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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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次元を越えた戦い

 
前書き
最近手荒れが激しすぎてヤバイです。
日に日に割れていく箇所が増えていく・・・ 

 
「いつの間に・・・!!」

破けていく自身の服を見て驚愕するカグラ。それを見てディマリアは小さく笑っていた。

パサァ

上着だけが破けていっていたはずなのに、それは次第に大きくなっていき袴まで破けていく。どんどん露になっていく自分の肌を隠すように彼女は手で大事な部位を隠していくが・・・

「これは・・・」

彼女の体に残されたのは手に握り締めていた剣と、申し訳無さげに残された一枚のパンツだけだった。

「「「「「おおーっ!!」」」」」

美女のあられのない姿に歓声を上げる蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の男たちとアルバレス軍。

「やめ・・・見るな!!」

信じられない羞恥にカグラは赤面し怒声を上げる。それを見ていたディマリアは非常に嬉しそうだった。

「いい格好♥」
「おのれ・・・」

胸を隠し剣を構えるカグラ。しかし、ただでさえ実力差がある相手にそんな状態で勝てるないことは彼女もわかっている。

「さぁ、次は何をしてあげようかしら?」

カグラをおもちゃにして遊ぼうと考えていたディマリアが再度剣を構える。その時、カグラの体に一枚の洋服が飛んできた。

「?」
「これはレオンの・・・」

思わず服が飛んできた方向を見る二人。そこにいるのは見たこともないような真剣な表情のレオンと、不敵な笑みを浮かべている天海の姿。

(まさかあいつ・・・わたしのためにこれを?)

少年は身を軽くするために上着を脱ぎ捨てただけなのだが、そんなことなど知りもしない彼女は勝手に彼の優しさに浸りながら上着に身を包む。ギリギリではあったが、何とか今の状態を打破できた彼女はホッとひと安心。

「あのガキ・・・まさか天海とやるつもりか?」

一方のディマリアは見るからに成人していない少年を見て肩をすくめる。その表情は、呆れを通り越して憐れさを感じているようだった。

「死んだぞ、あのガキ」

天海の強さを彼女はよく理解している。そんな男にたった一人で挑もうとする無謀さは買うが、正気の沙汰とは思えない。

「フッ、それはこっちのセリフだ」
「何?」

ディマリアの顔を見てそう言った女剣士。彼女は少年のことを何も知らない彼女を可哀想に思っていた。

「あいつの実力を見たら、そんなことは言えなくなるぞ?」
「へぇ・・・」

レオンの真の力を知っているカグラは決して負けることがないと信じている。その彼女を見てディマリアは面白くなさそうにしていた。

「ラウル。リオンくんを連れてここを離れろ」
「わかった!!」
「あたしも行くよ!!」
「私も護衛します!!」

負傷したリオンを連れて少年たちから離れていくシェリアたち。レオンは不気味な笑みを崩さない目の前の男を真っ直ぐに見据える。

「この感じ・・・似ている」
「あぁ!?」

何かを呟いた天海だったがその声はレオンには聞こえなかった。少年は笑みを絶対に崩さない彼を見て次第に魔力を高めていく。

「その顔・・・ムカつくぜ」
「悪いな。俺は強者との戦いが好きなんだ」

レオンの魔力の高さ、勘の良さ、戦闘能力・・・どれを取っても一級品。さらに彼はある人物と少年を重ね合わせ、気持ちが高ぶっていた。

「この魔力の感じもまさしくあいつだ。やはり貴様は・・・」

そこまで言いかけて、口を閉じた。スイッチが入ったのだ。最高の相手には最高の戦いで応える。それこそが戦士としての礼儀。

「ん?この魔力・・・」

辺りの空気がどんどん冷えていくのを感じた。吐く息が白くなってきたことで、ディマリアは目を見開く。

「驚いただろう、奴の魔力に」

自分のことではないのに得意気な表情のカグラ。レオンの魔力は非常に高い。それこそスプリガン16(セーズ)の面々よりも・・・だが、彼女が驚いていたのはそんなことではなかった。

「なんで・・・あいつと似てるんだ?」
「あいつ?」

彼女が誰のことを言っているのかはわからなかった。しかし、ここまで冷静さを見失うことのなかった彼女の頬を一滴の汗が伝い、地面に落ちる。ひどく動揺している彼女を見て、カグラは何かあったことを察した。

「おい、どうしたんだ?」

敵ではあるものの心配してしまうところがフィオーレの民の甘いところなのかもしれない。彼女は金髪の女性に歩み寄ろうと一歩踏み出した。

ギュンッ

その時、レオンと天海は同時に動き出した。

ドゴォォン

「「!?」」

二人の拳がぶつかり合ったかと思った瞬間、カグラとディマリアの間に大きな亀裂が走った。

「「「「「うわあああああああ!!」」」」」

それを皮切りに至るところで上がる悲鳴。彼女たちは何が起きているのか理解できず、唖然としている。

「「きゃあああああ!!」」
「リズリー!!アラーニャ!!」

仲間たちの悲鳴に困惑し辺りを見回すことしかできないカグラ。ディマリアも自身の兵隊たちが打ち上げられていることに動揺していた。

「バカな・・・こんなことが・・・」
「いや・・・ありえないだろう・・・」

両軍を巻き込むほど縦横無尽に駆け巡る二人の男・・・それならまだよかった。しかし、そうではない。

「「あの二人・・・あそこから動いていないんだぞ!?」」

激しくぶつかり合うレオンと天海。しかし、彼らはどちらが押されているわけでも、押しているわけでもない。
その場で激しく多彩な攻撃を繰り出し、主導権を握ろうとしている段階なのだ。

「ディマリア様!!ここは一度下がるべきです!!」
「カグラちゃん!!ここは危ないよ!!一回距離を置こう!!」

目にも止まらぬスピードで突きや蹴りを放ち続ける氷の神と天下無双の男。これには実力者であるディマリアもカグラも、後退せざるを得ない。

「氷神・永久凍土!!」

かつて幻影の竜を数kmにも渡って吹き飛ばした魔法。この1年でさらに威力が増したそれをレオンはお見舞いする。

「いい技だ」

常人では捉えることができないほどの速度で打ち出された拳。それなのに天海は容易く・・・虫を弾くかのようにそれを払った。

「なんだこいつ!?」

レオンは決して手を抜いているわけではない。むしろ今まで出したことがないほどに魔力を解放して立ち向かっているのに、その攻撃が何も届かない。

「お前の力はそんなものじゃないだろ?」

全力攻撃が弾かれたことによりバランスがわずかに崩れたレオンの顎に強烈な膝蹴りが入る。さらには腹部に、重たい一撃が叩き込まれた。

「グッ!!」

周りから見れば互角に見えていた戦い。しかし、本人たちは全くそんな風には思っていない。イシュガルトップクラスの攻撃力のレオンの素早い技を天海は軽々と対処し、逆に隙だらけの少年に幾度となくカウンターを仕掛けていく。リオンをやられたことでレオンの負けん気が強くなっているためそれに怯まず手数を出していくから渡り合っているように見えるが、本来は天海の圧倒的優勢だ。

「もっと俺を楽しませてくれ」

今度は天海から仕掛けてくる。レオンはそれを懸命に見切り当たる直前でキャッチすることに成功した。

「テメェ・・・魔法も使わず余裕じゃねぇか」

お互いに押し合っている状態で膠着。レオンは額に血管を浮かべながら、目の前の敵の戦い方に苦言を呈している。

「ならば俺に魔法を使わせてみろ。できるならな」

その瞬間少年は完全にキレた。普段の飄々とした彼からは想像できないほどの表情で、少年は膠着していた現状から敵を少しずつ押していく。

「絶対ぇ魔法を使わせてやるよ」
「楽しみだ」

笑顔が絶えない天海にぶちギレ状態のレオン。このまま長期戦にもつれ込むのかと思われた戦いだったが、最初に悲鳴を上げたのは彼らではなかった。

ビキビキビキ

「「!?」」

足元から響いてくる嫌な音。小さかったが確実に聞こえたそれで何が起きているのかわかった二人は、慌てて後方へと飛んで逃げる。

ドゴォン

二人が離れたと同時に彼らが激しくぶつかり合ってクレーターになっていたその場所に大きな亀裂が入った。それは周りにできていたものとは比べ物にならず、あのままだったら確実に彼らは飲み込まれていたことだろう。

「チッ。水を差しやがって」

せっかくの戦いが中断したことで舌打ちをする天海。一方のレオンは、力が入りっぱなしだった手を振って痺れを取る。

(この休憩は大きい。ここから立て直せれば・・・)

いかにして飛び込もうかと思っていた少年だったが、彼の肩を後ろから掴むものがいた。

「レオン、一度引くぞ」

そこにいたのは少年の上着に身を包んだ女剣士。レオンは彼女の言葉に反論しようとしたが、後ろの仲間たちを見て口を閉じた。

「こちらの被害が大きすぎる。一度体勢を整えよう」
「・・・わかりました」

彼は破滅の冬(フィンブル)で全員の視界を無くすと、足早にその場を去っていく。吹雪がやむと目の前にラミアとマーメイドの連合軍は居らず、天海は残念そうな顔をしていた。

「逃げられた、か」

標的がいなくなったことにはガッカリしたが、それでもいい相手が見つかったと彼は笑みを絶やさない。

「天海。やりすぎだ。こちらにも被害が出ている」
「知ったことか。俺はお前らの仲間じゃないんだろ?」

二人の戦いにより多くの兵士たちに被害が出ているのはアルバレス軍も同じ。ディマリアがそれを諭そうとするが、彼は何食わぬ顔で船の方へと向かっていった。

「マリー、あいつらちゃっかりナインハルト持ってったみたい」
「だろうな。捕虜にでもするつもりだろう」

レオンが最初に下したナインハルトは敵に捕らえられた格好になった。それは残念ではあるが、こちらにも捕虜がいるため問題はない。

「・・・で、なんでそいつなんだ?」

ディマリアはヨザイネに対してそう問いかけた。なぜよりによって銀髪の髪をしたその少女を捕らえたのか、何か意図があるのはわかったが、それが何なのかわからない。

「この子、誰かに似てない?」
「誰かって・・・誰・・・」

そこまで言いかけて、彼女は察した。ヨザイネがなぜその少女を捕らえたのかの意味を。

「私、あいつのところに行ってくるわ」
「奴等は1番妖精の尻尾(フェアリーテイル)に近いところにいるはずだ。ここを片付けたら、そちらで合流しよう」

二人は小さく笑みを浮かべると、ヨザイネは翼を背中から出してその場を去ってしまった。ソフィアを連れて。

「さぁ、人類よ。お前たちは一体どうするのかな?」


















蛇姫の鱗(ラミアスケイル)人魚の踵(マーメイドヒール)の連合軍の戦いが休戦に入る前、北部では三大竜の一人が黒装束の男に向かっていこうとしていた。

「俺は仲間のおかげでここまで来れた。それをできねぇお前に、負けるわけには行かねぇ!!」

最速で飛び込んでいくグラシアン。彼は一瞬でティオスの間合いに入る。

「姿が変わっている!?」
「なんだあいつ!?」

グラシアンはカグラへと変身して速度を上げた。彼女の踏み込みの強さは一流。敵が強大だろうと、間合いに入ることは可能だ。

「ハルシネイションゾーク!!」

紫の魔力を渦のように腕に纏わせた滅竜奥義。ドラゴンをも滅するとされるそれを惜しげもなく使おうとしたグラシアン。

「ハァ!!」

手応えバッチリな技に満足げな笑みを浮かべるグラシアン。たった一撃で終演するかと思われた二人の戦いだが、やはりそんなことはなかった。

「受けてみようと思ってたけど、やっぱり大したことねぇな」
「!?」

顔面を捉えたと思われた攻撃は彼に届いていなかった。片手で易々と止められた滅竜奥義。それはティオスの顔を隠している黒装束を飛ばすことができないほど、威力を吸収されてしまったのだ。

「バカな・・・」

青年の手を払い、距離を置く。グラシアンは再度攻撃に出ようとしたが、それは叶わなかった。

「俺はあなたより遥かに優れた魔導士なんですよ、グラシアン」

今度は逆に相手に距離を詰められた。彼はそれに気が付いていたが、その瞬間に体に激痛が走る。

「そんな・・・」

体を貫かれその場に崩れ落ちるグラシアン。彼はまだ辛うじて息はあったものの、それがどれだけ続くかは予測ができない。

()()勝ってしまったか、俺は」

虫の息の相手には興味もないのか、他の敵に視線を向けるティオス。その彼の元に、二人の竜が立ちはだかった。

「グラシアン様!!」
「グラシアン!!」

スティングとローグに気を取られていたティオスの脇を抜けてグラシアンに駆け寄るユキノとキセキ。彼はその二人には一切興味を示さない。

「ゴッドセレナ、こいつらも俺に任せてくれるか?」
「しゃあねぇな」

渋々といったような言葉を発するがゴッドセレナは内心震えていた。ここで彼に歯向かえば自分も殺されかねない。それがわかっていたからこそ、反論せずに別の場所の援護に行ったのだ。

「仲間をやられて気分はどうだい?スティング、ローグ」
「あんた、俺たちのこと知ってるのか?」

先程からずっと気になっていた。なぜかこのティオス、初対面であるはずのグラシアンやスティングたちの名前を平然と当ててくる。それが気になったスティングがそう尋ねると、彼は意味深な笑みを浮かべた。

「もちろん知ってるよ。そして、あなたたちも俺のことをよく知ってる。といっても、昔の俺のことを・・・だけどな」
「昔の俺?」

以前どこかで会ったことがあるということなのだろうと推測したスティングたちだが、三人が共通して知っている人物には限りがある。その中で敵になるような人物がいた記憶がない。

「まぁ、知らなくてもいい。どうせ・・・」

魔力が高まったのを感じた彼らは戦闘準備に入った。しかし、彼らのそれが整うよりも早く、ティオスは二人の後ろに回り込んでいる。

「ここで死ぬんですから」
「「!?」」

信じられない速度に振り返ろうとしたスティングとローグ。それよりも早くティオスの蹴りが、ローグの足を撃ち抜いた。

「グッ!!」
「ローグ!!」

あらぬ方向に曲がった右足。スティングは心配して彼に視線を落としたつまり・・・ティオスから目を離してしまった。

「仲間ができてから、本当に甘くなったね、スティング」
「しまっ―――」

頬に突き刺さる拳。白竜の体は宙を舞い、地面を転がった。

「スティング!!」

完全に白目を向いてピクリとも動かないスティング。ローグは折れた足に渇を入れその場に立ち上がろうとする。

「その足では影になることもできない。この一撃を避けられないでしょう?」

高く振り上げられた右足。足を負傷したローグはそれを避ける方法などない。

風を切る音ともに振り下ろされようとした足。しかし、彼は何かを感じたのか、その足をローグに振り下ろすのをやめ、地面に戻し後ろを向く。

「酔・劈掛掌!!」

手のひらを向けて飛び込んできていた番犬を難なく交わすティオス。バッカスは地面に着地すると、顔を見せない青年の方を向き直った。

「待たせたな」
「バッカス」

四つ首の番犬(クワトロケルベロス)のエースであるバッカス。彼に続くようにむさ苦しい男たちが続々と戦場に姿を現した。

「バッカスか・・・これまた懐かしい奴が出てきたものだ」
「あぁ?お前、俺のことを知ってるのか?」

ティオスはどうやらバッカスのことも知っているらしく、面倒くさそうな反応を見せる。

「スティングくん!!」
「ローグ!!」

そこにやって来た二匹の猫。彼らはそれぞれの相棒の元に飛んでくると、まともに動けない彼らを揺さぶる。

「おい猫!!そいつら連れてここを離れな」
「ですが、バッカスくんは?」
「心配要らねぇ。すぐに戻る」

剣咬の虎(セイバートゥース)青い天馬(ブルーペガサス)は負傷者が続出している。ここは一旦引くのが得策だと考えたバッカスは、仲間たちと共に時間稼ぎを買って出た。

「向こうにテントを張ってます!!そこで待ってますから!!」
「待ってるからねぇ」
「あぁ、任せろ」

動けない仲間たちを連れてベースキャンプへと駆けていく虎と天馬。残された番犬を見て、ティオスは笑いを堪えていた。

「まさか、死ぬつもりですか?」
「んなわきゃねぇだろ!!」

バッカスは瓢箪に口を付けると中身を一気に飲み干す。酔っ払いと化した彼は、ユラユラと揺れながら敵を見据える。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の奴等とうまい酒を飲むためにも、負けるわけにはいかねぇんだよ!!」

考えなしに飛び込んでくる相手を見て首を振る。ティオスはバッカスの攻撃を受け止めると、その顔に手をかけた。

「あなたが天下を取ったのは、遥か昔だということを忘れないでほしいね」




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ここまでで北、南、東の最初の戦いは幕引きです。
謎多きキャラクターティオス、彼は当作品最大のトリックキャラクターです。みんなで正体を推理してみよう!!
次からは妖精たちも合流してこれるかな?
果たしてどうなるか、お楽しみに。 
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