| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5章:幽世と魔導師
  第145話「親の強さ」

 
前書き
優輝の両親side。と言うよりは、一般局員勢の奔走的な話。
……何気に、“実は生きてた”的な立場の両親なのにあまり活躍できていないんですよね…。
個々でならともかく、コンビであればなのは&フェイトにも劣らない強さを誇りますから、結構ポテンシャルは高いです。
 

 






       =out side=





「くっ…!」

     ギィイン!

「はっ!」

 妖の攻撃を、剣が防ぎ、すかさず横から弓矢の魔法で貫く。
 優香と光輝。優輝の両親である二人が、九州の地で奔走していた。

「キリがないな…!」

「一人だと気を休める暇もないわね…」

 二人以外にも、複数の管理局員がいる。
 それぞれチーム分けをして、民間人の救助と妖の殲滅で役割分担をしていた。

「(防衛の戦力は、十分……)」

「(ここは妖の群れに突っ込んだ方がいい…か…)」

 民間人を守るための戦力は充分だと二人は判断する。
 そして、念話も使わずに二人は頷き合い、妖が最も多くいる場所へ駆け出した。

「優香!」

「ええ!」

 光輝が名前を呼び、それに応えるように優香が特殊な魔力弾を放つ。
 その魔力弾は上空へと飛んでいき、辺りを照らすように輝いた。

「はぁっ!」

「ギィイッ!?」

 夜中と言う暗闇の中、いきなり現れた光源に妖達は一瞬怯む。
 その隙を逃さずに光輝は切り込んだ。

「せぁっ!」

「ふっ…!」

 敵陣に切り込んだ光輝は、そのまま一回転するように斬撃を飛ばす。
 さらに上から優香が魔力弾で的確に貫く。

「……掛かってきな!」

「来なさい…!」

 優香も地面に降り、二人は背中合わせになる。
 そして、魔力を放出するように存在感を示し、挑発した。
 そんな二人を囲うように、次々と妖が現れ、襲い掛かった。

「予想通り……ねっ!」

「ああ……!」

 二人が挑発する際に行った魔力運用は、ミッド式でもベルカ式でもない。
 二人が流れ着いた世界、プリエールで覚えた運用方法だった。

「(司ちゃんの…天巫女の魔法は霊術に近い……それはつまり、扱う魔力が霊力に近い状態にあるとも言える)」

「(その世界での魔力運用法も、もちろんその傾向がある。…そう予想していたけど、ここまで思い通りになるとは思わなかったわ…!)」

 言うなれば、“プリエール式”。
 そんな運用法を取った二人は、妖にとっては恰好の惹かれる相手となる。
 それを利用して、二人は妖達を引き付けたのだ。

「ふっ!」

「はっ!」

 互いにフォローし合うように、二人は襲い来る妖を斬り続ける。
 光輝が防ぎ、優香が斬り、その隙を補うように光輝が次の妖を斬る。
 攻守の役割がきっちり分けられており、度々それが入れ替わる。
 さらにはフォローし合う瞬間に魔力弾をばら撒く事で、周囲に牽制もしていた。

「まったく!二人でこれだってのに、優輝の奴は!」

「ホント、親の尊厳がなくなっちゃうわね!」

 思い浮かべるのは、自分たちの息子である優輝の事。
 二人にとって、個人戦はもちろん、二体一でも優輝は敵わない相手なのだ。
 以前に手合わせをした事があり、連携で少し驚かす事は出来たものの、その後は導王流によってほとんど傷を負わす事が出来ずに負けてしまっていた。

「だけど、だからこそ!」

「負けてられないのよねぇ!」

 息子が頑張っているのに、自分たちは頑張らないとは何事か。
 そんな面持ちで、二人は襲い来る妖を次々と倒していく。
 息もつかせぬ連携だが、二人にとってはごく自然な事なようで、このように無駄口も叩いているのだ。

「……ふぅ…!」

「これで一段落かしら…」

 しばらく戦っている内に、襲ってくる妖が途切れる。
 一息つき、二人は周囲を確認する。

「……どうやら、そのようだな」

「…と言っても、まだまだ出てくるみたいだけど…」

「やっぱり、“門”を見つけないとどうしようもないみたいだな」

 既に“群れ”とは呼べない程までには減らしたものの、どこかからまだまだ出てくる。
 一番人数が多く割かれている地域だが、霊術を扱える存在は誰もいない。
 よって、結界などで門を隔離しない限り、どうしようもないのだ。

「それに……聞こえるか?」

「……ええ。聞こえるわ」

 周囲の戦闘の音の中に、ヘリの音が聞こえてくる。

「…警察や自衛隊も、本気で動き出したか」

「ちょっと対応が遅いと思うのは、気のせい?」

「いや、未知の状況に陥ったのだから、仕方ないと思うけどな…。納得できるかは別として」

 複数のヘリが着陸し、そこから武装した人達が降りてくる。
 一部は民間人の保護へ、一部は妖の警戒へ。
 ……そして、残りは光輝と優香を含めた管理局員へと警戒が向けられた。

「……まぁ、予想は出来てたな」

「そうね。現地人からすれば、こっちは宇宙人みたいなものだもの。……私達は元々地球の住民だけど」

 警戒されても仕方ないと、二人は納得していた。
 しかし、一部の局員は違うようで、一発触発の状況を醸し出していた。

「なぁ、あそこでやばそうな雰囲気出している奴、止めたいんだが」

「ダメだ。そこから動くな」

「(まぁ、動いちゃダメだよな。妖の方は……何とか拮抗しているか)」

 警察なども総動員で動いているためか、民間人の避難は迅速に行われていた。
 また、武装隊が何とか妖を食い止めているため、この場がすぐに混乱に陥る事はなかった。

「お前たちのリーダーは誰だ!」

「……この場のリーダーは俺だ」

「光輝!?」

 武装隊の隊長であろう人物が声を上げる。
 それに光輝が返事をし、優香が驚く。
 なぜなら、この場での指揮官は光輝ではないからだ。

「何!?おい貴様、この私を差し置いて…!」

「……本当か?」

「少なくとも、今そこで反発しそうな奴とは思わないだろう?」

 そう。本来の指揮官は今にも反発しそうな男性だった。
 そんな人物には交渉は任せられないと思い、光輝が名乗り出たのだ。

「……まぁいい。話を聞ける奴ならばな」

「とりあえず、警戒はそのままでいいから銃を降ろしてくれないか?こっちの組織、質量兵器……銃火器の類に異常に反応する奴もいるんでな」

「それは聞けない相談だ」

「そりゃ、残念だ」

 光輝は、別段交渉に優れている訳ではない。
 それでも、決して侮られないように立ち回る。

「……単刀直入に聞こう。お前たち、何者だ?今起きている状況とどう関係している」

「何者か……か。どう言ったらいいものか…」

 念話で他の局員に手出しはしないように通達しておく光輝。
 そして、問われた事に対してどう答えるべきか少し悩む。

「先に後者の質問から答える。……言わせてもらうと、直接の関係はない。だが、この状況を引き起こした原因の物を、我々は追いかけていた」

「原因の物だと……?」

「ロストロギアって言う……そうだな。わかりやすく言えば、ファンタジー物の古代兵器みたいなものだ。それが、この地に……日本に眠る災厄を蘇らせた」

「は……?」

 知らない人にも分かりやすい感じで、事実を伝えた光輝。
 だが、当然と言うべきか、武装隊の男は意味が分からないと言った表情をした。

「馬鹿馬鹿しいと思っているだろうけど、事実だ。こっちは至って大真面目に答えているぞ」

「あなた、先に管理局について……」

「……そうだったな」

 管理局について先に説明しなければ、相手にとっては頭のおかしい事を言っているようにしか取られない。
 それを優香に指摘され、改めて光輝は説明する。

「何者か、についてだが、我々は時空管理局と言う者で……有り体に言えば、いくつもの次元世界を跨ぐ、警察みたいなものだ。次元世界ってのは……異世界って認識であってたっけな?」

「ええ。少なくとも、何も知らない人にはその説明であってると思うけど」

「………」

 二人の言っている事を、少しずつ噛み砕いて理解する武装隊の男。
 聞けば聞くほどおかしな事を言っている認識だが、嘘を言っているとは思えなかった。

「まず、前提の認識から間違っている。俺達……はともかく、時空管理局と言う組織は異世界に存在している組織だ。そして……」

 そこまで言って、光輝は掌に魔力弾を出現させる。

「異世界と言うものが存在すると同時に、異世界には“魔法”が存在している。時空管理局と言う組織はその力を以って秩序を保っている組織なんだ」

「魔法……」

「まぁ、尤も、だいぶ科学よりの魔法なんだけどな」

 目の前でタネも仕掛けもないオカルト染みた事を見せられれば、武装隊の者達も信じるしかなかった。……元々、妖の軍勢で既に非科学的な事も認めざるを得ない状態にはなっていたが。

「……で、だ。先程言ったロストロギアと言うものも、魔法が関わっていてな。意味としては“古代遺産”。効果は千差万別だが……」

「今回のは、その地にかつてあった、もしくは封印されて眠っている災厄を蘇らせると言う効果」

「……と言う訳だ。危険度としては、災厄にもよるが高い方だ」

 細かい部分は理解できないものの、武装隊の男も大体は理解した。
 そして、だからこそ……。

「待て。そうなると、今起きているのは、実際に日本に起きた事がある事なのか?」

「……そう言う事になる」

「“幽世の大門”って言う、幽世に通じる門が開いて、そこから妖……妖怪が現れている状況です。……私達も、知っている人から聞いた程度しかわかりませんが」

「…………」

 信じられない。と言った面持ちで、武装隊の男は二人を見た。
 光輝と優香も、話を聞いた時は住んでいた場所にそんなものが眠っていたなんて思いもしなかったので、その気持ちは理解できた。

「事は一刻も争います。出来れば、深い詮索の前に今の状況を打破出来れば……」

「っ……俺の判断だけで動かせる権限はない。…が、今の話を上官にも伝えてみる。後で詳しい話を聞かせてもらうからな!」

「……理解が早くて助かります」

 そう言葉を言い残して去っていた男を見て、光輝は溜め息を吐く。

「お疲れね…」

「正直、現場で何とかなっても、後々どうなるかを考えたらな……」

 例え、事件が解決した所で、今度は管理局と地球の関係をどうするか決める事になる。
 それを考えると、光輝は今から憂鬱だった。

「それに……あれを見てくれ」

「あれは……誰?管理局員でも、武装隊の人達でもなさそうだけど」

 光輝が示した方向には、管理局員ではない誰かがいた。
 同じように武装隊の人に問い詰められているため武装隊の者でもないと分かる。

「多分、退魔士って奴だと思う。椿ちゃん達に言わせればだけど」

「陰陽師とは別扱いの?まぁ、ここにいてもおかしくはないけど……」

 退魔士の人間であれば、同じように妖と戦っていてもおかしくはない。
 それでも光輝が気にするのは……。

「俺達も、多分あちらさんも、ただの組織の一員でしかない。そんな下っ端でしかない者同士で仲良く出来ても、組織ぐるみだとどうなのか、ってな……」

「……なるほどね…」

 ただでさえ管理局と地球で事件解決後にいざこざが起きると思われるのに、さらに退魔士の組織も加わってくる。
 “表”の人間と、“裏”の人間と、そして管理局。
 三つの勢力が同じ場所に存在するだけで、軋轢が生じるのはおかしな事ではない。

「でも、私達に出来るのは限られてるわよ」

「…そうだな。魔法が使えても、俺達は元々一般市民だったしな」

 高町家のように裏稼業に関係していた訳でもなく、月村家のように“裏”の存在でもなく、バニングス家のように大企業を経営している訳でもない。
 本当に“普通”でしかなかった二人では、出来る事は限られていた。

「ま、一応俺達は地球出身の魔導師だ。管理局との架け橋ぐらいにはなれるだろ」

「そうね」

「とりあえず、目下のやる事として……アレを何とか宥めないとな」

 二人が視線を向けた先には、怒り心頭と言った様子の、本来のリーダーがいた。

「貴様らぁ!よくも私を無視してくれたな!」

「無視……無視ね。正直、ただの管理局員よりも、地球出身の俺達の方が話は通じやすい。こっちでの常識とかも知っているからな。説明にも適している。だからあんたじゃなく、俺達が話に応じたんだ。第一、そんな高圧的な態度じゃ話も出来ん」

 “やれやれ”と、二人は呆れたようにリーダー…隊長を見る。

「何だと!?管理外世界の貴様ら如きが……!」

「それだよ。それ。そんな魔法がない世界を見下すような発言。それがあるから話を任せられないんだ。そんな事も分からないのか?」

 二人は、この隊長の事が嫌いだった。
 明らかに魔法を使えない世界や人を見下したような態度と言動。
 常に下の者には高圧的な態度で、逆に上の者には媚び諂う。
 当然ながらそんな相手は誰も好きにはなれなかった。
 現に、彼ら以外の隊長の部下なども、嫌っている人は多い。

「っ、当たり前だろう!魔法が使えない奴らなど、劣っているに決まっている!」

「……だってさ」

「椿ちゃんやアリシアちゃんの前でも同じ事言えるのかな?」

 椿もアリシアも魔法を使えない。最近の椿は若干使えるが……。
 また、葵も式姫の時は魔法を使っておらず、何よりも未だに全盛期に劣っている。
 それらを知っている二人にとって、隊長の言葉は失笑ものだった。

「……レティ提督も大変だな。こんな人材も連れてこないといけないなんて」

「何だと貴様ぁ!!」

 本来ならこんな人材だらけではない事も光輝は知っている。
 だからこそ、人手不足故にこんな人材を連れてこなければならなかったレティ提督の気苦労を、二人は心配した。

「じゃあ、言わせてもらうけど、私達どころか私達の息子にすら劣っている貴方は、どれほどの優秀さなのかしら?是非とも教授してもらいたいわ」

「な、なんだと!?」

 ちなみにこの隊長の魔導師ランクはAで、光輝と優香は個人ではBランク止まりだが、コンビだとSランク相当になると、知っている人には知られている。
 なお、優輝はそんな二人に一人で勝てる模様。

「管理外世界出身の魔導師に負けているのは、あんたの価値観にはどう映るんだろうな」

「っ…!っっ……!!」

 顔を真っ赤にして声にならない怒りを上げる隊長。
 だが、二人はもう興味もないとばかりに無視した。

「無駄に時間を食ったわね。どうする?」

「……一応、武装隊の人達がいるから厄介な事にはなっていないが……」

 …と、その瞬間。

「ぁああああああああああああああ!!?」

「「っ!?」」

 耳をつんざくような断末魔が、二人のいる所まで届く。

「何が!?」

「行きましょう!」

「ああ!」

 二人を含めた何人かの管理局員がすぐに動く。
 他にも、退魔士や武装隊からも何人かが来ていた。

「あれは……!」

 飛行魔法で声の方向に向かう途中、明かりを見つける。
 だが、その明かりは妖の炎によるものだった。

「……あの妖が、やったのか…?」

「状況から見て、そのようね…!」

 炎の中心には、少女のような姿をした妖がいた。
 髪は炎で出来ており、揺らめいている。体も炎の色で、まるで火の妖精だった。
 その妖の名は“火魂(ひだま)”。元は台所裏の火消壺に住んでいるとされる妖だが、以前の幽世の門が開いた際に、幽世の影響で力が増大。周囲の鬼火を取り込み、人の姿を取れる程にまで強化されていた。……そんな妖が、ロストロギアで災厄が再現された際に、同じ要領で蘇ってしまったのだ。

「っ、まずい!優香!」

「ええ!……飛んで!!」

 このままでは、相手をしている武装隊の者達が焼き尽くされてしまう。
 そう判断した光輝は、優香に合図を送る。
 即座に優香は魔法陣を複数枚展開し、それを光輝の足元に設置する。
 そして、それを光輝が踏み込み……射出するかのように、一気に跳んだ。
 所謂、二人の合わせ技による、加速装置だ。

「ぜぁっ!!」

   ―――“ソニックエッジ”

 光輝が現場に辿り着けば、ちょうど武装隊に向けて炎が放たれていた。
 魔力での防御は元より相性が悪いため、不可能と判断した光輝は高速の斬撃魔法によって、炎を二つに分かつ事で防ぐ。

「っ、これは……!?」

 攻撃を凌ぎ、周囲を確認して光輝は言葉を失う。
 既に、何人かが炎によって燃え尽きていた。
 そして、火魂の背後にある瘴気の穴を見て確信した。

「……守護者…!」

 光輝は警戒度を最大まで上げ、すぐに念話で守護者を見つけた事を優香を含めた他の管理局員に通達する。

「くそっ……!」

「がっ!?」

「お前、何を……っ!?」

 再び炎が放たれる。今度はさらに強力で、先程のように切り裂けない
 それを察した光輝は、魔力弾を生成。後ろにいる武装隊に弾き飛ばすように当てる。
 魔力弾で弾く事で、炎の射程外に飛ばしたのだ。
 同時に、光輝も飛んで躱し、一連の流れを見ていた武装隊の一人が驚愕する。

「早く下がれ!こいつは生半可な銃器じゃ倒せない!」

「し、しかし……!」

 下がるように声を上げるも、武装隊も民間人を守る者として易々と引き下がれない。
 また、既に仲間が何人もやられているため、退くに退けないのだろう。

「俺が相手にしている内に、早く!」

「くっ……っ、撤退!撤退だ!」

 再び炎が放たれる前に、今度は光輝が砲撃魔法で牽制する。
 火魂の発する炎の霊力と、砲撃魔法が拮抗する。
 それを見て、自分たちの手に負えないと理解した武装隊はすぐに退いて行った。

「(火力が強い……!俺一人だと、押されるか…!)」

 発せられる熱気から、自分一人では手に負えないと判断する光輝。
 そんな光輝を援護するように、上空からいくつもの魔力弾が降り注いだ。

「皆さんは上空から援護を!私と彼で引き付けます!」

「優香…!」

 光輝が上空を見れば、そこには優香を含めた管理局員が複数集まっていた。
 先ほどの魔力弾は優香達によって放たれたものだったのだ。

「行くわよ…!妖だろうとなんだろうと、私達の故郷を壊させるものですか…!」

「ああ……!行くぞ!」

 他の局員からの援護射撃を受けながら、二人は攻撃を仕掛ける。
 既に武装隊は撤退し、結界で隔離したため無理に攻撃を受ける必要もない。
 そのため、二人は放たれる炎を回避しつつ、的確に反撃を加える。
 ……しかし…。

「……手応えがない…!」

「文字通り炎の体……と言う訳…?」

 放たれる斬撃、魔力弾は確かに命中する。
 だが、それはまるで無意味とばかりに当たった箇所は修復されてしまう。

「魔法でも効果がないとなると……」

「霊術…でも、私達では……」

 このままではジリ貧でやられてしまう。
 そう思った時、二人は管理局員以外の人影を見つける。

「あれは……」

「退魔士……?」

 そう。この場には管理局員だけでなく、現地の退魔士も駆け付けていた。
 だが、光輝達が戦っているため手を出せない状態だったのだ。

「退魔士の方々!!援護をお願いします!!」

「っ……!」

 光輝が声を上げると同時に、二人で砲撃魔法を放って間合いを取る。
 上空からも魔力弾やバインドによる援護が入り、絶好の隙となる。
 そして、そこへ退魔士たちの霊術が叩き込まれる。

「(これでも……ダメか!?)」

「(霊術ですら効果がないなんて……)」

 実際は、魔法よりは効果があるのだが、如何せん退魔士の力量が低いため、大した効果がないように見えていた。
 これがせめてアリサやすずか程の霊術であれば、目に見えて効果は見られた。

「(何か手は……)」

「(相手は火の体を持つ……火の体?……なら、もしかして……)」

 優香は一つの考えに至り、それを光輝に目で伝える。
 あり得ると判断した光輝は、そのまま退魔士へと声で通達する。

「誰か!水か氷を使う術を扱える人はいないか!?いるならそれを優先的に放ってくれ!」

 それは、火が相手なら水などで消火するという、単純な考え。
 確かに普通の水では通用しないと考えられるが、それが霊術なら……。
 そう考え、二人は退魔士達にそう言った類の霊術を放つように言ったのだ。

     バチィイッ!!

「ッ――――――!!?」

「(効いた…!)優香!!」

「ええ!」

 そして、その考えは見事に当たっていた。
 水や氷の霊術は火魂に良く効き、さらに弱体化させていた。
 そんな隙を逃さず、光輝と優香は連携で一気に攻め立てた。

「これで!」

「終わり!」

   ―――“トワイライトバスター”

 二つの閃光が、クロスを描くように放たれる。
 その交差点に火魂はいたため、焼き尽くされるように悶えた。

「……やった?」

「分からない。……だが……」

 弱点を突く霊術で弱った所へ、二人の大火力が直撃した。
 そうなれば、さすがの火魂も……。

「倒した……か」

「そうみたいね…」

 火魂がいた場所は、火災が起きた家のように炎が揺らめいていた。
 だが、そこから火魂が復活する気配は感じられなかった。

「油断は出来ない……か」

「結界は強めておいた方がよさそうね」

 念話で他の管理局員に伝え、結界を強化してもらっておく。
 守護者を倒した状態で結界で隔離しておけば、後は門を閉じるだけになるからだ。

「……助かりました」

「いや、こちらこそ引き付けてもらわなければまともに術を使えなかった」

 結界で隔離された事を確認し、光輝は協力してくれた退魔士の代表と話す。

「……もう一つ協力してもらいたいのですが、そちらに封印系の術が使える者はいませんか?こちら側で行う封印では、効果がないので……」

「封印か…。いるにはいるが、一体何を……」

 何を封印するのかと言う問いに、光輝は門へと案内する。

「先程の妖が守っていたものであり、妖達の発生源です」

「……そう言う事か。これほどの瘴気なら、協力しない理由がないな」

 そういって、退魔士の代表は他の退魔士へ指示を出し、手早く封印のための準備を済ませた。そして、そのまま封印へと取り掛かる。

「……こちらも状況が掴めていない中、そちら側は何が起きているのかわかっているみたいだが…」

「こちらとしても、協力したい所なので説明します。……ただ、詳しい訳ではないのでご了承を。詳しい事情を知っている者は東の方にいるので…」

「分かった」

 会話している内に封印は終わり、管理局も退魔士も一時撤退する事になった。

「(優輝……俺達も俺達で頑張っている。最終的には、霊術を扱えるお前たちに任せきりになってしまうのが歯痒いが……頑張ってくれよ…)」

 親として、あまり役立てない事を歯痒く思いながらも、光輝と優香は少しでも状況を良くするために奔走し続けた。













 
 

 
後書き
火魂…名前の通り火耐性が凄まじい(と言うか吸収する)。さらに、水属性の攻撃を当てなければHP半分以下になった瞬間、超絶強化されてしまう(ムリゲー並)。なお、水属性攻撃を一定数当てると弱体化する。


かくりよの門における火魂は、割と初見殺しです(作者も思いっきり引っかかってリトライする羽目に)。本編においては、武装隊の面々が銃火器で攻撃していたため、若干強化されてしまっています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧