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ドリトル先生と奈良の三山

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第五幕その十一

「そうしたところが本当にいいし」
「私達にとってもね」
「欲がないことは」
「本当にね」
「先生の美徳よね」
「まさに」
「まあ欲がなさ過ぎてね」
 こうしたこともお話する皆でした。
「結構困る時もあるけれど」
「欲がなさ過ぎてね」
「多くを求めないからね」
「今のままで満足して」
「そこがどうもね」
「結婚とか考えないし」
「結婚はどうもね」
 いつもサラに言われてはいますが。
「僕は無理だよ」
「そう、そこでそう言うのがね」
「無欲過ぎてね」
「求めないからね」
「強くね」
「いや、結婚したいよ」
 先生にもそうした思いは確かにあります。
「僕もそう願っているよ」
「だからそこを強く」
「強く求めないとね」
「そうしたら近くにいるじゃない」
「先生を想っている人がいてね」
「先生がもっと結婚したいって思えば」
 その時はというのです。
「その人が応えてくれてね」
「絶対にって思うけれど」
「だからもっと欲出したら?」
「そうしたら?」
「いや、だから僕を好きな女の人はまずいないし」
 ご自身ではこう考えているのです、あくまで。
「しかもね」
「しかも?」
「しかもっていうと?」
「どうも食べたい、学びたいっては思ってね」
 そうした欲はあるのですが、先生にも。
「お金や権力や女の人は」
「結婚でもだね」
「まあ最初の二つは先生らしくないけれど」
「地位とか権威もね」
「合わないとは思うけれど」
「結婚はね」
「そして恋愛はね」
 そちらはというのです。
「もっと欲出したら?」
「そうしたら?」
「先生にしても」
「そうしたら絶対によくなるから」
「結婚したいって思ったら」
「その意志を前に出したらね」
「そんなことはないと思うけれどね」
 どうにも変わらない先生でした。
「僕にそうしたことは」
「やれやれだね」
「まあ簡単に終わるお話じゃないとはわかっているけれどね」
「私達にしても」
「先生のことだから」
「万葉集は恋愛の歌も多いけれどね」
 笑顔でお話する先生でした。
「まあそれでもね」
「だからもっと欲を出していこう」
「先生もね」
「そうすれば変われるから」
「絶対にね」
「結婚も出来るわよ」
 皆はあくまで欲を出さない先生にこちらのことではハッパをかけるのでした、先生が中々動かない人だとわかっていても。 
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