レーヴァティン
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第四十二話 山伏その一
第四十二話 山伏
山を登っていくとその先にだった、大きな館が見えてきた。木の壁と大きな建物は館というよりは砦だった。
その砦を見てだ、英雄は落ち着いた目で言った。
「大したものではないな」
「拙者達にとってはでござるな」
「どうというものはない」
こう智に応えた。
「天羽々斬と俺の腕の前にはな」
「まさにお一人で」
「今ここで刀を抜いて遮二無二切ればそれでだ」
「館も中にいる賊達も」
「滅ぼせる、だが確かに一人で攻めるよりもだ」
「四人ですね」
「四人で攻めるとより確実だな」
謙二にも答えた。
「そして出せる戦力は出せるだけ出して攻める」
「まさに全力で」
「そうしてだ」
まさにというのだ。
「勝つものだからな」
「はい、戦は手を抜くものではありません」
良太も言う。
「その戦局で出せる戦力を全て出してです」
「戦略を考えてな」
「出してそうして勝つものです」
「戦力の出し惜しみは敗北、ひいては破滅への道だ」
「ですから一人で向かうよりもです」
「四人で行けるならだな」
「四人で向かい戦ってです」
そうしてというのだ。
「勝つべきです」
「だから今もだな」
「行きましょう、では」
「それでは」
こう話してだ、そしてだ。
四人で館に向かった、するとすぐに館の門から柄の悪い如何にもという男達が出て来た。傾奇者の出来損ないの様な服の上に質の悪い具足や武器で装備している。
人相も髪型も悪い、その彼等が英雄達のものを見て言った。
「おい、何か用か?」
「俺達に何か用か?」
「若しかして俺達に入りたいのか?」
「そうじゃないならわかってるよな」
凄んだ顔で四人に言う、だが構えも取っておらず身のこなしも雑だ。
「殺すぞ」
「それが嫌なら有り金全部置いて出て行け」
「言いたいことはそれだけか」
英雄はすごむ彼等にゴミに対する声で返した。
「話は聞いてやった、全部な」
「そうか、じゃあわかったな」
「金か入るか命か」
「どれがいい」
「さっさと選べ」
「命だ」
やはりゴミに対する声で返す英雄だった、見れば目もそうしたものだ。
「それを選ぶ」
「そうか死ぬか」
「だったら覚悟しろ」
「今から殺してやるぜ」
賊共は下卑た笑みと共にようやく構えを取った、だがその瞬間に。
腰の左にあった自身の刀を抜いた、そうして居合の要領で賊達全員を一閃した。そうして全員の首を跳ね飛ばしてだった。
切断された首から鮮血を噴き出したまま立っている彼等を一瞥してだ、それまでと変わらない声で言った。
「これでいいか、貴様等の命を地獄に送った」
「まさに一瞬でしたね」
良太はゆっくりと後ろに倒れていく賊達の骸を見ながら英雄に言った。
「数人を」
「造作もない、何度も言うがこの程度の連中ならだ」
「何でもないですね」
「俺達にとってはな」
それこそというのだ。
「素通りする様なものだ」
「その程度でしかないですね」
「このまま館の中に入ってだ」
やはり素通りする様に言う。
「一人残らずそうしてやる」
「それではでござるな」
智はまだ刀を抜いていない、そのうえでの言葉だった。
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