儚き想い、されど永遠の想い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
203部分:第十五話 婚礼その十二
第十五話 婚礼その十二
「凛々しく。そして」
「そして?」
「奇麗です」
「そうだな。そうした感じだな」
「今の義正はそうですね」
両親もだ。末娘の言葉にだ。満足した顔で述べるのだった。
「晴れの場に向かうせいか」
「そう見えます」
「そうなのですか」
言われた本人はあまり自覚することなくだ。こう返した。
「今の私はそうですか」
「そうだ、いい感じだ」
「場に飲まれることもないでしょう」
「場にですか」
つまり己の式の場にだ。飲まれることもないというのだ。
義正は両親のその言葉を聞いて考える顔になった。そのうえでだ。
どうもわからないといった様子になり。彼等に問い返した。
「そうしたこともあるのですか」
「そうだ。ある」
「場は魔物でもあります」
「魔物ですか」
「場に飲み込まれて己を見失うな」
「そういうことです」
具体的にはだ。そうだというのだ。
「いいな。今の御前は場に向かうことができる」
「自分がしっかりとありますから」
「場に飲まれず。そのうえで」
「式を最後まで無事に果たせ」
「そうして幸せをはじめるのです」
「幸せを」
この言葉でおおよそがわかりだ。義正もだ。
しっかりとした顔に戻ってだ。そのうえでだった。
その次に微笑みになり。両親に答えた。
「わかりました。それでは」
「御前が先に式場にいてだ」
「そうしてあちらの方がですね」
「はい、来られます」
話は式のそれに移った。西洋式のそれにだ。
「新婦のお父上がエスコートされて」
「白杜家の彼がか」
「そうですね。あの方が」
両親も今はその名を口にしても何も思わない。むしろ親しみさえ感じていた。
そのことに気付いてだ。二人は顔を見合わせて笑ってだった。
「不思議だな」
「そうですね」
「これまでは名前を口にするのも憚れた」
「思うことさえ」
「しかし今ではこうして」
「自然に思えます」
「そうですね。本当に」
義美もだ。微笑みつつだった。両親と兄に話す。
「これまではなかったことです」
「しかし本来はそうあるべきだった」
父は笑顔で話した。
「無意味な対立だったのだからな」
「その通りですね。だからこそ」
「ではだ」
母に応えて。そしてだった。
父は立ち上がった。母も続く。
立ち上がってから再びだ。義正に対して尋ねた。
「そして義愛と義智だが」
「もうここに来ていますね」
「はい」
来ているというのだ。二人もだ。
「既に来られています」
「そうか。それではだ」
「二人もここに」
両親は義正からその話を聞いてすぐにこう言った。
「呼んでくれるか」
「それでは」
「はい、それでは」
佐藤が応えてだ。そのうえでだった。
ページ上へ戻る