儚き想い、されど永遠の想い
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234部分:第十八話 相互訪問その一
第十八話 相互訪問その一
第十八話 相互訪問
二人の姿を見てだ。義愛と義智は。
少し驚いてだ。こう義正に言った。
「まさかとは思ったが」
「そうしたとはね」
「驚かれましたか?」
「ああ。少しな」
「実際にそうなっているよ」
こうだ。末弟に答える二人だった。
そのうえで真理を見てだ。こうも言うのだった。
「まさか。真理さんまで来られるとは」
「本家の屋敷に」
「はい、思うところがありまして」
それでだ。真理は話すのだった。
「それでなのです」
「成程。それでは」
「御互いを知る為にも」
既にそうしたことがわかっていてだ。応える二人だった。
「ここは喜んでね」
「迎えさせてもらうよ」
「有り難うございます」
真理は二人の言葉を受けてだ。そうしてだった。
笑顔で迎えられ。彼女も笑顔になるのだった。
その迎えられた彼女は義正に屋敷の中を案内される。その中は。
洋館だった。広い英吉利風の洋館だ。その中を歩いてだ。
彼女はこう義正に話すのだった。
「ここは」
「如何でしょうか」
「独特の匂いがしますね」
「独特の?」
「はい、樫の木の匂いがします」
その匂いだというのだ。
「その匂いが」
「はい、実は」
「屋敷の素材に使っているのでしょうか」
「そうです」
まさにその通りだとだ。義正も答える。
「西洋では樫の木をよく使うと聞いて」
「それであえてですか」
「そうしたのです。ただ」
「ただ?」
「匂いはそこまで強いでしょうか」
義正が妻に問うのはこのことだった。
「屋敷の中で樫の匂いは」
「そう思います」
「そうですか」
「檜には檜の匂いがありますし」
その匂いもあるというのだ。
「樫には樫のです」
「その匂いがある」
「それを感じます」
「ううむ、私にはわかりません」
自分が生まれ育ったその洋館の中を歩きながらだった。また話す彼だった。
「木の匂いですか」
「はい。ただ」
「ただ?」
「私の家では感じません」
真理のだ。実家、白杜家ではだというのだ。
「そうした匂いは」
「貴女の家では」
「感じないです」
少し俯いてだ。彼女は話す。
「私の家でだけは」
「しかしご実家でも」
「勿論木を使っています」
こう答えるのだった。
「ですがこうした匂いは」
「しませんか」
「不思議ですね」
微笑んでだ。真理はこうも言うのだった。
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