とある3年4組の卑怯者
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90 猜疑心
前書き
アマのスケート大会に出場することになった藤木。大会に向けての練習を始めている所、彼同様にスケートが得意で同じ大会に出場する予定である少年・和島俊に出会う。彼のセンスに圧倒された藤木は大会で栄冠を獲れるのか不安になってしまった!!
藤木は今日、和島俊という強敵が現れたことを堀に相談しようと、堀の家へ電話を掛けた。
「もしもし、堀こずえさんの友達の藤木と言いますが、堀さんお願いします」
堀の母親が応答し、堀に電話を替わった。
『もしもし、藤木君。どうしたの?』
堀の声は優しげな声だった。藤木はその声で彼女に相談したい気持ちを起こした。
「あの、実は・・・、大会でやっていけるか心配で・・・」
『え?どうして?』
「今日、僕みたいにスケートが凄く得意な子に会ってさ。それも、僕よりずっと上手そうで、僕と同じ大会に出るんだ。それにカッコいいし。僕、その子に負けそうな気がして不安なんだよ・・・」
『そう・・・』
堀の反応で藤木はもしや彼女に見切られたのかと一瞬不安になった。
『でも藤木君、いくら手強いからって無理だなんて思っちゃだめよ。こいつに勝ちたい、って思ってやればきっと勝てるわよ!だから自信失くさないで!』
「堀さん・・・、うん・・・」
『そうだ、また私に吉川さんとスケート場で会おう!明日は土曜で学校も午前で終わるし、いつもより沢山練習できるわ』
「うん、そうだね!僕、頑張るよ!」
藤木はありがとうと言って電話を切った。
学校でみどりは堀に声を掛けられた。
「吉川さん」
「な、何でしょうか?」
「昨日、藤木君から電話があって、藤木君自分よりスケートが上手い子に会って落ち込んでるって。今日、一緒に藤木君に会いにスケート場行かない?」
「え!?は、はい、分かりました・・・」
(藤木さん、堀さんを頼りにしている・・・!?やっぱり藤木さんは私よりも堀さんの方が・・・)
みどりはさらなる不安に駆られた。
藤木は学校が終わると直ぐに家に帰った。笹山は藤木が相変わらず気になった。
「笹山さん、藤木なんか気にする事ないわよっ!」
「え?どうして分かったの?」
城ヶ崎に悟られて笹山は驚いた。
「だって藤木の方ばかり見てるんだもん。あんな不幸の手紙送るような卑怯な奴心配する価値もないわよっ!」
「う、うん・・・」
(やっぱりスケートしに行ってるのかな・・・?)
笹山は藤木について調べようと思った。
藤木は昼食を家で食べた後、母親に断ってスケート場に向かった。藤木は滑る前にトイレに行こうと思い、トイレに行った。その後、少ししてみどりと堀が来た。
「藤木君」
「やあ、堀さん、みどりちゃん・・・」
「昨日手強そうな子が現れたって?」
「うん、僕よりもずっとステップも、ジャンプもスピンも軽々とこなせてしまうんだ・・・。今ここにはいないけど・・・」
「そうだったの、でも藤木君、相手が凄くても圧倒されちゃだめよ。あの人も藤木君の技術を認めているんだから、自分の凄さを見せつけられるわよ」
みどりは話に入っていけず、何を言えばいいのかわからなかった。
(やっぱり、藤木さんも堀さんばかり見てる、やっぱり私なんかよりも堀さんの方がお似合いかもしれない・・・)
みどりは自分が蚊帳の外だと感じた。
「うん、そうだね、あ、そうそう。僕も後から知ったけど、あの人元スケート選手だったんだ・・・」
「え!?」
「うん、名前は片山次男って言うんだ」
「そうだったの、オリンピックにも出場した事ある人だったのね。それならもっと頑張ろうよ!ね?」
「うん、そうだね、僕、絶対負けないよ!」
「そうだ、先ず私と一緒に滑っていいかしら?」
「うん!」
藤木と堀はお互い手を繋ぎあい、滑り出した。堀は藤木を応援すると共に藤木に惹かれていた。
(藤木君、やっぱりスケートしている時はいきいきしてる・・・、格好いい・・・)
藤木と堀のお互いの目があった。二人とも笑顔で照れた。その頃、みどりは藤木と堀が楽しそうに滑る姿を見て大ショックだった。藤木は堀に対して今まで見たこともない笑顔を見せている。やっぱり藤木は自分よりも堀の方がいいんだ、藤木に嫌われた、とみどりは思った。
(やっぱり、藤木さんは堀さんの方がお似合いだわ・・・)
みどりは泣き出した。堀と出会う前の学校生活のような孤独感と、堀は自分から藤木を奪うのではないかという嫉妬と猜疑心でいっぱいだった。
「うわ、うわああ~ん!!」
みどりはスケートリンクから出ていった。
藤木と堀が滑り終わる。
「吉川さん・・・、ん?」
堀がみどりも滑ろうと催促するために呼んだが、みどりはどこにもいなかった。
「みどりちゃん、どこに行ったんだろう?」
「トイレかしら?」
藤木と堀はみどりはどこへ消えたのか気になった。
笹山は藤木の行動が気になっていた。藤木はスケート場に行っているのではないかと思い、午後はスケート場へ行って確かめる事にした。母親には城ヶ崎と遊ぶと言って家を出た。
(なんで藤木君の事がこんなに気になるのかしら?)
笹山は己を疑っていた。確かに藤木の空回りで彼に迷惑した事もあった。でもそれでも藤木を見切ったりしなかった。でも今は不幸の手紙事件彼を完全に嫌ったにも拘わらず藤木を心配している。なぜこんな事をしたくなるのか笹山自身にも解らなかった。
みどりは貸し出したスケート靴を受付に返し、スケート場を出ていった。行き先は決めておらず、別れ道は適当に決めた。泣きながら。
(友達に好きな人を取られるなんて、私の恋は終わったのね・・・)
みどりは失恋したと思い、泣き止む事もできなかった。めちゃくちゃに走っていると、誰かとぶつかった。
「キャア!!」
みどりもぶつかった相手も反動で尻餅をついた。
「ご、ごめんなさい・・・!!あ・・・」
みどりはぶつかった相手に謝ったが、その相手の顔を見て驚いた。その相手は茶髪で肌が白い、西洋人のような少女だった。
(が、外人さん・・・!?)
後書き
次回:「差別化」
みどりが出会った少女はリリィだった。みどりはリリィに恋の悩みを相談しようとする。一方、藤木の行動が気になってスケート場に向かった笹山は・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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