儚き想い、されど永遠の想い
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113部分:第十話 映画館の中でその三
第十話 映画館の中でその三
「それでもです」
「二人が結ばれれば」
「その家同士の対立もなくなりますし」
「いいのですね」
「いいでしょう。喧嘩をしても何にもなりません」
老婆はこのことも話した。
「むしろ。親しくなる方がずっといいです」
「それでは」
「若しお嬢様が相応しい方を見つけられて」
義正のことを知らないまま話していく。
「そしてその方と結ばれたいのなら」
「何があってもですね」
「くじけないで下さい」
真理を見ての。見据えての言葉だった。
「それを御願いします」
「ではそれでは」
「はい、それで」
そんな話をだ。彼女もしたのだ。そしてであった。
真理はまた義正と会った。そして行く場所はだ。
映画館だった。暗い観客席である。前に映る映画の光だけである。そこに映っているのは口髭の男だ。彼が何かというとである。
司会の男がだ。こう観客達に話すのだった。
「さて、このチャップリンは」
「チャップリン?」
「喜劇役者です」
義正が横にいる真理に話した。
「亜米利加のです」
「あの国のですか」
「そこの聖林で活躍している役者でして」
「それが今映っている」
「はい、チャップリンです」
口髭の男だというのだ。
「その彼です」
「そうなのですか」
「そうです。私は一度彼の映画を観たことがあります」
「今は二度目ですね」
「そうです。二度目です」
こうだ。真理に話すのである。
「最初のものもかなりよかったですが」
「今回はどうでしょうか」
「いいですね」
微笑んでだ。真理に話すのだった。真理は暗がりの中でだ。彼の微笑んだその横顔を見た。その表情の横顔は彫刻の様であった。
「とても」
「とてもですか」
「はい、ただの喜劇ではなく」
「それだけではなく」
「そこに人間の悲しさも含まれていますから」
「笑いの中の悲しみですか」
「チャップリンはそれを表しています」
それこそがだ。チャップリンの喜劇だというのだ。
「彼は演技の中にそれを含ませてそれで演じています」
「そうした深いものなのですね」
「そう思います」
「そうですか」
「そう思われますか?」
今度はだ。真理に問う義正だった。
「貴女は」
「よくはわかりませんが」
こう前置きしてからだ。真理は義正のその言葉に答えた。
「ですが。そうですね」
「感じられますか?」
「はい、感じます」
感性での話になっていた。芸術を感じ取るだ。
「そう思えますね」
「そうですか。それは何よりです」
「不思議な演技ですね」
白黒の無声の映像の中でコミカルに動くチャップリンを見てだ。そうして真理は話すのだった。
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