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漢道

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第三章

「都合のええこと言うな、さっさと警察に出頭して逮捕されろ」
「糞っ、言いたい放題言いやがって」
「それが出来る筈ないだろ」
「早く車用意しろ」
「さもないと子供達がどうなっても知らないぞ」
「あくまでそう言うか、しかも子供達を人質に取ったままで」
 子供達はまだ怯えている、命の危険を感じているのは確かだ。自分達の両親に助けを求めて泣いている子供もいる。
「そうするか、子供を盾に取って嬉しいか」
「俺達が助かるのならな」
「子供達なんか知るか」
「本当に撃っちますぞ」
「車用意しないとな」
「おどれ等の性根はわかった、素直に出頭すれば許したが」
 当直はこの場合はそれでよしとしていたのだ。
「そう言うなら別のことしたるわ」
「別のこと?」
「何だそれは」
「どうするつもりだ」
「いますぐわからせたる」
 こう言ってだ、当直は。
 一瞬だった、まるで光の様に強盗達に突っ込み。
 彼等に強烈な頭突きを見舞った、その頭突きでだった。
 強盗達は皆吹き飛ばされ気絶した、それで終わらせてだった。
 子供達を助け出して通天閣から降り立った、強盗達は全員縄で縛って引き摺っていた。
 事件は解決した、強盗達はすぐに留置所に送られ子供達は彼等の親の元に返された。無事にその両方を果たした当直にだ。
 周りの者達は彼に対して尋ねた、この事件について。
「あの、一瞬でです」
「事件を終わらせましたけれど」
「最初からですか」
「ああされるおつもりでしたか」
「そや、子供達に何かする前にな」
 まさにというのだ。
「ああしてや」
「頭突きで、ですか」
「当直さんの切り札の一つで」
「一気に終わらせるつもりでしたか」
「俺の頭はダイアモンドの二十倍の硬さや」
 このことは科学的に立証されている。
「その頭突きやったらな」
「強盗共程度はですか」
「一瞬でやっつけられる」
「そやからですか」
「あの場にお一人で乗り込まれたんですか」
「連中が撃つ前に出来た」
 当直の力ならだ。
「そやから行ったんや」
「そうですか、けどです」
「あの時は待ってもよかったんじゃ」
「そうしても」
「いや、子供達が怯えてた」
 このことを言う当直だった。
「そんな子供達を一秒でも長くな」
「放っておけなかった」
「それで、ですか」
「あの時はお一人で行かれたんですか」
「そうだったんですか」
「俺一人で行けたしな」
 仲間の戦士達の手をわずらわせるまでもなくというのだ。
「それで行った、子供が泣く姿なんてええもんやないやろ」
「ですね、確かに」
「子供泣かせたらいけないですよ」
「そのことを思うとですか」
「いても立ってもいられず」
「それで行った」
「そうだったんですか」
「そや、それで言ってや」
 そしてというのだ。
「子供達を助けたんや」
「そうでしたか」
「一秒でも早く助ける為に」
「そうしましたか」
「おとんが言うてた」
 彼を守って死んだ父がというのだ。
「子供を泣かしたらあかんってな、大人はそして」
「本当に強い人間は」
「絶対にですか」
「そう言うてや、そやから俺はああした」
 まさにというのだ。
「おとんが言うてた通りにな、そしてな」
「これからもですね」
「そうされるんですね」
「お父さんが言われたみたいに」
「そうしてく、強い人間になりたいからな」
 こう言ってだった、当直は今度は飼い猫がいなくなって泣いている子供のところに飛んで行った。そうしてその猫を見付けて子供のところに行って子供を笑顔にしたのだった。


漢道   完


                   2018・1・24 
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