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儚き想い、されど永遠の想い

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350部分:第二十七話 このうえない喜びの後でその二


第二十七話 このうえない喜びの後でその二

「そのことは忘れてはいけないです」
「そうだね。ここは日本だから」
「そのことを忘れずにいきましょう」
「うん、本当に」
 義正は妹の言葉に確かな顔で頷いた。しかしだ。
 ここでだ。義美はだ。兄にこのことを尋ねてきた。
「それでなのですが」
「それで?」
「お兄様にも子供が産まれましたね」
 微笑んでだ。話をこのことに変えてきたのである。
「そうでしたね
「うん、そうだよ」
「男の子だとのことですが」
「元気だよ、本当にね」
「それならお名前は」
「義幸にしたよ」
 義正も微笑んでだ。その名前にしたというのである。
「最初から決めていた通りね」
「義幸ですか」
「うん。正しく幸せになれるようにって」
「そして正しいはですね」
「人として正しいという意味でもあるから」
「我が家の言葉ですね」
 義美にもあるだ。それだというのだ。
「我が家に代々入っている」
「そう。僕にも兄さん達にも」
「そして私にも」
「人として正しくなる」
 だから義だというのだ。八条家にとって義とはそれだけの意味がある言葉だということもだ。二人は含みそのうえで今話をしているのだ。
「あの子にもそうなって欲しいから」
「それと共に幸せに」
「そう思ってね」
 それでだ。その名前にしたというのだ。
「妻ともよく話し合って」
「いいことです。そして」
 一呼吸置いてからだ。義美は微笑みのまま兄に答えた。
「いい名前です」
「義美も気に入ってくれたね」
「私は義という言葉が好きです」
 正しい、それがだというのだ。
「それもありますが何よりです」
「幸せがだね」
「好きです。その意味も言葉も」 
 だからだとだ。兄に話すのである。
「お兄様はまことに」
「いい名前を。子供につけたね」
「そう思います。ではこれからはですね」
「うん、妻と三人でね」
 その我が子を入れてだ。三人でだというのだ。
「幸せになるよ」
「頑張って下さい。家庭のことも」
「仕事のこともね」
「我が国はこれからも発展していきます」
 明治維新からそれは続いている。日露戦争の後の財政問題があったがそれでもだ。日本の成長は依然として続いているのである。
 そのことを踏まえてだ。義美は兄に話すのである。
「ですから」
「義美もその為にだね」
「女の身ですが」
「いや、もうそんなことを言う時代じゃないよ」
 兄は妹のその女だからという言葉は打ち消させた。そうしてだ。
 このことをだ。彼女に話したのである。
「最近女性の権利を主張する人もいるしね」
「そうですね。文壇でも確かな人が出ていますし」
「与謝野晶子。あの人は凄いよ」
 日露戦争からだ。この女流歌人は知られてきていた。
 
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