魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第六十九話
「じゃぁ、ルールはセメント。
ただし生命に関わるような攻撃は無しで」
「オッケー!アタシはいつでもいいぜ!」
「では、良いか?
両者構えて…
始め!」
火燐さんの通う道場。
師範の立ち会いの下、俺と火燐さんの手合わせが始まった。
余人を交えず…というリクエストの通り、ここには俺達二人と師範しかいない
互いに構えた状態で睨み合う。
始まりが告げられても、火燐さんは動かない。
こちらのスキを窺っているようで、こちらから目を離さない。
こちらにのみ注意が向いている…
好都合だ。
火燐さんから、わざと目を離し、隙を見せる。
好機と思ったか、半身の火燐さんが後ろ足に力を込める。
恐らくはフェイントと気付かれては居るだろう。
それを正面から撃ち破り、ペースを掴む算段の筈だ。
一歩、二歩と近付いて来た。
火燐さんの息遣いが、手に取るようにわかる。
火燐さんの意識の合間、そこを狙い、此方も一歩足を出す。
零拍子と言って、相手の意識の隙間を突く篠ノ乃流の奥義の一つだ。
篠ノ乃流は女性の為の剣術だ。
蝶のように攻撃をいなし、蜂のように隙を突く。
意表を突かれた彼女は、攻勢から防御に転じようとするが、遅い。
体重をのせた正拳突きを放つ。
彼女の中途半端なクロスガードが、俺の拳によって崩れた。
体勢が崩れた彼女へ、インファイトを仕掛ける。
右フック、エルボー、ジャブ、アッパー…
続いて廻し蹴り、からの踵落とし…
しかし最後の踵落としを、掴まれてしまった。
「嘗めんな!」
マズイ!
掴まれた足を振り回され、スイングされ、投げ棄てられた。
だが、それがどうした?
空中で体勢を立て直し、道場の壁を蹴り、彼女の上へ。
「ゼアアアアァァァァァァァ!!」
前へ回転し、その勢いのまま、空中から踵落としを放つ。
俺の足と彼女のガードがぶつかり、轟音が響きわたる。
「っぐ…!」
彼女の本気のガードは破れず、宙返りで離脱する。
スタート時と同じ間合いまで、離脱し、再び構える。
「いってーなー!」
「ガードしといてよく言うぜ…」
互いに、ほぼ無傷、ノーダメージ…
「おい、一夏君、まだ本気じゃねーんだろ?」
「そっちもね」
「じゃぁ…お互い本気で行こうぜ!」
「OK!」
彼女が構え、此方を誘って来る。
「やってやろうじゃねぇか…剛気功!」
剛気功は、正確に言えば魔法ではない。
ヒトが誰しも持つ生体エネルギー。
それこそが気や魔力だ。
「へぇ…"気"ってヤツか?」
「ご明察」
火燐さんの蹴りを、腕一本でガードする。
「くっ…なるほど…硬い…」
「ええ、俺の素の耐久力なんて貴女の半分以下ですから」
「だったらこっちも本気で行くぜ!」
彼女は突然逆立ちし、カポエラキックを繰り出した。
回転から産み出される蹴りを、気を纏った腕で受け流す。
数回目の蹴りの後、彼女の両足が、俺を捕らえた。
「しくった!?」
そのまま、ひねりを加えた動きで、地に足を着けず、俺を放り投げた。
「ちぃっ!」
今度は三角跳びをし、彼女へ跳び蹴りを放つ。
接触の瞬間、あろうことか彼女は拳で蹴りを受け止めた。
「まじかよ……」
まさか今のを拳で受け、競り負けないとは……
「そこまで!」
そこで、師範が止めに入った。
「師匠!?」
「彼には、お前ではまだ勝てない」
「まだ決着がついてないんだからわかんねーじゃん!」
すると師範が、此方を向いた。
「少年、わかるな?」
きっと師範が聞いているのは、止めた理由だろう。
「ええ。きっと続けても互いに勝ちも負けもしないでしょうね。
彼女には技が、俺には気があり、総合力では火燐さんが上ですが、俺の守りを抜けはしないでしょう」
火燐さんは攻性特化、対して気を纏った俺は防御特化。
「彼の言う通りだ」
「はい…わかりましたよ師匠…」
火燐さんが渋々引き分けを認めた。
「一夏君!いつかぜってー勝つからな!」
「はい、俺も再戦を待っています」
こうして、月日のちょっとした疑問から始まった出来事は、その幕を閉じた。
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