楽園の御業を使う者
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CAST13
pi…pi…pi…pi…pi…pi…
「知らない天井だ」
目を開けると、知らない部屋に居た。
「起きたか?」
声が聞こえた。
その方向を見ると達也がパイプ椅子に座っていた。
えーっと…
「どんな…状況?」
起き上がり、達也に尋ねる。
体が…重い…あと…眠い…
「昨日の夜、大規模な事象改変が起こった。
何があったか調べようとしたらお前が急に倒れた。
ここは旧第四研究所の医務室だ」
倒れた?俺が?大規模な事象改変…?
昨日…なんか有ったのか?
「何か…あったのか?」
「覚えてないのか?」
何か…あったか…?
昨日はたしか…
「あぁ…そうか…真夜さんの…」
そうだ…思い出した…
「ははっ…成る程…力を使い過ぎたらこうなるのか…新しい発見だな…」
気だるさは体が、眠気は脳が、それぞれ休息を求めてるって訳か…
「やはりお前か…いったい何をした?」
何って…
「御当主…から…聞いて…ないのか?」
「何も聞いていない。
ただ…やけに上機嫌だったな…」
そか…
「なら…俺からは話せん…彼女に聞け…」
「………………………」
達也は黙ったまま俺を見ていた。
はて?何かやらかしただろうか?
「白夜…」
「んー?」
「真夜様のエイドスが大幅に書き換えられていたのだが…お前の仕業か?」
俺は答えない、答える訳にはいかない。
それは彼女の内面に関わる事だから…
「具体的には数十秒で肉体が若返り、その後で急速に成長したという改変履歴があった。
更には真夜様のせい…」
結局わかってるんじゃねぇか…
「相棒…そこまでだ…それ以上はいけない」
「…………わかった……今真夜様を呼んでくる」
え?
そのままスタスタと去っていった。
少しして、達也が戻って来た…真夜さんをつれて…
「白夜君!」
彼女は俺に駆け寄り、何故か抱きしめた。
「あぁ…よかった…」
あれぇ?
何この状況?
どうなってるの?と達也にアイサインを送るが、俺が知るかと帰ってきた。
「あー…えっと…真夜さん?」
なんか…甘い匂いがする…
「体は大丈夫かしら?」
「はい…まぁ…」
「ごめんなさいね…私のワガママで無茶をさせてしまったみたいね…」
無茶…か…
「大丈夫…ですよ。それに、俺の自己満足…ですから…」
「ふふっ…そう…それでも嬉しかったわ」
そっか…
「貴女こそ…体は…慣れましたか…?」
「まだ少しかかるわ…でもオールなんて久しぶりだったわ…」
おいおい…
「肉体が…若く…ても…寝不足はお肌の敵…だろ…?」
「そうね」
きぃぃぃぃ…
ふと物音がしてそちらを見ると達也が退室しようとしていた。
「達也さん?」
「なんでしょうか?」
「何をしてるのかしら?」
「馬に蹴られたくはないですので」
おい…何故そうなる?
「達也さん…貴方以外と容赦ないわね」
「申し訳ありません」
とか言いつつ全く謝る気ねぇなコイツ。
「そう…深雪さん達にも白夜君が目覚めたと伝えて貰ってもいいかしら?」
「かしこまりました」
今度こそ達也は退室した。
「本当によかったわ…貴方が何時までも目覚めない物だから…」
「いま…何時…?」
「十七時よ」
「そう…」
あぁ…あと…
「すこし…はなれてください…あたってる…」
その…なんだ…柔らかい二つのアレが…ね?
「気になるのかしら?触ってみる?」
アンタ…何いってんだ…
ていうか…そんな気分じゃない…
「そんな…気力…ない…です…」
「そうね…」
と言って真夜さんは俺の額に手を当てた。
「まだ少し熱があるかしら?」
まだ…?
ってことはあの後熱を出して倒れたのか…
心配かけたなぁ…
「今日には帰って貰う予定だったのだけど…
治るまでここに居なさいな」
「そう…させてもらい…ます…」
「ほら、横になってなさい」
と言われて、起こしていた体を再び横たえる。
真夜さんはベッドに腰掛け、俺の頭を撫でている。
「あの…もう中学生なんで…やめて欲しいんですが…」
「あら?いいじゃない。
それに無理して敬語使わなくてもいいわよ?私の事も真夜って呼ぶ?」
また…無茶振りを…
「んな事したら…分家…と使用人…に殺されちまう…」
「それもそうね」
いたずらっ子のようにクスクスと笑う彼女は、とても魅力的だった。
少女のような幼さと、大人の妖艶さが入り混じって、とても美しかった。
それを見て、頬が熱くなったような気がして、俺は彼女から顔を背けた。
「ふふっ…可愛い…」
「…おれはおとこだ…」
「そうだったわね」
またクスクスと笑った。
顔を背けているが、どんな顔をしているか想像が付く。
ドアが開く音がしたので、そちらを向く。
そこには司波兄妹と黒羽姉弟が居た。
「あら、来たのね」
そう言った彼女は少し残念そうだった。
「真夜様…白夜は…」
「安心なさい…白夜君?」
はいはい…
「おう…文弥…心配かけたな…」
「よかったぁ…」
「安心しろ…俺はそうそう死なん」
「それは演算領域が無事な間にすぎん。
俺やお前と言えど、サイオンや演算力が尽きれば回復はできない」
「俺のもお前のも魔法じゃねぇだろうが…
それにどっちもそうそう尽きねぇよ…」
「魔法演算領域がオーバーヒートした奴が言うな」
へーへー…
「彼をそんなに責めないでちょうだい…無理を言ったのは私なのだから」
真夜さんから思わぬ援護射撃が飛んだ。
「………………そうでしたか」
達也は少し間をおいて言った。
真夜さんが自分から言ったというのが納得できなかったのだろうか?
ふと深雪さんを見ると、真夜さんを見て首を傾げていた。
「なんですか深雪さん?」
「あの…なんといいましょうか…」
どうやら真夜さんに違和感を感じたようだ。
まぁ…あれだけ若返ったらなぁ…
「どこかおかしいですか?深雪さん?」
「あ、いえ、そのような事はありません…」
「まぁ、無理もありません。私だってまだ慣れていませんから」
「「「?」」」
深雪さん、亜夜子ちゃん、文弥がハテナを浮かべた。
「まさか本当に成功するとは思わなかったわ…
ふふ…ねぇ?白夜君?」
と言って再び俺の頭を撫でる…
「なでるな…」
あぁ…今度は達也まで固まってる…
「白夜君、もう少し寝ていなさい…
あなた達はそろそろ戻りなさい。
そうね…達也さん、深雪さん達に何があったか説明なさい」
そう言われて、俺は少しだけ気が抜けた。
気が抜けた俺は気だるさと睡魔に抗えず、再び意識を沈めた。
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