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レーヴァティン

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第三十八話 オーロラの下でその十一

「今から彼のところに行きましょう」
「死んでいたらその時はその時だよ」
 源三の口調は明るかった。
「生き返らせばいいし」
「まずは、か」
「彼のところに行こうね」
「それじゃあな」
「では行くでござる」
 進太は言いつつ足を踏み出した、彼が最初にそうした。
「これから」
「ああ、会おうな」 
 久志も応えてだ、そしてだった。
 一行は大男のところに来た、服は長いマントで身体を覆っておりズボンもブーツもかなり分厚そうだ。黒髪はショートヘアの長さで背中を向けている。久志がその彼に対して声をかけた。
「おいあんた生きてるか?」
「・・・・・・・・・」
 返事はなかった、それで久志は仲間達に言った。
「本当に死んでるのかもな」
「そうかも知れないですね」
 順一は久志にまさかと思いつつ応えた。
「返事がないですから」
「そうだよな」
「はい、これではです」
「本当に死んでるのかもな」
「そうかも知れないですね」
「いや、ちょっと待って」
 大男が死んでいる可能性を本気で検討しだした二人にだ、源三が言った。
「この人生きているみたいだよ」
「そうか?」
「うん、身体動いてるよ」
 大男を指差して話した。
「息をしているみたいに」
「そういえば」
 順一は源三の言葉を受けてあらためて大男を見た、すると身体が僅かだが一定のリズムで上下に動いていた。
 その動きを見てだ、順一も言った。
「息をしていますね」
「そうだよね」
「はい、間違いなく」
「つまりこの人はね」
「死んではいないですね」
「うん、生きてはいるよ」
 息をしていることが何よりの証拠だった。
「そうだよ」
「そうですね、生きていますね」
「じゃあ何で返事しないんだよ」 
 久志も大男が息をしていることを確認した、だがそれでもとだ。眉を顰めさせ首を傾げさせたうえで言った。
「こいつは」
「とりあえずもっと近寄ってみような」
 正はいぶかしむ久志にこう提案した。
「それで耳元に行ってな」
「そしてか」
「声をかけたらいいだろ」
「そうだな」
 久志も正の言葉に頷いた、それで一行は大男にさらに近寄った、そうして手を出せば触れる距離まで近寄ってだ。
 そのうえでだ、久志はまた大男に声をかけた。
「おいあんたどうしたんだ?」
「ん?」
 大男から声がした、低く重いバスの声だった。
「それ僕かな」
「そうだよ、あんただよ」
「いや、僕はね」
 振り向いてきた、見れば顔は童顔で巨大で逞しい身体とはいささか不釣り合いである。
「ここまでずっと来て寝ていたんだ」
「寝てたのかよ」
「そうなんだ、立ったままでも寝られるから」
「それで返事がなかったのかよ」
「さっきも呼んでたんだ」
「そうだよ、しかしこんなところで寝てるとな」
 氷原地帯、この上なく寒い場所だからだ。
「凍死するぜ」
「いやいや、カイロも中に入れてるから」
 服の中にというのだ。 
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