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儚き想い、されど永遠の想い

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343部分:第二十六話 育っていくものその九


第二十六話 育っていくものその九

「わしの」
「はい、私達の子供であると共に」
「わし等の孫か」
「この子がもうすぐ産まれます」
「そして育っていく」
 何時しかだ。彼の顔も。
 笑みを深くさせていた。そうして言うのだった。
「思い出すな」
「思い出されるとは?」
「御前達のことだ」
 真理を見ての言葉だった。自身の娘を。
「御前達四人の子供達がそれぞれ生まれた時をだ」
「私達のですか」
「子供はかすがいだ」
 よく言われている言葉をだ。彼も口にした。
「まさにな」
「ではそのかすがいをですね」
「御前達は授かる」
 そうなるというのである。
「これからな」
「そうですね。だからこそ」
「幸せを育むのだ」
 これが娘への言葉だった。
「御前は義正君と共にだ」
「そうしてですね」
「さらにだ」
 まだあった。その育むべき幸せは。
「生まれてくる子供と共にだ」
「はい、この娘と共に」
「間も無くだ。本当に」
 幸せがだ。生まれるのはというのだ。
「それを待っているのだ。それでだが」
「それでとは?」
「名前は決まっているのか」 
 娘の目を見てだ。そして問うた言葉だった。
「それはどうなのだ」
「名前ですか」
「それは決まっているのか」
 また娘に問うたのだった。
「どうなのだ、それは」
「男の子ならです」
 まずはその場合にはどうなのかとだ。真理は父に話す。
「義幸にしようと」
「義幸か」
「はい、義、正しいことと幸、幸せの二つを」
「その二つを名前にしてか」
「この二つを忘れないで生きて欲しいと思いまして」
 それでだ。この名前にしたというのだ。
「どうでしょうか」
「いい名前だ」
 父は娘からその名前を聞きだ。こう答えた。
「とてもな」
「そう思われますか」
「思う。正しいことも幸せも忘れてはならない」
 このことがわかっているからだ。それでだった。
 彼も満足した顔で頷きだ。こう言ったのである。
「いい名前だ。だからこそ」
「有り難うございます」
「それでだ」
 娘にだ。父としてさらに尋ねた。
「娘だった場合はどうするのだ」
「女の子の場合はですね」
「その場合も決めているのか」
「福義子にしようと思っています」
「それが女の子の名前か」
「はい、生まれた場合の」
 女の子の場合はだ。この名前にするというのだ。
「この場合はどうでしょうか」
「福もまただな」
 父はそこから話した。その文字から。
 
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