら顔が見えないらしいその男。何かで顔が隠れているわけではなく、シャルルの予知能力ですら透視ができないほどに強大な魔力を持っているらしい。
「このままだと、みんな死ぬわ・・・どうすれば・・・」
止めた方がいいのか、彼女は迷っていた。俺はそんな白猫の頬をつねる。
「心配するな、俺たちは絶対に負けたりしない。お前の予知なんか、覆してみせる」
対策があるわけではない。それでも俺はやれると思っている。それだけこの一年で、俺たちは成長してきたのだから。
「・・・そうね」
それ以上シャルルは何も言わなかった。彼女の不安を取り除くことができたのかはわからなかったが、気持ちが落ち着いた彼女を引き連れ、俺たちは明日に向けて深い眠りについたのだった。
第三者side
翌日、ハルジオン港ではすでに激しい戦いが繰り広げられようとしていた。
「今日こそハルジオンを奪還する!!進めぇ!!」
先頭では蝶の模様がある着物を着ているカグラを指揮を取っている。その姿を見てディマリアは昨日のことを思い出しニヤついていた。
「昨日あれほどいじめてあげたのに元気だこと」
女性としてあってはならない辱しめを受けたにも関わらず果敢に挑んでくる彼女を見てまた今日も遊ぼうかどうか迷っていたディマリア。その横を、天海が駆け抜けていく。
ダンッ
地面を強く蹴って一瞬でカグラの目の前に現れた天海。これにカグラは気が付いたが、反応が追い付かない。
「カグラ!!」
仲間の叫び声が聞こえる。天海の足が自らの体を貫こうとしたその時、間に割って入る小さな影。
ガンッ
ぶつかり合う足と足。天海の攻撃を防いだのは氷の神ことレオンだった。
「不意打ちとは随分なことするな」
「安心しろ、お前なら反応できると思っていた」
お互いに蹴りを打ち出し距離を取る。この二人の戦いに巻き込まれまいと、アルバレス軍もフィオーレ軍もその場から離れていく。
「貴様、昨日は全力で戦っていなかったようだな」
「・・・」
天海の問いにレオンは答えない。彼の言う通り全開では戦っていなかった。しかしそれは、アルバレス軍の兵隊を倒すために力を使っていたから。今日は昨日のようにはいかない。
しかしそのことは天海もよくわかっていた。
「今日は本気で戦え。そうしなければ・・・死ぬことになるぞ」
上着を脱ぎ捨て身を軽くする天海。本気モードの相手にレオンは全力で答えることを決意する。
「いいだろう。その挑戦・・・受けて立つ」
最大限に魔力を高めていくレオン。両者ともにその場から動かない。わずかな隙もなくし、如何なる攻撃にも対処するためだ。
((この勝負・・・先に動いた方が負ける))
緊張の糸に耐えきれなくなった方が破れることは目に見えていた。喧騒で慌ただしい戦場の中心で、二人のにらみ合いは続いた。
「天神の北風!!」
その頃レオンの幼馴染みであるシェリアは彼の分まで敵を凪ぎ払っていた。黒い風を小さな体から生み出し、アルバレスの兵隊たちを次から次へと蹴散らしていく。
「なんだこのチビ!!」
「やるじゃねーか!!」
昨日同様に押され気味のアルバレス軍。シェリアは戦力の差を補うためにと間髪置かずに攻撃を放っていく。
「天神の・・・」
黒い風を纏った右手を振るおうとした少女。しかしその時、彼女の服の一部が破れた。
「え!?」
何が起きているのかわからず困惑するシェリア。その理由は金色の髪をしたアルバレス軍の幹部にあった。
「ディマリア様」
「こいつは私がもらうわ」
兵の後ろから現れた彼女がシェリアの服を切り裂いたのだった。
「いやっ!!やだ!!」
みるみる切り裂かれていくシェリアの服。彼女は必死に胸元を隠すが、瞬く間に上半身が露になってしまった。
「そういう顔の女の子大好き♥昨日のコみたいに遊んであげる・・・と言いたいけど、今日は違うの。あんた回復役でしょ?めんどくさいから、死んでくれる?」
昨日のカグラに対する目とは異なり真剣そのものと化したディマリアの目。彼女は動きが制限されているシェリアに向かって剣を振り抜こうとした。
「!!」
ちょうどその時、レオンと天海の戦いにも動きが起きた。何事にも動じずにいたレオンの体がピクリと動いたのだ。彼はそれを誤魔化すためか、天海に向かって一直線に走り出す。
(仲間がやられそうになって焦ったのか)
シェリアがやられそうになったタイミングでの動きだし。彼女が殺されそうになり焦った少年は反応してしまい、突っ込んで来ざるを得なくなった。そう思っていた。
(やはりあいつとはどこか違う。未熟なところが・・・!!)
こちらに向かってくる少年の首を刈り取ろうとしたその時、天海はあることに気が付いた。出しかけた手を引っ込めその場から懸命に後方に下がる。その結果・・・
「氷神の握撃!!」
「水竜の鉄拳!!」
レオンとシリル、二人の攻撃は空振りに終わってしまった。
「天竜の鉤爪!!」
「!!」
氷の神と水竜が共闘を始めようとした頃、殺されそうになっていたシェリアの前に現れたドラゴンフォースを解放したウェンディ。彼女はディマリアの顔面を蹴り抜くと、完全なる不意打ちに女性は吹き飛んでしまった。
「ウェンディ!!」
「おまたせシェリア!!天空シスターズ再結成だよ!!」
大切な友人の登場に笑顔を見せるシェリア。二人はまた再会できた幸せと嬉しさを胸に、目の前の敵を倒すために気持ちを高ぶらせる。
「私の・・・顔を蹴った・・・?」
ウェンディに蹴りをまともに入れられたディマリア。彼女は怒りに震え、少女たちを睨み付けた。
「レオン!!動き出すの早すぎ!!」
「仕方ないだろ、お前が来るなんて知らなかったんだから」
一方シリルとレオンはせっかくのコンビネーション攻撃が決まらなかったことで言い争っていた。レオンはシリルの気配を察知したから動き出したのだが、そのタイミングが早かったこともあり、シリルとわずかにズレてしまいうまく決まらなかったらしい。
「この娘・・・いや・・・この感じは・・・」
まるで相手にされていない天海だったが、彼はその二人に攻撃をしに行こうとしない。彼はシリルとレオン、二人を交互に見ると、何やら困惑しているようだった。
「一体どういうことだ?これは」
二人の登場に違和感を覚えた青年。彼は言い争う二人をただ呆然と眺めていることしかできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
いよいよシリルが帰ってきましたよ、皆さん。
次からハルジオンでの戦いをメインに進めていきます。
ただ、北部の方もちょいちょいやっていくつもりです。
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