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儚き想い、されど永遠の想い

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349部分:第二十七話 このうえない喜びの後でその一


第二十七話 このうえない喜びの後でその一

              第二十七話  このうえない喜びの後で
 義正はだ。今は仕事の関係で妹と共にいた。
 百貨店の中を視察してからだ。こう義美に述べた。
「内装もよくなってきているな」
「そうですね。英吉利風で統一されていますね」
「それが豪奢で紳士的に見える」
「はい、とても」
 義美も兄に対して話す。二人は今は義正の執務室にいる。そこでだ。
 二人で話している。ソファーに座り紅茶を飲みつつだ。
 そのうえでだ。彼女は言うのである。
「他にもエスカレーターとエレベーターもですが」
「あれもだね」
「はい、英吉利風にして正解でした」
「最初は冒険かと思ったけれど」
「お客様はそこにハイカラなものを見られるので」
「ハイカラだね」
「はい、ハイカラです」
 それをだというのだ。
「ですからレストランもです」
「トンカツにスパゲティが人気らしいね」
「ハンバーグにエビフライもです」
 洋食がだ。人気だというのだ。
「それもかなりです」
「あのレストランも内装を英吉利風にしているけれど」
「英吉利自体は料理は決してよくはありません」
 義美はこのことはよくわかっていた。彼女自身が両親の仕事についていってその国に行ったことがあるからだ。だからこそ知っているのだ。
「貴族の食事も庶民の食事もです」
「らしいね。どうも」
「しかしです。日本人が料理すればです」
「それが大きく変わる」
「ビーフシチューやカレーライスも元々は英吉利の料理でした」
 カレーは印度から英吉利に入りだ。そして日本に入ったのだ。
「それを日本人の口に合うようにしたのがです」
「僕達が食べているそのカレーだね」
「そうです。ビーフシチューも同じで」
 そして他の洋食もだというのだ。
「ハンバーグは独逸のものですが」
「本場では味が違うね」
「独逸人と日本人では舌が違うます」
 今度は独逸についての話だ。義美はそれを言うのである。
「例えばナポリタン、スパゲティで人気があるあれも」
「あれもというと?」
「伊太利亜にはないスパゲティです」
 そうだというのだ。伊太利亜本国にはないものだというのだ。
「我が国でできたものです」
「そうだったのか」
「はい、日本人の口に合うものにされたものです」
「ううむ、そうだったのか」
「意外でしたか?」
「ずっとナポリのものだと思っていた」
 彼にしてもそうだったというのだ。その名前から。
「しかし実は違っていた」
「そうです。日本人が作ったものです」
「他の料理も」
「そうです。洋食はです」
 それ自体がだというのだ。洋食そのものが。
「全て日本人の舌に合う様にされています」
「西洋のものにしても」
「そうです。若しも完全に英吉利や伊太利亜、独逸のものにすると」
「かえって駄目だね」
「この百貨店にしてもです」
 英吉利風のだ。この百貨店にしてもだというのだ。
「やはりです」
「そうだね。日本だね」
「完全な英吉利ではかえってお客様が落ち着きません」
 そうだというのだ。完全にそうだとだ。
「やはりここは日本ですから」
「そうだね。日本だから」
「日本の味でなければなりません」
「忠実に再現し過ぎてもね」
「お客様は喜ばれません」
 ひいては商売にならない。そうだというのだ。
「ですから。日本です」
「洋食でも。英吉利風でも」
「はい、日本です」
 これはどうしてもだというのだ。
 
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