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儚き想い、されど永遠の想い

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231部分:第十七話 山でその八


第十七話 山でその八

「今度の機会に」
「そうするといいよ」
「是非共です」
「はい。それでなのですが」
 ここまで話してだ。佐藤は。
 話を変えてだ。二人にこんなことを言ってきた。
「その山ですが」
「六甲のだね」
「私達が登っていたあの山のことですね」
「そうです。白杜家の方で」
 真理の実家だ。そちらの話だった。
「公園を造ろうという話が出ています」
「公園を?」
「それをなのですか」
「はい、その話を聞きました」
 それでだというのだ。
「先程ですが」
「公園というと」
「どうした公園でしょうか」
「自然公園とのことです」
 公園といっても色々ある。そしてだ。ここでの公園はというとだった。
「自然を保護して見る為の」
「自然の保護」
 そのことについてはだ。義正は。
 いささか目を丸くさせてだ。こう話すのだった。
「そんな発想があるのかな」
「はい、どうも西洋で」
 ここでも西洋だった。この時代の日本への影響はやはり大きい。
「そうした考えが出ていまして」
「それでそれをなんだね」
「はい、最近出た考えの様ですが」
「西洋のどの国だい?」
「独逸です」
 欧州の中で日本に最も強い影響を与えた国の一つだ。もっともこの時代は戦争に敗れ貧窮と荒廃の底にまで落ちてしまっていた。
 その独逸でだ。出て来た考えだというのだ。
「何でもバイエルンという国の」
「独逸の中にあった国だね」
「御存知でしたか」
「うたかたの恋の」
 森鴎外の作品だ。そのバイエルンを舞台としている。
「あのルートヴィヒ二世の国だったね」
「はい、そのバイエルン王の考えで」
「自然を保護する」
「あの王は自然を愛されていました」
 それでだ。その王の考えを取り入れてだというのだ。
「それで、ということです」
「バイエルン王。話に聞くところによると」
「よいお話は聞いておられませんか」
「音楽を愛していたそうだね」
 義正はバイエルン王についてここから話した。
「確か」
「はい、とりわけワーグナーをでしたね」
「音楽を愛し城を愛していた」
 それが高じて建築に走りだ。ノイシュヴァンシュタイン城やヘーレンキムゼー城といった壮麗かつ芸術的な城を築いていくのだ。
「そうした方だったね」
「はい、そうした方でした」
「独逸は今は」
 義正はそのドイツのことを話した。
「帝国じゃないね」
「独逸皇帝は退位しました」
「そしてバイエルンも今では」
「国ではありません」
 ドイツ帝国の中にだ。国として国王がいたのだ。独逸帝国は連合王国だったのだ。だがその帝国も一次大戦の時に倒れているのだ。
 その国にいた王だ。死してそれ程経っていないが最早伝説となっている。
 その王の影響を受けてだ。そうしていると聞いてだ。
 義正は感銘を受けながらこう言うのだった。
「よいことだ」
「旦那様もそう思われますね」
「あの王は生前は奇人と言われていたが」
「その考えは決して」
「間違っていなかった」
 そうだったというのだ。
「むしろ」
「正しかったと」
「そう思う。様々な奇行も」
 伝えられているだ。それもどうかというのだ。
 
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