とある3年4組の卑怯者
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96 御殿場
前書き
大会のためにスケートの練習を続ける藤木。そんな彼の元に、大会の招待券が届き、藤木はそれを両親やみどり、堀に配る事を決めたのだった!!
堀は藤木から電話で招待券をあげるからスケート場へ来て欲しいと言われ、その翌日スケート場へ行き、藤木と会った。そして、その自分とみどりと車を運転する父親の三人分貰った。
「藤木君、頑張ってね」
「うん!」
さらにまた翌日、みどりは堀から大会の招待券を堀から貰った。
(これが招待券・・・。大会での藤木さんの格好いい姿、どんなものかしら・・・)
みどりは楽しみでいっぱいだった。
藤木はスケート場で調整をしていた。そして、ジャンプをし、その間に空中でスパイラルにするという技を考え出し、その練習に励んでいたのだ。これは簡単にできるものではない。下手すれば捻挫の可能性もある。それでも藤木はできるように幾度も試みた。
(なんとしてもできるようにする!そうしなければ優勝はおろか上位にも入れないぞ!)
藤木はこの技が完成できるよう、必死にかつ怪我に注意を払い特訓した。しかし、手が上手く足首を掴めない。藤木は悔しさを滲ませた。
(くそう、なぜできない!?)
そして練習に打ち込むうちに日が暮れて外は暗くなっていた。
(仕方ない、今日はこれで終わりにしよう・・・)
藤木はスケート場を出て家に帰った。
藤木は帰る途中、笹山と遭遇した。
「笹山さん・・・」
「藤木君?まさか今日もあの子と会ってたの?」
「いいや、今日は一人さ。君も今日は遅いんだね。ピアノかい?」
「うん・・・。あの、藤木君、今までごめんね・・・!!藤木君にあんな酷い事して、傷つけて、ヤキモチまで焼いて・・・。やっぱり私藤木君がいないと寂しいの。自分から振った私が言うのもなんだけど、あの子を好きになっても構わないから私の事嫌わないで。藤木君の気を楽にさせるために不幸の手紙を出した人も見つけ出してあげるから!」
笹山は泣きながら藤木に謝った。
「笹山さん・・・。もういいよ、僕が悪いんだから、君の気持も分からなくないよ・・・。僕もちゃんと言わなくてごめん、僕もこれからは卑怯を治すよう努力するよ。だから、今度何かあったら君にでもちゃんと打ち明けるよ・・・!!」
「藤木君・・・。うん、今度私にもスケート見せてね!」
「うん、じゃあね・・・」
藤木と笹山はお互い別れた。
(笹山さん、あの技、完成したら君に見せてあげるよ・・・!)
藤木は次の日も練習を重ねた。アクセルをし、スパイラルの体勢に・・・。
(・・・ん、できた?)
藤木は一瞬自分を疑った。そして、もう一度やった。さっきほどではないが、できるようになったのだ。
(ほ、本当にできた!よし、これがまぐれにならないように普通にできるようにするぞ!)
藤木はまた同じことを繰り返した。
「随分と難しい練習をするじゃないか」
藤木が振り向くと、和島が立っていた。
「君、見てたのかい?」
「ああ、そうさ。ジャンプした後、スパイラルの姿勢に移るなんて凄い難しいよ。まあ、いくら練習しても失敗はするときもあるさ。ほ、ん、ば、ん、で失敗しない事を祈るだけだね。じゃあ、ボクは自分の練習をする事にするよ」
和島はそう言って自分の練習をした。
(今に見てろ!絶対に成功させるからな!!)
藤木は和島に敵意を持ちながらも練習を続けるのであった。
そして、御殿場に行く日が来た。藤木は案の定、走って家に帰った。
(よし、ついにこの日が来たぞ!!)
なお、この様子をリリィが見ていた。
(藤木君、何だか沈んだ様子が見られない・・・。何があったのかしら?)
その時、たまえが呼び掛ける。
「リリィ、どうしたの?」
「あ、いや、何でもないわ!」
「それにしても藤木、なんか前より気落ちしなくなったよね。どうしたんだろう?」
「え、ええ、そうね・・・。何かいい事があったのかしら・・・?」
リリィは一度嫌ったはずの藤木の行動が気になっていた。
(藤木君、貴方が元気を取り戻したなら、それは一体何なの?)
藤木は家に帰ると母親から出掛ける準備ができたというので、出前で取った天丼を食べ、両親と共に家を出た。
清水駅にて藤木達は熱海方面の列車に乗った。そして沼津にて東海道線から御殿場線に乗り換えて御殿場に向かうのだった。
永沢は特に何もする事がないので漫画を読んでいた。丁度トイレに行きたくなり、トイレを済ませた所で電話がなった。
「ん?誰からだ?」
永沢は受話器を取った。
「もしもし」
『おう、君は永沢んとこの君男君かい?おじさんはね、お父さんの「昔の友達」だよ。お父さんいるかい?』
「は、はい、ちょっとお待ちください」
永沢は父親を呼んだ。
「父さん、何だか父さんの友達っていう人から電話だよ?」
「何?友達?一体こんな時になんなんだ?」
永沢の父は電話を出た。
「もしもし」
『元気だったかなあ!?永沢んとこの秀夫君よお!』
(こ、この声は・・・!!)
永沢の父は恐怖感を覚えた。
「お、お前はまさか、各務田出吉か?一体何の用だ!?」
『いやあ、玉葱は焼いた方がいいと思ったが、生憎命は無事だったようだな。やっぱりみじん切りの方が手っ取り早い・・・』
「何わけのわからん事を言ってる!用件はなんだ!?」
『・・・殺す』
電話の相手はそう言って電話を切った。
「おい、お前達!!」
永沢の父は家族全員を呼んだ。
「ど、どうしたの、あんた?!」
永沢の母が驚いた。
「早く荷物を纏めて逃げるぞ。私らを殺そうとする奴がいる」
「ええ!?」
永沢もその母も驚いた。
「でもなんで!?」
「訳は後だ!いいから早く支度しろ!!」
こうして永沢家は逃げる準備をした。
藤木達は御殿場に着いた。富士山の麓に位置する都市で、気候は冷涼で、夏季は避暑地として訪れる人も多い。また、水かけ菜がという野菜が栽培され、御殿場の特産品にもなっている。
「ここが御殿場か・・・」
「清水よりも寒く感じるわねえ・・・」
両親はそのような会話をしていた。
(ついに来たんだ・・・)
藤木は緊張の渦に呑み込まれながらも絶対に勝ち抜くという決意を見せた。
後書き
次回:「戦時中」
各務田出吉から逃げ惑う永沢家は途中、花輪とヒデじいに出会う。ヒデじいは戦時中の各務田の父が町内会長を務めていた頃を語る・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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