儚き想い、されど永遠の想い
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188部分:第十四話 忍び寄るもの十四
第十四話 忍び寄るもの十四
義正はそのことを決まっているとしてだ。そのうえでだった。
真理にだ。このことを告げた。
「後は。それを式として挙げるだけです」
「では私達は既に」
「はい、結婚しています」
心と心がだ。そうなっているというのだ。
「後はそれをです」
「式として昇華させるのですね」
「そうなります」
珈琲を飲みつつだ。真理に話した。
「それでは」
「はい、それでは」
「宜しく御願いします」
義正からだ。先に真理に話した。
「これからも」
「私も」
そしてだ。次は真理だった。彼女もまた義正に言うのであった。
「宜しく御願いします」
「はい、それではですね」
「御互いに」
まさしくだ。二人共であった。
そうなると話してからだ。義正は今店の中でかけられているその音楽について話すのだった。
「今かけられているのはフィデリオですね」
「フィデリオとは?」
「ベートーベンの唯一の歌劇です」
ベートーベンはその生涯で一作だけ歌劇を遺した。それがフィデリオという作品だ。この作品に対してベートーベンはかなりの労力を費やしてもいる。
「それの序曲です」
「それがこの曲ですか」
「そうです。妻が囚われの夫を救う話です」
「妻が夫をですか」
「普通は逆ですね」
ここで義正は微笑んでこうも言った。
「そうなりますね」
「はい。普通は夫が妻を」
「しかしフィデリオでは違います」
そのだ。ベートーベン唯一の歌劇においてはというのだ。
「助け出されるのは夫の方です」
「それが風変わりに思えますが」
「しかし風変わりではないのです」
「違うのですか?」
「想う相手、愛する相手を救いたいという気持ち」
このことをだ。直接言うのだった。
「それは誰にもあるものですから」
「だからなのですね」
「はい、だから自然なのです」
そうした一見逆に思える話もだ。そうだというのだ。
「私はそう思います」
「そうですか」
「私は真理さんに何かあれば」
話を彼等に投影してきた。他ならぬ彼等にだ。
「そうします」
「私を助け出して下さいますか」
「そのつもりです」
覚悟をしている顔でだ。真理に話した。
「そうさせてもらいます」
「それでは私も」
真理もだ。その義正に応えてだ。珈琲のカップを置いたうえでだ。義正に話した。
「そうさせてもらいます」
「私に何かあればその時は」
「決して逃げません」
毅然として。そのうえでの言葉だった。
「何があろうとも」
「そうですか。では私達は」
「私はその。フィデリオの主人公になりたいです」
願望だが。確かな願望を話すのだった。
「彼女に」
「では私は」
「義正さんは」
「真理さんに何かあれば助け出す」
それはだ。何かというところから話すのだった。
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