IS~For the love & peace~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
1.Fの災難/回り出す歯車
コシュー‥‥コシュー‥‥。
ガスマスクを着けた科学者らしき者達がカプセルに閉じ込められた俺の周りを囲む。
何だ?何なんだここは?
「────実験、無事終了いたしました」
ブクブクブクブク。
カプセルに繋がれた管に不気味なガスが吸い込まれていく。
「フフフッ。そうか。ついに成功したか。これで奴はほぼ我々の一員だ」
────実験?完成?何のことなんだ?
ドォォォォォォン!
直後強い振動が建物を揺らした。
「仮──イダーに発電室を破壊されました!」
「何だと!?」
「どうやら、奇襲は成功したみたいだな」
「そのようですね」
誰かが入ってきた。この騒ぎの元凶だろう。声からして男と女の二人だ。
「なっ!?貴様等は!?」
『Rabbit!』
『Tank!』
『ベストマッチ!』
『Are You Ready?』
「超「変身!!」」
───────あの、俺のこと忘れてません?
そして、俺は意識を手放し──────
「‥‥モンドさん、レイモンドさん!」
耳元で叫ばれていたのでとりあえずは起きた。どうやら机に突っ伏してねてしまったらしい。
にしても、懐かしい夢を見たもので。
「さとり、耳元で大声を出しちゃダメだって習ったでしょ?」
「あ、ごめんなさ、って貴方が起きないからでしょ!」
彼女は古明地さとり。俺が世話になってるところの家主だ。両親が他界し15歳ながら古明地家を支えている立派な少女だ。ISの日本代表候補にも選ばれるほどの実力者でもある。え?IS?それは後に説明しようか。
「もう、もう朝食はできてますから早く食べちゃってください。こいしももう食べてますから」
「ほいほーい」
適当に返事しつつリビングへ向かう。
「おはよー!お兄ちゃん!」
「おはよう。こいし」
この子はこいし。さとりの妹だ。確か、えっと、いくつ差だったかな。歳。まあいいや。
「いったい誰に説明してるのですか」
「それは言いっこなしってもんでしょ」
え?まずツッコむとこが違うって?
ではまず後回しにしてきたISの説明から始めようか。『無限の成層圏』。通称IS。どこぞの天災兎が作り上げた宇宙での活動を考えたパワードスーツだ。しかし数年前の『白騎士事件』を皮切りに今までISを見向きもしなかった学会が宇宙開発ではなく兵器への運用に目を付けたのだ。
そんなISもただの兵器だけでなくエンターテインメント競技としても発展した。先ほど出た日本代表候補というのも読んで字のごとくといってもいい。代表候補までとなるとそいつ専用のIS、所謂専用機というものが手に入る。さとりの専用機は『第三の目』。読心術を可能にしたものだ。
少し脱線したなそんな輝かしいISだが、一つだけ欠点があったのだ。実はこのIS女性しか起動できないのだ。
そのせいで女尊男卑の風潮が助長し、一種の社会問題となっている。
ISの説明はこんなもんだろう。
「お兄ちゃん、今日は三人で遊ぼうよ!」
「そんなこと言ってもさとりは受験シーズン真っただ中じゃないか?」
「私は推薦で早くに終わりましたから」
そういやそうだった。流石は代表候補生殿だ。
「そんな大層なものでもありませんよ。それよりもレイモンドさんこそ今日は『nascita』のシフトの日ですよ」
ん?…あ。そうだった。
「遅刻だなこりゃ」
「わかってるのならさっさと食べちゃってください!」
「あいよ。てことだからごめんなこいし」
「なら、お兄ちゃんと一緒に行く!」
「あ、それでいっか」
だってあそこ客来ないし。まずいコーヒーの定評がついてしまっているのだろう。
「それじゃあみんなで遊びに行こー!」
「おー」
「……あれ?私も行くの」
『白騎士事件』よりさらに前、火星で発見されたパンドラボックスが引き起こした『スカイウォールの悲劇』から十年。日本は『東都』『北都』『西都』の三つに分かれ互いが睨みを利かせていた。我ら古明地家が住んでる東都の知る人も知らない喫茶店『nascita』でバイトをし暇を潰したりしている。
「ちわー。紗羽さーん。来ましたー」
「レイ君。いらっしゃい」
彼女は滝川紗羽。フリーのジャーナリストだ。
「お久しぶりです。紗羽さん」
「久しぶりー!」
「さとりちゃんにこいしちゃん。いらっしゃい」
そんな他愛のない会話をしていると、ブーっ!と何かを噴く音が聞こえた。
「ちょっと、何やってんのよ万丈!」
と、怒鳴る紗羽さんが拭き取っている床には茶色い液体が。元凶である当の本人の手にはコーヒーカップが握られていた。
「ゲホッゲホ!まっず!んだこのコーヒー!誰だ入れたの!」
「あんたでしょうが!」
「おう!俺か!」
……万丈さん、あーた。いや、やばいツッコみたいことが多すぎる。
でもまずは、
「なんでカウンターなんかやってんですか?」
万丈龍我。通称『筋肉バカ「呼ばれてねぇよ!!」』。元格闘家だが東都先端物質研究所の研究員『葛城巧』の殺害疑惑という冤罪?をかけられ「なんで疑問形なんだよ!!」東都政府に追われる身となった。
「逃亡者が店のマスターってどうなんですか?」
「……そう言えば戦兎にも似たようなこと言われたな」
ほー。あの人とねぇ。うれしいような気もすれば複雑な気持ちだ。
「でその当の本人は何を?」
聞いた瞬間にだ。まるでタイミングをうかがっていたかのようにカウンター側の冷蔵庫がBON!とわずかに浮き、淵からは白煙を上げていた。
「……あの通りよ」
「んじゃ、おじゃましまーす」
このカウンター側の冷蔵庫。もちろん冷蔵庫なのだが実は地下の秘密基地へと通じる扉となっているのだ。
俺はその扉をくぐった。
って、白煙すごっ!けむっ!そこの中心には二人の人物がいて、奥にもう一人いた。
「……最悪だ。また失敗か」
「ムムム。まさかこの束さんがまたまた失敗するだなんて」
なぁにやってんだか。
「ちょっと、また失敗したのぉ?もう凍結したら?」
「「いやだから燃えるんじゃないか」」
「できるわけないじゃないですか。あんなシステム」
天才二人が暴走する前に俺がわって入った。
「あ、レイ君!」
天才ならぬ天災、篠ノ之束。エプロンドレスにうさ耳という奇怪な姿をしているが、ISの基本理論の考察から実証までほとんど一人で行った自他共に認める天才なのだがその実態はシスコンで研究バカの残念な人だ。
「確かに設計図やデータは不足しているかもしれないが、そこのウサギとこの天っ才物理学者桐生戦兎に作れないものはない」
で、このもう一人の自他共に認める天才が桐生戦兎。記憶をなくし彷徨っていたところを現在不在のここのマスターに拾われたらしい。その正体は、かつて禁忌とされたネビュラガスをを使用した人体実験を行い、東都防衛システム『プロジェクト・ビルド』を独自に立案し、進めていた『葛城巧』本人だということが判明した。確かに思うところはあるが、それはそれ、これはこれ、というやつである。俺も助けられたし、科学を発展させたというところでは同じ物理学者として尊敬の念を抱ける。
んで、奥の人が石動美空。ここのマスターの娘さんでこの地下室に引きこもっている所謂ヒッキーである。それと同時にネットアイドルみーたんというもう一つの顔を持っている。
「そもそも、お前が加われば万事解決なんだがな」
「それで前無理でしたよね?」
「もう昔の束さんじゃないよ~!」
「お兄ちゃんだってあの時悔しがって自分の部屋のホワイトボード版真っ黒になるまで検索しまくってたよね~」
「あの後はくそ眠かっ、ってこいしいつの間に!?」
やべぇ、全然気づかなかった。
「最初からいたよ~」
えへへ、と無邪気な笑顔を浮かべているがまさか全く気配をさとらせないとわ。こいし、恐ろしい子!
そういえば、こいしの言っていた検索の意味だが、スマホやパソコンでポチポチってことじゃないぞ。俺は五年前にとある組織に拉致られ人体実験をされた。そしてその時に地球へのアクセススポット『泉』に落とされ脳内に地球の記憶というデータベースを詰め込まれた。そしてその人体実験から助けてくれたのが戦兎さんとさとり、束さんだ。詳しくはまた今度ということで。
「ま、暇ですし。実験に付き合いますか。それに俺も完成させないと気が済みませんし」
「うわー、レイ君の本音だだ漏れだー」
「それじゃ、実験を始め、「みんなテレビ見て!?」」
戦兎さんの言葉を遮るように紗羽さんが勢いよく扉を開いた。
顔の形相からしてただ事ではなさそうだ。
「紗羽さん。もしかしてこれ?」
今まで沈黙を貫てきてた美空さんがスマホを紗羽さんに向けた。
「そう!これよこれ!」
俺ら三人は紗羽さんの後ろから画面をのぞき込んだ。ちなみにこいしは背伸びしてもジャンプしても届かないため俺によじ登り肩車の体制になった。
写していた画面はYah〇o newsみたいだ。そこの記事の見出しを見て驚愕を隠せなかった。
そこには、
『世界初の男性操縦者現る』と書かれていた。
「「は?」」
さすがの天才二人も間抜けた顔をしていた。そして俺は、
「……最悪だ」
恩師の口癖が思わず出てしまった。
後書き
ここで主人公の簡単なプロフィール
レイモンド・スカーレット
肩書:特になし
年齢:二十歳
今作の主人公にしてオリキャラ。元々はルーマニアの貴族生まれなのだが家の方針と食い違い家を出る。それ以来古明地姉妹と戦兎たち以外にスカーレットの性を名乗っていない。実家には妹が二人いる。さとりや戦兎とは十五歳の時に放浪しているときとある組織、財団某に拉致されネヴュラガスを注入され脳改造を受ける前に二人に助けられた。ちなみに束はハッキングなどをして助けた模様。その後行く当てがなかったところを古明地家にもぐりこんだ。自分を過小評価しすぎなところがあり周りの人に注意されることがしばしば。戦兎の愛と平和のために戦う、という精神を心から尊敬していているが変なところでリアニストだったりする。
ページ上へ戻る