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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -

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幕間の物語 I

 
前書き
幕間の物語です。
皆さん、お気付きかもしれませんが作者の一番好きな女性キャラはスカサハです。

ではどうぞ。
 

 
 無事特異点Fを攻略したカルデア一行。彼らは次なる戦いに向け英霊召喚を執り行おうとしていた。

「皆、心して聞いてほしい。カルデアで観測した結果特異点が全部で7つ確認された。その全てが人類史の転換期となったターニングポイントであり、特異点の歪みを作り出す原因となっている。」

 そんな彼らの前で弁舌を振るうはロマニ。

「それら全てを修正するには困難を極めることは間違いない。」

 続けて彼の言葉を補足するは万能の天才であるダ・ヴィンチ。

『───だけど私たちには英霊召喚という頼れる強力な助っ人を呼び出す術があるわ。』

 最後に彼らの言葉を締めるはカルデアの現所長であるオルガマリー。彼女はウィスが持つ杖にて宙に投影されたホログラムから顔を出していた。

 ウィス自身英霊を召喚することには大いに賛成だ。

 有事の際に自分は対処できない可能性が高い。故に立香とマシュたちを守護する強力な仲間が必要なのだ。

「───呼び出す英霊だが、先ずはスカサハを呼び出してもいいだろうか?」

 そんな中率先して意見するはウィス。

 通常の聖杯戦争であれば今なお存命しているスカサハを呼び出すことは不可能だが、今回は例外中の例外として召喚することができるはずだ。
 
 その根拠としてこの一連の騒動が起きた後幾度探ってもこの星の何処にもスカサハの魔力が感じられない(・・・・・・)。このことから人理焼却の熱は影の国にまで及んだのだろう。

 だがこれはまたとない千載一遇の機会でもある。世界の誓約によりスカサハは影の国より外へ出ることはできない。しかしこの人理焼却によって一時的に死を得ている今ならば───。


 スカサハというビッグネームに驚くロマンたち。一人立香だけは分からずに首を傾げているが。

「た…確かにあのスカサハなら戦力として問題はないけど。」
「で…ですが、カルデアの召喚術式では召喚される英霊は全てランダムです。」
 
 マシュの言う通りカルデアの召喚術式では狙って特定の英霊を呼び出すことはできない。そう触媒がなければ。

「───成程、持っているんだね。スカサハを召喚するに値する触媒を。」

 いち早く理解の意を示すはダ・ヴィンチ。

「そう───このゲイ・ボルクを召喚の触媒として使う。」

 ウィスが杖から取り出すはゲイ・ボルク。その紅き朱槍の矛先からは赤く光る───





『───。』





「…あ、あの、ウィスさん。私の見間違いでなければその槍の先に血液が付着しているのですが……。」

 何処か躊躇いながらも此方に真偽の程を尋ねるマシュ。

分かる、マシュの気持ちはよく分かる。

「───この血はスカサハ本人のものだ。スカサハいわくこの血には願掛けの意味合いが込められているらしい。」

 見れば今にもその矛先から血が滴り落ちそうである。だがウィスの魔力によって朱槍の周囲をくまなく包むことで、当時の状態のまま上手く保存しているのだ。







『───。』







「──随分と愛が重い女性のようだね、スカサハは。」

 彼らの気持ちを代弁するダヴィンチ。

「───召喚しよう。」

 ウィスは思わし気な笑みを浮かべ、手に持つゲイ・ボルクを前方にかざした。



 朱槍から血液が滴り落ち───


───召喚が始まる───


 光が走り、循環し、辺りを幻想的に照らし出し───


 むしろウィス本人が強い触媒となり───



「影の国よりまかりこしたスカサハだ。お主をマスターと呼べば───。」

 現れるは絶世の美女。彼女は此方を図るように見渡し───

 ウィスの姿を目にし、口を閉ざした。





『───。』

 視線を交錯させるウィスとスカサハ。





「──元気そうだな、スカサハ。」
「──お前も相変わらずだな、ウィス。」

 2人は顔を見合わせながら互いに微笑み合う。


 そんな中スカサハは笑みを浮かべながらウィスの方へと歩を進めていった。


 また一歩。


 また一歩と───


 スカサハはウィスに近付き───


 ウィスの頬に手を添え───


───二人の距離はゼロになった。





『!?』





「──。ふふ、私を待たせた罰だ。」

 スカサハは楽し気に、愛しむようにウィスから身を引く。対するウィスも満更でもない様子であるが。

 状況についていけない立香たち。見ればダ・ヴィンチ以外の全員が皆一様に顔を赤くしていた。

「あぅ、あぅ…。」
「フォフォウゥ…。(こいつは凄ェ…。)」
「うわー大胆だな、影の国の女王様は…。」
『キ…キッキッキスッ!?』
「───。」
「ほほーう。」

「互いに積もる話もあるだろうからな。後はウィスの部屋で語ろう。」

 スカサハは呆然とする立香たちのことを我関せずな様子でウィスの襟首を掴み、力強く引っ張りこの場を後にした。


 こうしてカルデアに新たな仲間であるスカサハが召喚された。







▽▽▽▽▽▽▽▽▽







「師匠とウィスの2人の関係が知りたい?」

 此処は食堂。皆が日々の疲れを癒すべく集う場所である。

 その食堂にてクー・フーリンは不思議気に眉を寄せながらジャンヌの言葉を反芻していた。

「は、はい。スカサハさんとウィスのお2人の関係を知りたくて…。」

 どこか躊躇う様子を見せながらもそう尋ねるは個人によって差はあれどウィスを皆一様に慕う女性たちである。


 ジャンヌ、邪ンヌ、アルトリア、モードレッド、アタランテ、メデューサ、メディア───


 そんな彼女たちを代表してジャンヌが尋ねる。

「まあ、一言で言えば相思相愛だな、ありゃあ。お互いがお互いに依存し合っているんだわ。」

「依存…ですか?」

 悩まし気に首を傾けるジャンヌ。

「ああ、師匠の方が過剰に依存していることは間違いないがな。」

 聞き漏らすまいと一字一句真剣にジャンヌたちは耳を傾ける。クー・フーリンはそんな彼女たちの様子を横目にしながら話を続けた。

「──それに気付いている奴もいると思うが師匠はかなりのヤンデレだ。」

 スカサハはヤンデレ、間違いない。愛がとにかく強く、重いのだ。その愛を受け止めているウィスも凄いのだが。

「昔オイフェっていう師匠によく似た女性がいたんだが、ウィスがそいつと少し仲良さげに話してるだけで嫉妬していたからな。あの時の師匠は目のハイライトが消え、ゲイボルクを投擲しようとしていてそれは恐ろしかった…。」

 遠い目をしながら語るクー・フーリン。

「師匠が暴走した時はいつもウィスが止めてたっけ……。」

 彼は懐かしげにどこか達観した目で虚空を見つめる。相当苦労したのだろう。

「生娘のように嫉妬してよ。たくっ、年を考えろっての、年を。」

 年を強調し、思わず口を滑らせるクー・フーリン。

「───ほう、それは私のことか?」

 そんな彼に言葉をかけるは───

「当たり前だろ。あんた以外に誰がい…」


いや、待て

今、自分は誰と話している?



「随分と面白い話をしているじゃないか。私も是非交ぜてくれないか?」

「は、ははっ。し…師匠───」








───キャスニキがログアウトしました───








「さて、私とウィスの関係だったな。」

 地面には血溜まりにて倒れ伏すクーフーリンの姿が。

「は…はい。」

 思わず声が震えるジャンヌ。見れば彼女以外の女性たちもスカサハにどこか引いていた。

「私とウィスの出逢いは─、殺し愛だな。」

 そう、殺し"愛"。

「あ、あの、すいません。今の言い方おかしくありませんでしたか?」

 突っ込まずにはいられないジャンヌ。

「気のせいだ。」

 スカサハは華麗にそれをスルーする。




「それで…スカサハさんはウィスのことをどう思っているのですか?」

「そうだな──、言葉に表すことができない程に想っているのは確かだ。」

 慈愛に満ちた表情で過去を回顧し、スカサハは本心を言葉にする。正に彼女らしい堂々とした物言いであった。

 固唾を飲み耳を傾けるジャンヌたち。


「──嬉しかったよ。世界が終わるその時まで一人だと覚悟していたからな。」

「──影の国から旅立つこともあったがウィスは必ず私のもとへ帰ってきた。それだけでどれだけ私が救われたか、ウィスは自覚していないだろう。」

「──自分の元に帰ってきてくれる人がいる。」

「──自分を余すことなく受け入れてくれる人がいる。」

「──私と同じ時間を共有してくれる。共に傍にいてくれる。」

「──ウィスと出会ってからこれまでの空虚な私の人生が色着き、輝かしいものになったのは間違いない。」

「──私自身束縛が強く、面倒な女であることは自覚している。だがそれでもウィスは私を受け入れてくれた。」

「いや、強いってレベルじゃないだろ。」

 そこに空気を読まずに横槍を入れる男が。槍ニキだけに。








───槍ニキがご臨終を迎えました───








「まあ、詰まり何が言いたいのかと言うとウィスと付き合いが最も長いのは私と言うことだ。」

 勝ち誇るような表情をジャンヌたちに向けるスカサハ。

「お前たちがウィスに好意を向けるのは勝手だが私があいつの一番ということに変わりはない。」

 スカサハは自信に溢れた声で彼女たちへ宣戦布告を行った。

 








 一方件のウィスは───

「わわっ!凄いです!トナカイさん!」

 ウィスの背中で嬉し気に無邪気にはしゃぐはジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。彼女はジャンヌ・ダルクのオルタ面であるジャンヌ・ダルク・オルタから生まれた存在である。

 ジャンヌ・ダルク・オルタは正史にて本来存在しない英霊だ。だがどういうわけかウィスのことは覚えていた。いや魂そのものに刻み込まれていたのだ───。

 彼女は祖国と神を激しく憎悪したジル・ド・レェの願いによって現界した英霊。それは間違いない。だが過去にウィスが起こしたジャンヌを陥れた奴らを粛清したあの事件(・・)の存在も大きく彼女たちに関わっているのだろう。

 無意識にこの幼き少女もウィスのことを求めているのかもしれない。

「高いだろー?まだまだ高く飛べるぞ、リリィ?」

 微笑まし気に彼女をウィスは愛しむ。


 悔いのないように。


 彼ら、彼女たちが後悔を残さないように。


 自分は彼らの如何なる求めにも応えよう。


 自分に残された時間はもう残り僅か(・・)なのだ───













───此れは刹那のカルデアが舞台の幕間の物語───


 誰もが笑い、言葉を交わし、各々の想いをぶつけ合う。

 そこに悲劇など存在せず、彼らは何気ない時間を享受していた。

 しかし運命とは残酷で唐突に終わりを迎えるもの。彼らの旅路は着実に終わりへと向かい、ウィスに残された時間も刻一刻と減り続け、終極へと誘われていく。


───彼らとウィスの別れの刻は近い───
 
 

 
後書き
<史実のスカサハのヤンデレエピソード>
この世界線ではスカサハ→ウィス

・兄貴が好きだと言った仙界の王の妻「イーテン」暗殺計画を企てる(途中で諦めるが)   →NTRとかウィスさんドン引きです
・兄貴の言葉を誤解し見逃した海賊の殺害→相互理解には問題ありません
・兄貴が小言いった侍女の即殺→ウィスがそんなことを言うわけないだろ、いい加減にしろ!
・兄貴の好みに合いそうな捕虜である金髪女の処刑→ウィスが全力で止めました
・兄貴の為なら血を流すのも厭わない→ウィスは気にしませんし、動じません
・兄貴の帰国後の落ち込み具合が酷く影の国の民は目も合わせられなかった
→ウィスが常時影の国にいるのでセーフ(汗)

故にこの世界線では上記の様な凄惨な事件は起きていません。全てウィスさんのおかげ。

人類史において不可解な程に悲惨な出来事が減少している理由?
何言ってるの?決まっているじゃないか。

全てウィスさんのおかげ(格言)
 
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