十六夜咲夜は猫を拾う。
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第13話
魔理沙と白夜の特訓をぼうっと見ていたせいなのか、日常的に時計を見ないせいなのか。
どちらにせよ、その時間帯にこんなに空が明るいのはおかしい。もうすぐで19時になろうとしている時に、まるで真昼間の様な空の明るさは迷惑極まりない。
特に、レミリアやフランの様な吸血鬼にとっては陽の光は大敵なのだ。そんなものがずうっと沈まないで存在している…とてもじゃないが、耐えられるわけがない。
『…これも…白夜の能力なのか!?』
『わ、わからない…けど、多分そうかもしれないです…』
『今すぐ治すことはできないの!?』
『や、やってみます…!!』
霊夢が白夜に今すぐ直すように、と急がされ
慌てる白夜。
『…しっかし悪質なもんよね』
『ん?なんでだよ』
『これを悪意持ってやってるなら速攻で退治しちゃうのに、全部無意識なのよ。無意識。自分でやりたくないことさえコントロール出来ずに無意識にやってしまうような子、退治したくてもできないわ。それに…』
続きの言葉が喉元まででかかっていたが、
それを寸前で飲み込んだ。
『…それに、なんだよ?』
『…私、白夜に………』
その時、言葉を遮るかのように、明るかった空が一気に暗くなった。
『な、治りました!夜が戻りました…!』
どうやら、夜に戻すことができたらしい。
『良かったわ。さあ、咲夜。早くディナーにしましょう』
『ただ今お作り致します。』
夜が戻ってきて満足したのか、レミリアは
どうやら夜ご飯にするようだった。
『さ、私達も帰るわよ、魔理沙』
『そうだな。じゃあな!白夜!また明日にでも教えてやるよ!』
『は、はい…!』
嬉しい気持ちと、驚いたような気持ちが混ざった表情をする白夜。だがその表情に曇りはなく、目はきらきらと蒼く宝石のように輝いていた。
『さ、咲夜さん!レミリアさん…!』
『ん…なにかしら』
いつもの、先程のテーブルへと戻ろうとする二人に声をかける。
『あ、あの、本当にありがとうございました…!私、帰り道を探すので…』
『あら、じゃあその前にディナーでも楽しんでいったらどうかしら?最後の時間くらい、ゆっくり楽しみたいじゃない』
『え、お嬢様…ですが』
『シッ』
レミリアは白夜に名前をあげた。
それはつまり、その人の存在を許し、自分の近くにおいておく、ということと同じだった。
なのに、レミリアは"最後の時間"とはっきり述べたのだ。
もしかして、本当にただ名をあげただけなのだろうか。
名くらいどうってことないのかもしれないが、
名も無き人にとって名前を貰う、というのは
は嬉しいことこの上なはずだ。
『…咲夜。今日はとびきりのものをお願いするわ』
『…かしこまりました。仰せのままに』
そして私は、時間を止めながらディナーの支度を始めた。
『…なあ霊夢?』
『あら、なにかしら魔理沙』
宙を舞い歩きではなく飛んで帰る二人。
紅魔館から博麗神社、魔理沙の家は少々遠く、歩くよりもこっちの方が早いのだ。
『さっき言おうとしてたこと、なんだ?私は白夜に…とかどうとか』
『あぁ、あれ?』
すぐ暗くなった空に気を取られ、すっかり忘れていた。
そもそも伝える気もあまりなかったが。
覚えている、というのなら教えてもいいかと思う。
『…私は、白夜には勝てる気がしないわ。って言いたかったのよ』
『おい、霊夢にしちゃあ随分弱気じゃないか?霊夢があいつに負けるなんてこと、無いと思うけど』
あの身体能力の高さと能力の強力さ。
能力を思うように使えないせいでどのような能力をいつ発動させてしまうかもわからないのだ。
能力を使えば多少は勝てるかもしれないが…
そもそも白夜は退治対象ではないし、別にそれでもいいのだが…。
『…まあ、あの子は退治対象に居ないし。勝つ勝てないはどうでもいいことね』
『………そうだな』
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