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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第七十九話 士官学校の嵐


装甲擲弾兵襲来です。

お詫び、入学年度の表記変更について。
通常の学校でも入学年度で第何期生とするので、
士官学校も入学年度で表記を行います。
従って464年が480年度に、463年が479年度に462年が478年度入学になります。
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第七十九話 士官学校の嵐

帝国暦480年8月1日

■オーディン 帝国軍士官学校 

 士官学校の朝は早い・・・本来ならだが、
4号生、2号生、1号生は確りと軍人としての総員起こし5分前の伝統で5時50分には起床し素早くベットメーキングを行い、校庭に出て軍隊式運動を行い始める為に並び始める。

6時丁度に、教官達から点呼始めの号令が上がる。
轟音のように点呼が行われ、其れが終わると早速朝の運動である。
真面目の運動を行い汗だくになるが、皆すがすがした顔である。

1号生でさえ僅か一ヶ月であるが、必死に頑張っている。
しかしその中に3号生の姿がない。
3号生は総代フレーゲル男爵が伯父ブラウンシュヴァイク公爵の威光を笠に着て朝寝を楽しんでいた。

部屋は貴族趣味の特別室であり専用メイドまで居るほどである。
今朝もメイドのアリーセを傍らに微睡んでいた。

その微睡みを消し去るように、ドカドカと足音が響いてくる。
五月蠅い奴がいるなと二日酔いの頭で苛ついたのであるが、
その足音が部屋の前で止まったのは感じた。

何だと思ったが突然ドアが蹴り破られた!
大音量でドアが破壊され破片が飛び散る。
外から大男がドアを破壊したようだ。

「きゃーあ」
アリーセが慌てて毛布で胸を隠す。
「誰だ!無礼者!」
フレーゲルが叫ぶ!

「ん、もう6時半だ起床時間はとうに過ぎてるぞ!」
大柄の男が部屋に入ってくる。

「黙れ!私はフレーゲル男爵だ!」
「フン。それがどうした!お前は学生だろう」
ズケズケ入ってきた大男がフレーゲルをベットから掴みだした。

「何をするか!」
酔っぱらっている、フレーゲルの目にはその大男の階級も目に入らないらしい。
「上官に対してその態度は何だ!」

フレーゲルが階級に気がついたが、態度は改めない。
「上官だと!高々大将風情が私に意見するとは貴様何やつだ!」
「フン、耳かっぽじってよーく聞け。
儂が装甲擲弾兵副総監アルノルト・フォン・オフレッサー大将である」

フレーゲルは酔いで回らない頭を回して思い出した。
原始人、石器時代の勇者、ミンチメーカーと呼ばれている男のことを。
何故そんな奴が自分の目の前に居るのかを。

オフレッサーがドスの利いた声で命令する。
「おい早く着替えて校庭に集合だ!」
「何故私が命令を聞かねばならんのだ!」

「ゴタゴタぬかすと潰すぞ!」
股間に向けてでかい手が繰り出されてくる。
「ひぃ」

フレーゲルは逃げ出す。
しかしオフレッサーに回り込まれてしまった。
「判った着替えるから判ったから」

とうとうフレーゲルが降参した。
「フン。最初からそう言えば良いのだ。
3分以内に着替えて集合だ!」

フレーゲルは、オフレッサーの鋭い眼光にビクつきながら、
伯父上に言いつけて此奴を何とかしてやると小悪党のような考えをしている。

それに気がついているのか、オフレッサーがドスの聞いた声で注意してくる。
「ブラウンシュヴァイク公爵に泣き着こうとしても無駄だぞ。
お前等478年度生の教育は、恐れ多くも、勅命によるものである!」

「皇帝陛下がだと、世迷い言を!」
「そう言うと思って陛下から勅書を頂いてきた」
そう言うオフレッサーが恭しく懐から勅書を出し、フレーゲルに見せてくる。

「こっこれは」間違いなく。
ブラウンシュヴァイク邸で見た皇帝陛下の御宸筆と同じ筆跡であった。
「どうだ、此でも従わぬのなら、卿は不忠者と言う事になる」

フレーゲルは今は従うしかないと考え着替えを始めるが、
普段はアリーセに手伝わせている為に中々はかどらない。
時々オフレッサーが足で床を踏んで大きな音を鳴らす度にフレーゲルはビクつく。

「もう3分経ったぞ、未だ着替えられんのか!」
フレーゲルは、パンツにシャツだけの状態で慌てている。
女性ならセクシーなのだがフレーゲルでは気持ち悪いだけだ。

7分が過ぎやっと着替え終わった。
「よし行くぞ」
オフレッサーはフレーゲルを引っ立てて部屋を出て行く。
部屋には、全裸のメイド、アリーセがベットで毛布を被り縮こまっていた。

「ご主人様。わたくしはどうすれば宜しいのですか><」
アリーセの呟きが壊れたドアに虚しく響いていた。

同じ時刻、士官学校寮内各所で同じような悲鳴が上がっていた。
「ぎゃーーーーー。」
「うわーーーーー」
「たすけてくれー」

「ひえーーーーー」
「うわあああー」
「死ぬーーー」
「命ばかりは・・・」

10分後寮内は恐ろしいほどに静かになっていた。
そして7時の時報が流れた直後。
校庭には制服も滅茶苦茶な着方の3号生4650名が集められていた。
校庭には朝の軍隊式運動を終えたばかりの4号生、2号生、1号生が整列して待っていた。

478年度生は、元々入校時5100人の在校生であったが。
心ある者はフレーゲルに反発した結果、ブラウンシュヴァイク公の権力で嫌がらせを受け、
1年留年させられて479年度生に編入させられていたのである。
その為479年度生は5550人という大クラスになっていた。

残った連中はフレーゲルの取り巻きや、門閥貴族のどら息子、フレーゲル達に迎合する者、事なかれ主義な者達などであった。
はっきり言って、士気も低く役立たず揃いである。
此を果たして矯正出来るかは神のみぞ知るだが、ほぼ無理と言いたい。

全教官と全校生徒が集まり、校長が今日も胃痛のせいで顰めっ面をしながら訓辞を述べる。
「本日より、格闘術の臨時教官として、
装甲擲弾兵副総監オフレッサー大将閣下以下6000名が赴任した。
又、シミュレーションの教官として、ワーレン大尉とライブル大尉が赴任した」

4号生、2号生、1号生は概ね友好的な趣で話を聞いている。
3号生は、未だ寝ぼけている者、敵意丸出しの者、怯えている者など三者三様である。

校長が壇上から降りると大将の制服を着た大男が代わりに壇上に上がってきた。
オフレッサーは全校生徒2万人強をジロリと見ると挨拶を始めた。

「儂が装甲擲弾兵副総監アルノルト・フォン・オフレッサー大将である」
非常に大きな地声が響き渡る。

「今回の派遣は、恐れ多くも勅命によるものである!」
そう言うと先ほどフレーゲルに見せたように、
懐から勅書を恭しく出し皆に見えるように掲げる。
その勅書が校庭にある大ビジョンに写されると生徒達から声が上がった。

4号生、2号生、1号生達は3号生を見ながら、
さも有らんという顔をしている。
3号生は青い顔をし始める者達が多数出てきた。

「卿等いいか、この1年で俺達装甲擲弾兵6000名が確りとした士官になれる様に教育してやる!
楽しみにしているんだな」
そう喋るとオフレッサーは壇上を降りて行く。

続いてワーレンとライブルが挨拶をしたが、
オフレッサーの記憶が強力しすぎて、さほど目立たない状態であった。

それでも、ミュラー候補生やバイエルライン候補生などは、
新規シミュレーションを面白そうだと考えていた。

その後3号生のみ校庭に残され、
サボっていた軍隊式運動を装甲擲弾兵の監視の元。
みっちりとやらされた。

■オーディン 帝国軍士官学校寮 フレーゲル男爵部屋

当日は格闘の授業がなかった為に何も起こらなかったが、壊れたドアを直した。
オフレッサーによる朝のしごきに頭にきたフレーゲルたちが、夜間にあつまり、
巫山戯るなと散々悪口を言い合うので有った。

その席でヒルデスハイム伯がブラウンシュヴァイク公爵なら勅許を何とかしてくれるはずだと言い始め、
フレーゲルにみんなが頼んだ為、派閥の親玉としては出来ないとは言えずに連絡を入れたのである。

「伯父上」
『おうヨアヒムかどうした?』
「オフレッサーが士官学校に来まして」

『うむ陛下からお聞きしている』
「伯父上」
『勅許は儂でもどうにも出来ん』

「私もそう思うのですが、ヒルデスハイム伯達が言いますので」
『暫くは我慢するしかあるまい。出来る限り陛下にはお願いするからな』
「判りました」

ブラウンシュヴァイク公は、気の毒そうにフレーゲルを見ながら。
『ヨアヒム、頑張るのだぞ』
「伯父上」
画面が切れた。

周りの者は、絶望の淵に居るようである。
その中で、憲兵副総監クラーマーの息子グスタフ・フォン・クラーマーが悪人面でニヤケながら話し始めた。

「フレーゲル殿」
「クラーマーどうした」
「いえね、陛下の勅許が有る限りオフレッサーは我らをしごくでしょう」

「そうだな」
「ならばしごけないようにすれば良いのですよ」
「オフレッサーでも殺すのか?」
ヒルデスハイム伯が聞いてくる。

「いえそんな事出来るわけ無いじゃないですか」
「まあそうだな」
皆が頷く。

「違いますよ、私の父は憲兵副総監ですから。
父に頼んでオフレッサーの家族を調べて、
悪党にでも襲撃させて恐怖を与えてやれば良いのですよ」

「そんなことしたら、俺達が殺されるぞ」
コルプトが青い顔をしながら震える。

「大丈夫ですよ、我々が雇わずに父の伝手で襲撃させますから」
頷き始めるフレーゲル達。
「本当に大丈夫だろうな?」

「任せて下さい、数日後には戦果を上げてオフレッサーを追い出して見せます」
自慢顔のクレーマー。

この夜の悪巧みが盗撮盗聴されているとも知らずに喋りまくるのであった。


■オーデイン 士官学校内グリンメルスハウゼン特務隊盗撮盗聴部屋

 数人の男女が士官学校内の映像や音声を記録している。
その方法は無線式だと探知機で探られる為に有線で巧みに隠されているのである。

幼年学校も同じように成っており、
ラインハルトとキルヒアイスの不敬な言動や簒奪への言葉や映像が確りと記録されていたのである。
その記録は皇帝の命により、皇帝、テレーゼ、グリンメルスハウゼン、ケスラーの4人以外には閲覧を禁止され記録係もグリンメルスハウゼン子爵家の家の子しか担当して居ないほどである。

フレーゲルの部屋で只ならぬ悪巧みが行われているという情報は直ぐさまグリンメルスハウゼンの元へ届けられ、速攻でオフレッサー以下の家族に護衛がついたのである。
又翌日には陛下と殿下にも伝えられ、殿下が追加指示を出したのである。

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修正しました。
 
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