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とある3年4組の卑怯者

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84 手紙

 
前書き
 今回からはアニメ「ちびまる子ちゃん」1期118話「まる子 不幸の手紙をもらう」を基にした話になります。しばらく殺伐とした内容になりますが、アニメでの藤木が可哀想すぎたので是非いい感じに終わらせたいと思います。 

 
 気温が寒くなり、冷え込むようになった。外出にはコートが必需品となっていた。また、風邪に気を付けるようにうがい・手洗い・体を冷やさないように心掛ける事を学校でも催促されていた。
 しかし、冬にしかできない事もある。スケートやスキーなどのスポーツはこの時期にしかできないのでそれを理由に冬を楽しみにしていた者もいた。

 みどりも冬を楽しみにしていた者の一人だった。なぜならスケート場に行って、自分が好意を寄せている藤木に会えるかもしれないのだ。藤木がスケートリンクを滑走する様子を見る事が非常に待ち遠しかった。
(藤木さんのスケート姿、早く見たいわ。いつ行けば見れるのかしら・・・)
 
 その一方、藤木も自分の唯一の取り柄であるスケートができるので冬は自分の季節と思うくらいであった。
(いつも卑怯者と言われる俺だってスケートをする姿を見たら皆雲の上の存在だと思うだろうな・・・!!ああ、笹山さんやリリィと一緒にスケートしに行きたいなあ・・・!!)
 藤木がスケートを得意にしている事は笹山もリリィも知っていた。リリィには以前高山へ共に旅行に行った時に自分のスケート姿に魅了されていたため、また見せてやりたいと思った。

 ある日、藤木は学校から帰り、郵便受けを開けると、自分宛に一通の手紙が入っていた。しかし、差出人の名前がない。なんで書くのを忘れたのか藤木は気になった。
(一体何だろう・・・?)
 
 みどりは下校中、藤木への想いに浸っていた。
(藤木さん・・・、また私にスケートしている藤木さんを見せてください・・・)
「あの、吉川さん、さっきから歩くペース遅くなってるけどどうしたの?」
 不意に堀に声をかけられた。気がつくと、堀はみどりの五、六歩先を歩いていた。
「あ、すみません・・・」
「何か考え事?」
「は、はい・・・」
(そうだ、堀さんを誘おう・・・。そしたら藤木さんの事を知ってくれるかもしれないし・・・)
 みどりはそう思いつき、堀に話しかけた。
「あの、堀さん・・・」
「え?」
「今度、スケートしに行きませんか?」
「そうね、スケートか、行きたいわね。いつにする?」
「そうですね・・・、明日はどうでしょう?」
「明日?でも明後日国語と算数のテストが一緒にやるから勉強した方がいいわよ。明後日のテストが終わったらでどうかしら?」
「あ、そうでしたね・・・、そうします!」
 みどりは堀とスケートしに行く事になって嬉しかった。
(もし藤木さんにも会えたら、明後日は私にとって最高の日になるかも・・・!!)

 藤木は手紙の封を切り、中を読んだ。すると、こう書いてあった。

 これは不幸の手紙です。3日以内にこれとおなじないようの手紙を4人の人に出さないと、あなたに不幸がおとずれます。ではさようなら。

(ふ、不幸の手紙・・・!?)
 藤木は不幸の手紙が来て恐ろしくなった。
(どうしよう、これを出さなかったら、僕は不幸になる・・・!!)
 藤木の頭の中は恐怖に包まれた。ただでさえ運が悪いというのに、これ以上不幸になったらもう生きていけなくなる。そうなると、どうしても出さなければならない。
(こうなったら、書くしかない。しかし、誰に出そう・・・?)
 藤木は先ず誰に出すか考えた。友達である永沢や山根にはどうしても出せない。笹山やリリィに出す事も避けた。自分の好きな女子に不幸になって欲しくなかったためである。
(ええい、もう適当に決めてやる!!)
 藤木は無作為に出す人を決めた。一人目はさくらももこ。二人目は浜崎憲孝。三人目は土橋とし子。そして四人目は・・・。
(そうだ、丸尾君なら学級委員だから何とかしてくれるかもしれない!!)
 藤木は四人目を丸尾末男に出すことにした。こうして手紙の文章を写し、封筒に入れ、切手を貼ってポストに投函した。
(ごめんよ、皆・・・、俺、どうしても不幸になりたくないんだ・・・!!)

 翌日、藤木は自分が出した不幸の手紙の事が離れなかった。
(本当に僕はもう大丈夫かな・・・。いや、出したんだから大丈夫な筈だ・・・!!)
 藤木はそう思いながら、登校した。その時、藤木は後ろから声を掛けられた。
「藤木君、おはよう」
「さ、笹山さん、おはよう・・・」
「どうしたの?何か気難しい顔してるけど・・・」
「いや・・・、特にないよ!」
 藤木は不幸の手紙を笹山に言うべきか迷った。しかし、そんな事を言ってしまえば彼女は絶対自分の事を怒り、嫌うだろう。藤木はそれが恐ろしくてできなかった。

 学校では藤木は何もなかったかのように過ごした。ただ、それでも手紙の事が頭の片隅に染み着いていた。
「藤木君、君どうしたんだい?今日は落ち着きがないよ」
 永沢が急に聞いてきた。
「いや、何でもないさ!」
 藤木は誤魔化した。

 放課後、藤木はとっとと家に帰った。もう各自の所に手紙が届いているだろう。
(皆、ごめんよ・・・。僕、不幸になるのが怖いんだ・・・。だから手紙を出したんだ。悪く思わないでくれよ・・・)

 みどりはテストの勉強をしながら明日のスケートの事を考えていた。
(藤木さん・・・。あのスケートするあの凛々しい姿・・・。また私に見せてくれるかしら?)

 その頃、丸尾の家では丸尾が藤木から届いた手紙の封筒を開けて、その内容を読んでいた。
「な、なんと!!このワタクシに不幸の手紙などを・・・。どうすればいいのでしょうか!?か、かあさま~!!」
「どうしたんザマすか、末男さん!?」
「わ、ワタクシに不幸の手紙が来たのです!そこに三日以内に四人にお出ししなければ不幸が訪れると書いてあるのです!ああ、私はこの手紙を四人に出さなければ不幸になるのでしょうか!?」
 丸尾は泣きながら母親に相談した。
「何を、安心してください、不幸の手紙など出鱈目ザマす。不幸の手紙を出したら、むしろ相手にとってただのご迷惑ザマす。絶対に不幸など訪れないのザマす。ですから、そんな手紙、破って捨てるのがいいザマす」
「かあさま、本当ですか?」
「ええ、ご安心くださいザマす」
「は、はい・・・。ありがとうございます・・・」
 しかし、丸尾はその後も不幸の手紙のせいで勉強の時は集中できず、夜も中々眠る事ができなかった。

 その頃、土橋家ではとし子が母親に不幸の手紙を相談していた。
「お母さん、どうしよう・・・。私、出さないと不幸になるのかな?」
 とし子が母親に藤木から来た手紙を見せながら聞いた。
「大丈夫よ、安心して。そんな事で不幸なんか起きないからないから大丈夫よ」
 とし子の母は娘の頭を撫でながら笑顔で言った。
「うん・・・」

 浜崎家でははまじが不安になって母親に相談していた。
「母ちゃん、俺不幸の手紙が来ちゃったよ!!どーすればいーんだ!?」
「何言ってんだい、馬鹿馬鹿しい!!」
 はまじの母は息子から手紙を取り上げ、丸めてゴミ箱に捨ててしまった。
「不幸なんか起きないよ!安心しな!」
「あ、あー・・・」
 はまじはその後も不幸の手紙が頭から離れなかった。

 さくら家ではまる子が泣きながら家族に相談していた。
 しかし、本気で信じていたのはまる子とその祖父だけで、他の家族は馬鹿馬鹿しいと思い、書いてある事は信じなかった。まる子の父は不幸の手紙を読むと真っ二つに破いた。

 翌日、みどりはウキウキしながら登校していた。
(あ~、今日は堀さんとスケートしに行く日、もし藤木さんにも会えたら今日の私は幸せだわ!)
 みどりはスケート場に行く時が待ちきれなかった。そして、藤木のスケート姿を想像して、まさに藤木こそ自分にとって最高の王子様だと考えていた。

 藤木は不幸の手紙の事を未だに気にしながら登校していた。そしてその藤木にこれまでにない不幸が待ち構えているのだった。 
 

 
後書き
次回:「緊急学級会」
 不幸の手紙を出した藤木は教室に入るといきなり不幸の手紙を出した相手にいきなり睨まれる。そして怒りに燃える丸尾は緊急学級会を開く。藤木は皆から咎められてしまい・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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