儚き想い、されど永遠の想い
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277部分:第二十話 誰にも言えないその十二
第二十話 誰にも言えないその十二
「茶の味は変わりません」
「取り入れるべきだな」
「そうですね。茶の味は変わらない」
「そういえばだ」
義愛もだ。洋服で茶を飲みながらだ。
その中でだ。彼自身も気付いたのだった。
「前に仕事の打ち合わせで支那料理の店に入った」
「その時に気付かれたのですか」
「あの時私は洋服だった」
そのだ。洋服でだというのだ。
「洋服で支那料理を楽しんだ」
「味はどうでしたか?」
「変わらない。美味だった」
義愛もまた微笑みだ。末弟の言葉ニ応える。108
「今と同じだ」
「左様ですか」
「同じですか」
「そうだな。だからだ」
微笑みながらだ。彼は弟達と妹達にまた話す。
「こだわることもないな」
「日本だけ、西洋だけに」
「そして支那だけに」
「文化はこだわるものだが」
しかしだ。それでもだというのだ。
「捉われるものでもない」
「だからですね」
「今こうして洋服で茶を楽しむのも」
「いいことなのですね」
「そう思う。ではだ」
茶を飲みだ。次はだ。
菓子だった。それは葛饅頭だ。葛の透明な中に抹茶の餡子が見える。それを見てだ。義智は微笑みつつこんなことを言ったのだった。
「見事な和風ですね」
「そうだな。しかしだ」
「しかし?」
「饅頭は最初から日本にあった訳ではない」
このことを言うのだった。
「支那のものだ。元々は」
「しかし日本に入り」
「そうしてこうなったのですね」
「支那の饅頭は肉の饅頭だ」
主にだ。菓子の饅頭もあるが支那の饅頭は主流は肉の饅頭なのだ。彼等は中華街に客として出入りしてだ。このことを知ったのである。
「こうした饅頭ではないな」
「しかし日本人はですね」
「こうした風に作り変えた」
義愛は微笑み青い陶器の皿の上の葛饅頭を見ながら微笑んで話す。
「換骨奪胎。西洋の言葉ではアレンジというのか」
「日本人に合う感じにですね」
「菓子にしたのですね」
「饅頭は支那ではパンになる」
他には包や餅という食べ物もある。どちらも小麦を練って作ったものだ。ただし包は蒸し餅は焼く。そうした違いはあるにしてもそこは同じなのだ。
「中に肉やそうしたものを入れてだ」
「それで食べていますね」
「支那では」
「しかし日本では」
「小麦を使うものもある」
そしてだ。他にもだった。
まさにだ。その葛饅頭を見てだ。義愛は話していく。
「こうした饅頭もある」
「葛を使った饅頭ですか」
「こうしたものもある」
「そうですね」
「そうだ。これはおそらく支那にはない」
こうしただ。小麦ではなく葛を使った饅頭はだというのだ。
「日本で出来たものだ」
「そうですね。支那から入った饅頭をですね」
「我々の職人達が作り変えた」
「それがこの葛饅頭ですね」
「そういうことだな」
あらためて言う義愛だった。
「文化は」
「はい、それではですね」
「今から」
「この葛饅頭もまた」
「文化を食べよう」
こう話してだった。彼等はその葛饅頭も楽しむのだった。支那で生まれた饅頭はだ。ここでは日本の味と文化をたたえていたのだった。
第二十話 完
2011・8・8
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