馬鹿兄貴の横暴
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第四章
「どうしていたのよ」
「全部の条件を厳守したうえで認めてやっていた」
伸也は腕を組んで言った、服はアロハシャツにジーンズだが何処かヤクザ者めいている着こなしだ。
「まずはだ」
「まずは?」
「キスは交際して一年経ってからだ」
最初はキスについての言及だった。
「尚手をつなぐのは半年だ」
「半年?」
「キス以降は結婚してからだ」
「じゃあデートは?」
「四ヶ月だ」
それ位経ってからだというのだ。
「駄目だ」
「私達二ヶ月だけれど」
「何!?」
「手もつないでるけれど」
「何をしたんだ!」
伸也はここまで聞いて大輝に顔を向けて怒鳴った。
「うちのを傷ものにしたか!」
「傷もの!?」
「その時は責任を取ってだ!」
伸也はさらに言った、完全に怒った顔で。
「結婚だ!離婚は許さん!」
「結婚!?」
「子供は十人作れ!」
こうも言ってきた。
「そして一人一人俺に名付けさせろ!」
「十人、そしてその十人共ですか」
「俺が名付ける、妹の子供だからな」
だからだというのだ。
「当然のことだ」
「あの、当然って」
「そして家は俺の家のすぐ傍だ」
そこに住めというのだ。
「何かあったら俺が飛んで行く」
「あの、何かって」
「妹に少しでも悪い気をさせたらだ」
伸也はそう思ったらというのだ。
「俺が容赦しない」
「そ、そうなんですか」
「そうだ、それは今もだ」
結婚していないがというのだ。
「若し妹を泣かせたらだ」
「その時はですか」
「容赦しない」
また大輝に言った。
「いいな」
「そ、そうですか」
「あとだ、交際自体もだ」
伸也はその話に戻してきた。
「俺が認めてからだ」
「じゃあ今は」
「ちょっと家に来い」
大輝を睨み付けての言葉だった。
「そうして面談だ」
「そうですか」
「逃げるな、逃げても地獄の果てまで追っかけていく」
鬼の顔での宣告であった。
「いいな、これからな」
「そんなのここですればいいじゃない」
七海は兄の言葉が終わったところで兄を睨み返して告げた。
「一緒にいるんだし」
「俺は仕事中だ」
「仕事中でも飛んで来たでしょ」
それで無茶を言ってきているというのだ。
「それならもうここでお話してもいいでしょ」
「私は構いませんが」
編集の人と思われる大人しそうな若い男の人が言ってきた。
「打ち合わせは後でということで
「おい、袴田さんはそれでいいのかよ」
「家庭のことが出来ませんと」
それこそというのだ。
「お仕事にも差し障りが出るので」
「だからかよ」
「はい、そうです」
それでというのだ。
「どうぞ」
「すいません、じゃあ馬鹿兄貴借ります」
七海はその編集者の言葉に乗った。
そしてだ、兄を自分達の席に座らせて話を再開した。七海は大輝と並んで座り向かい側に兄を置いてだ。
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