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真田十勇士

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巻ノ百二十四 大坂入城その七

「戦うことになるぞ」
「まさかそうなるとは」
「信じられませぬ」
「夢の様です」
「その様になるとは」
 十勇士達はまずはこう思った、だが彼等はすぐに思いなおしてこうも言った。
「いや、しかしそれもです」
「殿ならば当然ですな」
「殿もかつては大名でした」
「それなら」
「そうであるな、もう殆ど忘れておったが」
 幸村は十勇士達のその指摘に笑って応えて言った。
「拙者も大名であったわ」
「はい、ですから」
「将として戦うのは当然です」
「大名とはそれだけの格がありますから」
「ですから」
「そうじゃな、では将としてな」 
 その立場でとだ、また言った幸村だった。
「城に入ろうぞ」
「そして将として戦う」
「そうされますな」
「これから」
「そうされますな」
「そうしようぞ」
 こう言ってだ、幸村は大坂城の正門の前から堂々とした入城にかかった。その時の彼等の身なりはというと。
 幸村は鹿角の赤い兜に具足と陣羽織、馬具と全てが赤備えであり彼が率いる軍勢もだった。彼の後ろには若々しい若武者姿の大助が馬に乗っていてそして十勇士達もそれぞれの獲物を持ち身なりもそれぞれの恰好を奇麗にしているもので実に傾いていた。その軍勢は真田の六文銭の旗を掲げた赤備えの軍勢で大坂城の者達も見て思わず唸った。
「うむ、見事」
「流石は真田殿よ」
「赤備えで来られたか」
「武田以来じゃのう」
「あれこそ真の赤備えじゃな」
「全くじゃ」
 大野も彼等を見て言った、既に彼等を出迎える用意を整えたうえで。
「あれこそな」
「まことにですな」
「真田家ですな」
 大野の二人の弟達も長兄の後ろに控えていて言う。
「見事な武者ぶり」
「生真面目に着こなしておられますが」
「それがまたよし」
「全くですな」
「うむ、あれでこそじゃ」
 大野はまた言った。
「真田殿、ではな」
「はい、では」
「これよりですな」
「真田殿をお迎えする」
「そうしますな」
「正門を開け、そしてじゃ」
 大野は弟達にさらに言った。
「わしが行く」
「豊臣家の執権の兄上がですか」
「ご自身がですか」
「後藤殿、長曾我部殿、毛利殿にもそうされましたが」
「真田殿にもですか」
「大名であられたしのう」
 格のこともあってというのだ。
「是非な」
「わかりました、ではです」
「我等もお供します」
「これより正門を開けて」
「真田殿をお迎えしましょう」
「将帥と兵は揃った」
 大野はこのことはよしとした。
「勇将に後藤殿、長曾我部殿が入られてな」
「木村殿もおられますし」
「武はありますな」
「そして十万の兵がおられる」
「それではですな」
「うむ、そのうえで真田殿が来られた」
 幸村、彼もというのだ。 
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