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儚き想い、されど永遠の想い

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219部分:第十六話 不穏なことその十一


第十六話 不穏なことその十一

「御心配をおかけしました」
「はい、それではです」
「それでは?」
「今は風邪あけなので止めておきますが」
 それでもだとだ。彼女に話すのだった。
「暫くしてです」
「暫くして」
「山に行かれますか」
「山ですか」
「はい、六甲の山に」
 そこにだ。二人で行こうかというのだ。
「そこに行かれますか」
「そうですね。六甲の山に」
「あそこから見るものは非常に素晴しいですから」
「海に街に森に」
 これまで義正と共に楽しんできた場所についてもだ。真理は話した。
「そして今度はですね」
「山にです」
「いいですね。それでは」
「はい、暫く経ってから」
「後は」
 それでだと。真理はさらに話した。
「川は」
「川ですか」
「そう、川もよかったですね」
「そうですね」
 二人でだ。川のことも話したのだった。
「二人でいる場所は何処でも」
「よかったです」
「とても」
「後は」
 後はだと。二人で話した。
「山ですね」
「今度は山で」
「山を二人で楽しみましょう」
 次に行く場所も決まったのだった。二人は病の後でも幸せだった。
 その幸せは周囲もだ。見て幸せに感じた。義正の両親、八条家の総帥である彼等はだ。自分達の部屋で仲良く話をするのだった。
「義正と真理さんも」
「そうですね。幸せですね」
「幸せに過ごしている。いいことだ」
 微笑んでだ。父は妻である母に話した。
「そうなるとわかっていてもだ」
「それが実際のものになると」
「やはりいい」
 素直にだ。二人の幸せを感じての言葉だった。
 そしてそれをだ。祝福もしていた。
「このうえなくな」
「そうですね。後は」
「後はですね」
「子供だな」
 それだというのだ。
「二人だけでなく。他に家族ができれば」
「さらに幸せになりますね」
「だから。子供だ」
 そのだ。子供が授かればいいというのだ。
「子供ができればな」
「ええ。ただ」
「そう、こればかりはな」
「望んでも得られるものではありません」
 それが子供というものだった。子供は得られる者は得られる、しかしそれでも得たいと思っていても得られない者もいる。そして望んでいなくとも得る者がいる。この辺りは運命、そして神の裁量なのである。
 その神の裁量の話だからだ。どうしてもというのだ。
「まさに天の配剤ですね」
「その通りだ」
「では。待つしかありませんか」
「わし等がどうこう言ってもな」
 それでもだと。こうした話にもなる。
「そればかりはな」
「そうでしたね。それは」
「わし等はだ」
 自分達の話もだ。彼は笑顔で話す。
「幸いにして四人の子宝に恵まれた」
「しかもその四人が全てですね」
「あの歳になるまで育っている」
「それだけでも果報者ですね」
「そうだな」
 この時代はまだ乳幼児の死亡率が高かった。それが改善されるのは戦後になり医学が画期的に進歩してからだ。それからのことなのだ。
 
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