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歌集「冬寂月」

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十四




 小夜更けて

  さみゝ風吹く

   冬空に

 想い流せば

   梅の香ぞする



 真夜中…寂しさを紛らすように歩いていると、星さえない空には弱々しくも凛とした風が吹くだけ…。

 あとどれ程の寂しさが待つのか…辛さや苦しみが待つのか…。

 忘れられない想いが過った時…不意に梅の香りがした…。


 懐かしい…梅の香りが…。



 夜に舞ふは

  寂しき現の

    想いゆゑ

 忘らるる身の

    いとも侘しき



 時は無常に過ぎ行くだけ…何をしても…何もしなくとも…。

 夜の闇は心の鏡のように…愛しい人を映し出す…。

 だが…愛されることはない…。

 私は忘れ去られる身なのだ…いつしか消え逝くだけなのだ…。

 なんと侘しく…虚しいことか…生きるということは…。



 
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