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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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真・四十八話 才女の覚醒、そして……

 
前書き
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

多分今年中にこの大逆転劇編が終わればいいかなとか思ってるレゾナです。 

 
話は終業式後まで遡る。

なのはは終業式が終わってから家へと走っていた。

理由は一つ。今度こそ兄からあの夢の事について聞く為だ。

と言ってもまた同じ事になるかもしれないと思っている為ダメ元で、という側面が強い。

まだあの夢に対しての自分なりの答えという物が分からないからだ。

それでも、知りたいという気持ちは変わらなかった。むしろもっと大きくなっていっているのだ。

だからこそ、今日、なのはは道場へと足を踏み入れた。

「お兄ちゃん」

道場に入ると、そこには既に足の上に剣を置いて座禅を組んでいる恭也の姿があった。

「なのは、か」

恭也は座禅を組んだまま、閉じていた眼を開きなのはの姿を見据える。

「何をしに来た?」

「話を聞きに来たの。私が前話した夢の話」

「それについて聞きたいなら自分なりの答えを持ってこいと言った筈だ。その様子だと、まだ見つけられていないようだが」

「それは……」

なのはは口ごもる。確かに自分なりの答えなどまだ見つけられていない。それでも、となのはは言葉を放つ。

「そんなにまでして、なぜ知りたいと思う?夢の内容が気になるからか、それとも……その夢で自身を庇った相手が高宮君だと確信を得たいからか」

「違うの!私は、ただ……あの夢の中に出てきた男の子が、心配なだけなの」

「心配?」

「そうなの」

そこからなのはの口からはすらすらと言葉が出てきた。

「私、夢の中の男の子に庇われて、その背中を見つめて……ああ、この子は強いけど弱いんだなって思ったの。それで強く思ったことがあるの。この背中を守りたいって……そしてそこからはすぐに思いついた。殆ど可能性はないかもしれないけど、でも……それでもって思ってる自分もいるの」

そこまで言ってなのはは一度目を閉じ、数秒ほどしてから思いっきり開く。

「お兄ちゃん、私…………私は「構えろ、なのは」えっ、っと……」

なのはは何かを言おうとすると、恭也はそれを遮るようになのはに小太刀の大きさの木刀を二本投げ渡す。

恭也自身も立ち上がり、足に置いていた剣を壁に置くと、代わりに小太刀の大きさである木刀を二本持つ。

「か、構えろって……だって私、握ったこともない」

「構えろと言っているっ」

そう言った瞬間、恭也は一瞬の内になのはを射程圏内に納める。

「ふっ!」

「きゃっ!?」

なのはは()()()二本の木刀を交差させて、それを受ける。

「っ、やはりか……」

「……え?」

なのはは今、自身の体が見せた動きが信じられなかった。

それも仕方がない事かもしれない。なぜなら彼女は先ほどまで木刀を握った記憶すらない筈なのだ。

そして素人ならばするであろう初歩的なミスをしていない。

「な、何で私、二本で防御を……?」

そう、木刀を二本持った初心者がしてしまう初歩的なミス。それは相手の攻撃を片方の手に持つ木刀で受ける事。

通常、人間は咄嗟の条件反射では利き手を使う事が多い。防衛の為ならば猶更だ。

しかし、なのはは今、両手の木刀をしかも交差させて止めた。

交差させる事で両手にかかる負担を半減させる事が出来る。それをなのは自身は知らない筈なのだ。

「やっぱり、体が覚えているのか……」

なのはが戸惑う中、恭也はある意味で疑問が確信に変わっていった。

恭也は最近、なのはの動きにひどく違和感を覚えていたのだ。いや、それは昔からだが……より正確に言うならば、()()()()()()()と言った方が正しいが。

そう、先ほどのなのはの考えていた事、ありえないかもしれない可能性は当たっていたのだ。

「なのは。お前は一年ほど、その木刀を握りこの道場で鍛錬を積んでいた」

「え……?」

そこから恭也は語り出す。なのはは覚えていない、あの衝撃的な一年間の出来事を。









「まず、会って一言目が「僕と手合わせをして下さい」だったな。いきなりどういう事だと、怒った。なぜならなのはと同年代の少年が言ってきたからだ。それから相手にはしなかったが、そいつが言った一言が俺の神経を逆撫でした」

「『なのはと同年代である僕と戦えませんか?そんなんで家族を守れるんですか?』ってな。当時、父さんが大怪我を負って、家族を俺が守らないといけない、といった強迫観念に囚われていたから、そんな簡単な挑発に乗った」

「もちろん、俺はその子を叩きのめした。だが、その子の眼。それだけは死なずに何度も立ち上がってきた。問われたよ『あんたはなのはの家族だろ?』って。だから、俺は当然だと答えた。それを踏まえた上で間違っていると指摘され、俺は思わず頭頂部に木刀を振り下ろしていた」

「その子は頭から血を流しながらも、こう言ってのけたよ。『あなたが望むのは家族の平穏でしょ……?だったら…………だったら!   の気持ちを少しは考えてくださいよ!なのははただ、笑っていてほしいだけなんですよ!貴方達に!その気持ちを考えてやってくださいよ……!』……俺はどこかで間違えていたんだろうな……守る筈が逆に無意識の内になのはの存在が俺の邪魔となっていると思っていたのだろう。だから、俺はお前を避け続けた。それを指摘されたよ」

「俺はそれから、反省してな……積極的に関わろうとしたが、なぜかお前は自分からそれまでやる気の欠片もなかった剣術を習いたいと言い出した。理由を聞くと思わず軽く吹いちゃったよ。「あの子を守りたいの!!」って言ったんだ。守られる側だろって思わず言ってしまったよ」

「でも、お前は泣きながらもでも決して諦めずに剣を振り続けた。そしてそんなお前と一緒にあの子は剣を振るった。まあ、あの子の場合は既に型が出来ていたから基礎的な事しかしなかったがな」




そこまで聞いてなのはは理解が出来なかった。自身の父親が大怪我した事は知っている。それによって家族がバラバラになりそうだったのも知っている。だが、そこでそんな出来事があった記憶など自分にはないのだ。

「そんな事があったんだ……記憶にないか?」

「ぜ、全然ないの……」

「…………さっき、なのはは木刀を交差させて俺の剣を受け止めたよな?」

「う、うん……」

「あれは教えて間もない頃、俺が少年と共にお前に教えた防御の基本の型だ。女性の細い腕でも強い攻撃を受け止める事が出来る」

「………………………あ」

その時、なのはの中で何かがカチリ、と嵌まる音が聞こえた。

記憶が流れ込んでくる。一緒に素振りをする光景、木刀を打ち合っている光景、汗をタオルで拭きながら、楽しそうな笑顔を浮かべている光景。

そしてそのいづれの光景にも必ずいた男の子。それは聖ではなかった。放たれる独特な雰囲気、それに該当する人物はなのはには一人しか思い当たらなかった。

「全、君……」

「思い出したか……」

「うん……うん……思い、出した………!」

なのはは顔を手で隠して嗚咽を漏らす。それが思い出した事によるうれし涙なのか、それともこれまで思い出せずに無意識の内に苦しめてきた全の事を思った涙なのかはわからないが、それでも悲しみの涙ではない事だけは確かだ。

「…………今、全は途方もない危機に直面していると思う。ただの勘でしかないがな。救ってやってくれ。あのバカな優しい奴を」

「うんっ!!」

そしてなのはは走り出した。自分と家族を守ってくれた優しい彼の下に。






















全は何もない真っ白な空間で横たわっていた。その瞳は固く閉じられている。

まるで死んでいるかのように横たわったままだった。

そんな彼に近づく影。その影はまるで愛しい我が子を見つめるように全を見ていた。 
 

 
後書き
そんな一発目なのに全く進行していませんね、はい。

一応次回で進ませます、後次回には全君の理解者達がこの世界にやってきますよ! 
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