歌集「冬寂月」
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十三
寂しさに
想いそぼ降り
夜も更けて
心に滲むは
涙なりけり
寂しさにため息をつき…身の虚しさにまた、ため息をつき…。
浮かぶ思い出は…もう永遠に有り得ないいつかの時間を映し…。
それでも…夜は更けてゆき、寂しさに心は滲む…。
泣けぬ涙は…心へと降るようだ…。
鴨ぞ啼き
飛ぶや闇夜に
在りし日を
映すや侘し
安之堀川
月のない真っ暗な夜の闇…。
不意に鴨の鳴き声が聞こえたかと思うと、故郷の思い出が脳裏を過った…。
あぁ…彼と鴨の話をしたことがあったな…。
胸を締め付けられる程の虚しさ…寂しさ…侘しさ…。
そして…虚無…。
故郷の川とは比べるべくもない安之堀川だが、汚れた川とて…闇夜では分からぬものだ…。
暫し…あの頃の幻影に身を委せようか…。
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