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儚き想い、されど永遠の想い

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232部分:第十七話 山でその九


第十七話 山でその九

「その殆んどが根拠のないものだった」
「偽りだったとのことです」
「そうだ。殆んど全てが嘘だった」
「あの王を貶める、若しくは彼等を正当化したい」
 そのだ。王を退位させ幽閉しようとした一派のだというのだ。
「創作でした」
「悪質な創作だな」
「そう思います」
「あの方はそれにより貶められてきた」
「ですが今では真実はわかっています」
「狂王ではなかった」
 このことがだ。わかったというのだ。
「決して」
「生前はあそこまで言われていましたが」
「今の我々から見ると」
 どうかというのだ。バイエルン王は。
「彼は繊細に過ぎた」
「その繊細さ故にですか」
「人を避ける様になったのだ」
「そして誰から理解されず」
「ああなってしまった」
 話はそこに至った。王は理解されなかったというのだ。
「これは悲劇だ」
「あのバイエルン王にとっての」
「そして彼を知る者にとっても」
「双方にとっての悲劇でしたか」
「そう思う。だが今ではだ」
「あの王は理解されていますね」
「そうした人が出て来た」
 そうなっているというのだ。そしてそれは。
「白杜家の方々の様に」
「はい、実は」
 ここでだ。真理が義正達に話してきた。
「お父様もお母様もです」
「自然を愛されている」
「そしてあのバイエルン王を理解されていますか」
「バイエルン王のお話ははじめて聞きました」
 その王のことについてはこう言うのだった。
「ですが」
「それでもか」
「あるのですね」
「そうです。お二人は芸術も愛されています」
 このことからだというのだ。二人がバイエルン王を知っている理由は。
「ですから。そうしたこともです」
「されるのだね」
「そうなのですね」
「はい、そうです」
 その通りだというのだ。
「そうなります」
「僕は長い間あの方々を誤解していた」
「私もです」
 義正も佐藤もだ。二人が同時に言った。
「芸術などとは全く無縁だと思っていた」
「しかしそれは違っていたのですね」
「それは御聞きしていなかったのですか」
「うん。そんな話は全く」
「悪い話ばかり聞いていました」
 八条家ではそうだったのだ。白杜家のことはそうした話、多分に事実なのか怪しい話を聞いていたのだ。そしてそれはだった。
「同じなのですね」
「同じというと」
「白杜家もまた」
「はい、八条家は」
 彼女の実家でもだ。それは同じだったというのだ。
 
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