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若葉の夢

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第二章

「そうか、御前のその目はか」
「うん、お母さんがそうだったからね」
「だからか」
「右目はお父さんの目でね」
 水色のその目はというのだ。
「左目はね」
「お袋さんの目か」
「そうなんだ」
 紺色のそれはというのだ。
「僕はそれぞれ受け継いでるんだ」
「そうなんだな、しかしな」
「しかしって?」
「いや、その目の色ってな」
 オッドアイのどちらの目もとだ、葉造はキラに言った。
「こう言ったら何だけれどな」
「日本人の目の色じゃないよね」
 キラは笑って自分から言った。
「僕の外見自体が」
「親父さんもお袋さんも外国人か?」
「お父さんはポーランド人と日本人のハーフなんだ」
 キラは笑って父のことを話した。
「お祖父ちゃんがポーランドから北海道に来たピアノの先生で」
「祖父さんがそうなんだな」
「そこでお祖母ちゃんと知り合って」
 そうしてというのだ。
「結婚してね」
「それでか」
「何かその時ポーランドは東側とかでアメリカに亡命したとか言ってたけれど」
「ややこしいな」
「それではるばる日本まで来てね」
「御前のお祖母さんとか」
「勤務先の学校で会ってそうして結婚したんだ」
 葉造に話した。
「それでお父さんが産まれてね」
「成程な」
「それで今もお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは北海道にいるよ」
「そうなんだな」
「それでお母さんはアイルランド人だったんだ」
 キラは今度は母のことを話した。
「農業の勉強をしに北海道まで来て」
「親父さんと会ったんだな」
「二人共農学部にいてね」
「御前が能ふょうとか園芸に詳しいのは」
「うん、お父さんとお母さんの影響だよ」
 まさにというのだ。
「それでなんだ、僕は今もね」
「園芸してるんだな」
「そうなんだ、それでお父さんのルーツのポーランドやお母さんが生まれたアイルランドにも行きたくて」
 キラは少し遠い目になった、そのうえで葉造に話した。
「何時か世界一周もね」
「してか」
「ポーランドやアイルランドにね」
 こうした国々にというのだ。
「行きたいと思ってるんだ」
「世界一周か」
「他にも色々な国を巡りたいし」
「そうか、世界一周か」
「それが僕の夢だよ」
「いい夢だな、大人になったらか」
「世界一周するよ」
 絶対にとだ、キラは葉造に話した。
「絶対にね」
「そうするんだな」
「今からアルバイトしてお金貯めてるし」
「アルバイトもしてるのか」
「新聞配達ね、やってるよ」
「部活だけじゃなくてか」
「お母さんの生まれた国にも行きたいから」
 アイルランド、その国にだ。 
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