銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第六十四話 マチアス囮作戦
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第六十四話 マチアス囮作戦
帝国暦480年3月2日
■オーデイン ノイエ・サンスーシ バラ園
この日早朝からの謁見を追えた銀河帝国第36代皇帝フリードリヒ4世は、
午後から非公式な謁見の為にバラ園へテレーゼ皇女と共に来ていた。
バラ園では、にこやかに笑いながら話しをする、皇帝と皇女の姿が有る。
其処へ侍従武官シェーンシュテット准将からメルカッツ中将参内しましたと報告があり、
バラ園へ通す様に皇帝が命じた。
緊張した趣でバラ園へ入るメルカッツ。
彼の皇帝に対する忠誠心は類い希なるモノであり、優秀な将帥でもある。
その彼がバラ園という皇帝の私的スペースと言って良い場所に呼ばれるのである。
皇帝陛下への拝謁という栄誉に緊張がヒシヒシと、その全身からにじみ出していた。
メルカッツは皇帝陛下に近づき跪く。
皇帝陛下と皇女殿下がにこやかにメルカッツを見る。
「来たか」
「はっ」
「メルカッツよ。そちにローエングラムの兵権を預ける」
買い物を頼むようにサラリと言う皇帝。
「御意」
「メルカッツよ。話は聞いておろうが、彼の地の兵は殆どが、叛徒からの帰還兵じゃ。
そちを司令官とするは、その事を気にせず分け隔て無く慈しんで欲しいからじゃ。
彼の者達は帰還後に再志願した、心根の良き者達じゃ。
しかし、今の世では、嘲りや危険視される者じゃ。
しかし、彼の者達の忠誠心は本物じゃ。
だからこそ、そちに司令官を任せたいのじゃ」
真剣な表情で話す皇帝陛下、その側で頷く皇女殿下。
メルカッツは自分に課せられた事の重大さと、
自分を選んでくれた皇帝陛下に益々の感謝を感じていた。
「彼の者達は、長い間叛徒に囚われたため、すっかりからだが鈍ってしまっておる。
其れを鍛え直してやってくれ、今彼の者達は自ら率先して訓練をしておる。
立派な精鋭として育て直してくれ。」
「御意」
メルカッツ提督にテレーゼが近づき話しかける。
「メルカッツ提督。今回はローエングラムの為にありがとうございます」
メルカッツは驚いていた、皇女殿下から礼を言われたのである。
「殿下勿体のうございます」
慌てて其れしか言えない。
「お父様、薔薇をいただけますか?」
「うむ良いぞ」
そう言うと皇帝陛下は薔薇を数本切りテレーゼに渡した。
「提督。この薔薇を奥方とご令嬢に」
そう言うと皇女殿下がメルカッツに薔薇を下賜した。
メルカッツは益々感動したのである。
メルカッツがバラ園を退出し、自宅へ帰宅すると妻と娘が迎えてくれた。
そして、皇帝陛下と皇女殿下から薔薇を下賜された事を話し、
大いに驚かれたのであった、妻と娘は挿し木にして育てようと相談を始めていた。
メルカッツは心地よい気分に包まれていた。
■オーディン ノイエ・サンスーシ 小部屋 テレーゼ・フォン・ゴールデンバウム
お昼過ぎにメルカッツ提督に会い、ローエングラムの事を父様と共に頼みました。
提督は感激していたみたいです。
奥さんと娘さんに薔薇をあげましたよ。
何れ家族は保護する予定ですから、印象を良くしておかないとですからね。
今日はカール・マチアスについて僅か3週間ほどで決定的な話が入ったそうでその報告です。
流石はケスラーですね、早いです。
真剣な表情のケスラーが話し出します。
「先だって、殿下より調査をご依頼されました、
フォルゲン伯爵令息のカール・マチアスですが。
確かに軍嘱託俸給以上の浪費を続けておりました」
「しかし其れだけでは、実家からの資金かもしれんな」
爺様合いの手が旨いですね、流石は名コンビ。
「はっ資金の流れも調べたところ、
フォルゲン伯爵からの、資金援助は殆ど無いようです。
元々カール・マチアスは貴族専用大学を7年も掛けて卒業したうえ、
兄のフォルゲン伯爵のコネで軍に中佐待遇嘱託として採用された様な男です」
困った人間だとみんなが思っているようです。
此処はちゃんと言ってあげましょう。
「つまり、貴族ならアホでも入れる大学に入ったのに、3年も留年してやっと卒業し。
就職先が無いから兄としては、世間上みっともないから、コネで軍に入れたと言う、
お馬鹿さんと言うわけですね」
「要約すれば、その様な者じゃの」
「資金流れが不明な為、テレーゼ様の違和感を確かめるべく此処3週間監視していたところ。
彼がサイオキシン麻薬の売人と接触していることが判明しました」
父様も驚いてますね、私は知ってますが、驚いたふりをしますよ。
「えー其れは大変じゃないの、マチアスは麻薬中毒患者なの?」
「いえ、彼のカルテ等を調査しましたが、麻薬中毒を示す症状は見かけられませんでした」
「となると、何故売人に接触したのかの」
父様は惚けか本当に判らないのかどっちだ?
まあ私が結論をぶつけますがね。
「ケスラー、もしかしてマチアスは売人の元締めじゃないの?」
ケスラーも流石という顔しますね。
「テレーゼ様、その通りでございます。
マチアスはサイオキシン麻薬を売人に卸し、
その売り上げを生活資金や結婚資金に活用しようとしている模様です」
「直ちに逮捕するべきじゃな」
「陛下準備なさいますか?」
「そうじゃな」
此処でマチアスだけ捕まえても、ハルテンブルク伯爵やフォルゲン伯爵を利用できないし。
軍内部で密造している。サイオキシン麻薬を検挙できませんよ。
ましてや地球教やフェザーンとの関係を立証は不可能だけど、
奴らの動きや資金源を絶つことも出来ないし。
軍内部や門閥貴族に巣くう連中をあぶり出したり、
密売に関与している連中を大量検挙すれば、
其れだけ関係者の勢力を削れるじゃないですか。
「お父様。私はマチアスを今検挙するのには反対です!」
みんな私の大きな声に驚いてます。
「サイオキシン麻薬密売は大逆罪に次ぐ大犯罪です、
ましてや其れを野放しにすれば依存患者が増えるばかりです」
「ケスラー、其れは解りますが、
マチアスが何処からサイオキシン麻薬を手に入れているかが最大の問題です。
拷問すれば、吐くかも知れませんが、
その前に逃げられる可能性が大きいですし、
口封じに消される可能性の方が大きいでしょう」
「確かにその可能性はあります、
しかし中毒患者を増やすことは問題なのでは」
「そこでです。マチアスは監視し続けます。
そして中毒患者を少しずつ、此方の工作員とすり替えていきます。
そうすれば、麻薬患者は増えませんし。麻薬の拡散は防げます。
また一定数の売人もすり替えます」
「なるほどの、その手があったかの」
「只最大の問題はエリザベートとの婚姻です。
ハルテンブルク伯爵は厳正な警察官僚が偶然貴族だっただけと言うほどの方です。
マチアスの事を知ったら、逮捕するかもしれません。
またハルテンブルク伯爵、フォルゲン伯爵両家の事を考えたら、
最前線にでも送り戦死に見せかけて、消しにかかるかも知れません。
そうなると全部駄目になります。
そこで、マチアスを守りながら、証拠固めを行いある時点で、
ハルテンブルク伯爵とフォルゲン伯爵を呼び出し、
此方の指示に従うように首根っこを押さえてしまいましょう」
毎度ながら私を見る皆さんの目が驚愕の目ですね。
黒狐の様な酷い謀略じゃないですから安心して下さいと言いたいですね。
「テレーゼ様の仰る風になれば、内務省に素晴らしい杭を打ち込めますね」
「確かにそうじゃの」
「そして検挙で一網打尽ですよ。
マチアスは囮捜査員として発表してしまえば、
ハルテンブルク伯爵、フォルゲン伯爵両家に傷は付きませんから、
両家とも表向きは文句は出ないでしょう」
「どうでしょうか、お父様」
「ケスラー、どうじゃな?」
「はっテレーゼ様のお考えを旨く使えば確かに、
かなりの成果を上げれると思います」
「ではテレーゼの考えで行うようにいたそう」
「御意」
「ケスラー、あと士官学校で、
私が視察にいけないのはシュターデン教官が、
反対している為だと言う話ですよね」
「はい、校長とシュターデン教官が反対してます」
「それをシュターデンが諸悪の根源だと、
私の降嫁を望んでいるフレーゲル男爵に、聞こえるように噂を流して下さい。
男爵は私を士官学校でエスコートしたいらしいのですが、
其れが出来ないので、苛ついているはずです」
「御意」
旨く行きましたね。此で地球教やフェザーンに怨まれるのは、マチアスになる。
貴族や軍に怨まれるのは、ハルテンブルク伯爵とフォルゲン伯爵だし、
其れを此方が守れば、両家を支配下に置いて協力体制をもてますしね。
さらに検挙を482年7月以降にして。
幼年学校卒業後にラインハルト少尉とキルヒアイス准尉をカイザーリング艦隊に配属し、
此方の工作員を使って、サイオキシン麻薬密売をキルヒアイスに検挙させましょう。
目立つのはキルヒアイスにして、ラインハルトをそのオマケにしてしまいましょう。
果たして自分より階級が上がるキルヒアイスにラインハルトが我慢できるかですね。
士官学校の件でも、シュターデンとフレーゲルが仲が悪くなれば、面白い工作ができますからね。
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誤字直しました。
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