儚き想い、されど永遠の想い
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345部分:第二十六話 育っていくものその十一
第二十六話 育っていくものその十一
「何かあればいいけれど」
「ケーキがあります」
婆やが笑顔でこう答えた。
「それにクッキーも」
「クッキーもですか」
「どれにされますか」
微笑みだ。義正に対して問う婆やだった。
「ケーキかクッキーか」
「クッキーにするよ」
義正は微笑みだ。それにすると答えた。
「ではそれに」
「はい、それでは今から持って来ます」
こうしてだった。真理の出産を待っている間にだ。
彼は紅茶を飲みクッキーを食べる。そうしながら時を待つ。
その中でだ。婆やがまた彼に話した。今は義正が言いだ。三人で紅茶を飲みクッキーを食べている。その中でだ。婆あは言ったのである。
「主人が言っていました」
「御主人がですか」
「そうです」
佐藤の言葉にもだ。婆あは笑顔で応える。
「男はこうした時はもどかしくて仕方がないですが」
「それでもですね」
「楽しみにして待つことだと」
「そう言われたのですか」
「それが男の務めだと」
それがだとだ。務めだというのだ。
「楽しみにです」
「では今の僕は」
紅茶を飲みつつだ。義正が応えた。
「こうして紅茶を飲み。真理さんが出産されるその時を」
「楽しみですね」
「不安ではあります」
果たしてだ。子供が無事に生まれるかと思うとだ。
それは不安で仕方ない。しかしだというのだ。
「ですがそれでも」
「楽しみですね」
「期待ですね」
それがあるというのだ。今の彼の中には。
「それに希望ですね」
「不安よりも大きいでしょうか」
「大きくなってきました」
微笑みだ。婆やに答えた。
「貴女に言われて」
「そうですか。私の言葉で」
「そうなりました」
そうだと答えてだ。そうしてだった。
また紅茶を口に含む。そしてこうも言ったのだった。
「若しかして結婚はです」
「結婚は」
「お茶と同じかも知れませんね」
その紅茶を味わっての言葉だった。
「最初はどんな味なのか不安になりそれ以上に期待してです」
「それを見て楽しくもありですね」
「はい、それで」
さらにだというのだ。
「飲むとです」
「その味にですね」
「身を浸してしまい離れられなくなります」
そうなるというのだ。さらに。
「幸せの中に」
「そうですね。そしてずっといたくなりますね」
飲みたくなるし飲む。それをこう表現して話す婆やだった。
「そうなりますね」
「はい、それに」
「それにですね」
「子供が生まれることは」
そのこと、今のこともだ。彼は話していく。
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