おぢばにおかえり
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第四十三話 阿波野君が気に入れられてその十四
「ないからな」
「それにこの子そうした子じゃないわよ」
お母さんは何か阿波野君をやけに気に入っていました、それが言葉いも出ていました。
「安心して行ってきなさい」
「それじゃあ」
「ええ、今からね」
「じゃあ先輩宜しくお願いします」
「お弁当を持って」
あと飲みものもです。
「行きましょう」
「いや、楽しみですね」
「何かおぢばにいる時と同じね」
ふとこうも思いました。
「どうして阿波野君をよく一緒にいるのかしら」
「これこそお引き寄せよね」
「そうよね」
妹達は笑ってこんなことを言いました、人ごとだと思って。
「お姉ちゃんのそれよね」
「まさにね」
「誰ともそうにしても」
私は妹達の言葉に眉を曇らせてしまいました、確かにお引き寄せは誰にもあって誰ともですけれど。
「阿波野君はね」
「僕はですか」
「何で会うのかしら」
毎日だから余計にこう思います。
「何か一学期に急に会ったし」
「入学手記の後で」
「始業式でしょ?」
本当にその日に会いました。
「何で会ったのよ」
「それから毎日ですからね」
「同じ奥華で」
同じ高校であるだけでなく所属の大教会もです。
「こうして実家でも会って」
「本当にお引き寄せって凄いですね」
「そうね、祖神様の思し召しにしても」
本当にわかりません、そしてこうこうお話している間にです、お母さんがお弁当を作ってくれてでした。
「はい、行ってきなさい」
「行って来るわね」
「先輩に案内してもらいます」
今一つはっきりしないお顔になっていると自分でもわかる私とは正反対に相変わらず能天気なまでに明るい阿波野君です、その笑顔でお母さんに挨拶をしました。
「それじゃあ」
「ええ、千里宜しくね」
「先輩宜しくお願いします」
「わかったわ」
私は少し憮然として応えました。
「それじゃあね」
「八条町の色々なところを見たいんで」
「わかったわ、案内させてもらうわ」
こうしてです、私はお弁当と水筒を持って阿波野君を連れてお家を出ました。何か釈然としないまま色々とはじまりました。
第四十三話 完
2017・4・6
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