ドリトル先生と奈良の三山
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第七幕その四
そのうえで、です。実際に皆で於美阿志神社まで行ってそのうえで石の十三重の塔を見ました。するとです。
ふとです、先生達に誰かが声をかけてきました。
「ドリトル先生ですね」
「あれっ、誰?」
「何か男の人みたいな女の人みたいな」
「不思議な声ね」
「何かちょっと違う?」
「普通の声と」
「そうだね」
皆もその声を聞いて先生に言います。
「ううん、今周りは誰もいないし」
「誰の声?」
「人じゃないね」
人が誰もいないのです。
「じゃあ誰なのかしら」
「生きものにしても」
「一体」
「はい、私です」
こう言ってでした、そっとです。
皆の前に一匹の白い鹿が姿を表しました。見れば奈良公園にいる鹿と同じ種類ですが全身真っ白です。
その白い鹿がです、先生に言ってきました。
「私が声をかけさせてもらいました」
「あれっ、白い鹿さんだ」
「もう全身白いね」
「白い鹿さんってことは」
「まさか」
「うん、白い生きものは日本でも神聖とされているんだ」
先生は皆に答えました。
「この国でもね」
「そうだよね」
「狐さんや蛇さんでもそうでね」
「お猿さんでもだね」
「そう、生物学的にはアルビノといってね」
学問的なことからもお話します。
「色素がないんだ」
「身体にね」
「人間でもあるよね」
「元々白人がそんな感じで」
「完全なアルビノの人もいたわね」
「うん、コーカロイドは確かに色素が薄くて」
先生もイギリス生まれで人種的にはこちらになります。もっとも今は完全に日本人の生活様式で過ごしていますが。
「肌が白くて髪の毛も金髪だったりするね」
「それが完全に色素がないと」
「それこそだね」
「兎さんみたいになるね」
「白い兎さんみたいに」
「そう、髪の毛も僕達の金髪よりももっと薄い金髪になって」
そしてというのです。
「目も赤くなるんだ」
「それが完全なアルビノだね」
「人間にもあって」
「そうした人もいるんだ」
「そう、ただ色が白いだけでね」
あくまで色素がないだけでというのです。
「そのせいで日光には弱かったりするけれど」
「それ以外にはだね」
「他の人や生きものと変わらない」
「そうなのね」
「そうだよ」
その通りというのです。
「そのこともわかっておいてね」
「うん、わかったよ」
「アルビノはそうしたものだね」
「生物学的には」
「そうしたものなんだ」
「うん、ただ神聖視されているのは事実で」
それでというのです。
「ご神体として崇められていて霊力が備わることもね」
「あるんだ」
「そうなんだ」
「じゃあこの鹿さんもかな」
「霊力が備わってるの?」
「ひょっとして」
「私は千年以上生きています」
白鹿が先生達に言ってきました。
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