とある3年4組の卑怯者
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82 氷滑(スケート)
前書き
新穂高ロープウェイの駅にて花輪達とばったり会った藤木達。そこにいた花輪の従姉妹のルリ子の誘いで藤木は自分の唯一の取り柄であるスケートをしに行く事になった・・・!!
ちびまる子ちゃん1期141話「花輪クンに恋人が!」の巻で登場した花輪クンの従姉妹・ルリ子を登場させてみました。そして、藤木がスケートをする様子を描きたいと思います。
藤木達はタクシーを利用して高山祭を再現しているという博物館に行っていた。
「うわあ、こんなすごい屋台がお祭りの時に使われているのね」
リリィが祭りで使われる屋台を見て感心していた。
「こんな屋台を使ったお祭りなんて清水の灯籠祭りよりもずっと規模が大きいんだろうね」
藤木も驚いた。
「そりゃそうだ。高山祭は日本三大美祭の一つなんだぞ。灯籠祭りよりもずっと大きい祭りに決まってる」
藤木の父が説明した。
「そうか・・・」
藤木は父の説明で高山祭の大きさを感じとる事ができた。
「私も是非その本物の祭りを見たいわね」
「まあ、うちはホイホイ行ける程の余裕はないけどな」
藤木の両親はまたもや暗い会話をしていた。
(父さん、母さん、せっかくの旅行なのに暗くなるなよ・・・)
藤木とリリィは花輪に教えられたスケート場に向かった。丁度花輪達とも合流した。
「Hey、靴代は僕が負担するから安心してくれたまえ」
藤木達はスケート場の中に入った。藤木はレンタルしているスケート靴を履いた。
(やっぱり自分の靴が一番慣れてんだよな・・・)
藤木は自前のスケート靴と比べて履き慣れない感じがしていた。
(やっぱり自分の靴なら上手く滑る気がするけど仕方ない、ジャンプやスピンとかリリィ達に見せられるかな?)
花輪、マーク、ルリ子、リリィ、そして藤木の五人はスケートリンクの中に入った。リリィは早速転んでしまった。
「Lily,are you ok?(リリィ、大丈夫かい?)」
「Yes,thank you(うん、ありがとう)」
リリィはマークに体を起こしてもらった。それを見て藤木はマークが少し羨ましく見えた。
「それじゃ、滑ろうか」
花輪がそう言って滑り出した。ルリ子も滑り出した。上手く滑れないとされるリリィはマークと手を繋いで滑ってもらった。リリィがマークとペアという状況を見て藤木は泣きそうになった。
(リリィはマークと一緒に滑ってる・・・。本当は僕と滑って欲しかったのに・・・!!せめてリリィにジャンプやスピンを見せたかったのに・・・!!)
藤木はその場で気を落とし、立ったまま、ショックで滑る事さえしなかった。
「花輪クンも氷滑上手いのね」
リリィが花輪に感心した。
「まあね、僕はカナダの別荘の近くの湖でよくやってたからね」
(花輪クン、スケートまでできるんだ・・・。スケートは僕の唯一の取り柄だというのに、これじゃあ、花輪クンの陰に隠れるだけじゃないか・・・!!もし、僕からスケートがなくなればただの卑怯者だよ・・・!!)
藤木は気を落とし、その場を動けなくなった。。その時、一周滑ったルリ子が藤木に話しかけてきた。
「アナタは、滑らないの?」
「・・・え?」
「スケート、好きなんでしょ?」
「う、うん・・・」
「一緒に、滑りましょう」
「う、うん、そうだね・・・」
藤木はルリ子から手を差し出され、共に滑り出した。
「ちょっとスピードを上げてもいいかい?」
「いいわ」
藤木は徐々にスピードを上げた。ルリ子は藤木が滑るスピードに驚愕した。どうやら自分が出せる速度よりもわずかながら速いのだ。ルリ子だけではない。スケート場にいる人々も皆藤木のその滑る速さに驚いていた。
「さすが藤木クン、sketeが得意なだけあるね」
「Wow,great!!」
花輪もマークも藤木に感動していた。
(凄い・・・、藤木君、いつもよりかっこいい・・・)
リリィもいつも卑怯と呼ばれる藤木がここでは別人のように輝いて見えた。彼女は藤木はスケートが得意とは聞いてはいたが、実際にやっている姿を見た事はなかったため、藤木のスケート姿に少し見とれていた。
「藤木クン、だっけ?アナタ、凄い、格好よかったわ」
藤木はルリ子に感心されて、少し照れた。
「ありがとう、でも僕ができるのはこれだけじゃないんだ。よく見ててくれよ」
藤木はルリ子の手を放すとステップを踏み出し、そして7回転のスピンを見せた。そして、ジャンプして3回転した。いつものスケートウェアと自前の靴ではないので動きが少しぎこちなく感じた藤木だが、己の唯一の取り柄をここで披露する事が出来てよかったと思うのだった。さらにスリーターンやトウループジャンプやサルコウジャンプまで、そして締めはスパイラルを披露した。
多くの人々が思わず拍手した。藤木はルリ子の元へと戻る。
「アナタ、凄いわ。本当の、スケーターみたい!」
ルリ子が超絶プレイを見せた藤木を褒め称えた。
「あ、ありがとう・・・」
藤木はルリ子がこんなにスケートをする自分に虜になっていてさらに照れた。
(ルリ子さんか・・・。凄く可愛いな・・・)
藤木はルリ子に心を奪われそうになった。しかし、我に返った。
(い、いかん、僕にはリリィに笹山さんという人がいるんだった・・・!!)
藤木は心変わりをしてはならぬと己を叱った。そこに、花輪ら三人が近づいてきた。
「Hey、藤木クン、凄いprayだったよ。僕らも脱帽さ」
「花輪クン・・・」
「藤木君、かっこよかったわ。私も見惚れちゃったわ」
「リリィ・・・」
藤木はリリィも自分の技を見て一目置いていたのだと感じた。
(リリィも見ていたんだ・・・)
藤木はリリィも見ていてくれた事でやはりここに来たのは無駄ではないとわかり、感動した。
その時、その藤木のスケートの技術にサングラスをかけた一人の男性が魅了されていた。
(なんて子だ・・・。あのセンスはまさに非凡・・・)
その男は藤木達の所に来た。
「君、いいプレイを見せてくれた。君はどこに住んでいるんだい?」
藤木は知らない人に声をかけられて驚いた。
「し、静岡県の清水です・・・」
藤木は少し怯えながら答えた。
「なるほど、清水は漁港があって暖かい所だからスケートなどそこまで盛んではない。君は本当に小学生とは思えないよ。旅行でここに来ているのかい?」
「はい、そうです」
「是非、君の名前を聞かせて欲しい。今まで私が見た子の中でも素晴らしいからね。その名を是非刻みたい」
「はあ、藤木茂っていいます」
「なるほど、藤木茂君か。またどこかで会いたいもんだね」
「ところで、おじさんは誰ですか?」
「おっと、失礼、おじさんはただのスケート好きなだけだよ。片山と言う者だ。ではさようなら」
片山と名乗った男はそう言って去った。
「何がしたかったんだろう・・・?」
そして旅館に帰る時間となった。藤木とリリィは花輪達と泊まる旅館は別だったが、親切にもヒデじいが運転するマイクロバスで送ってもらったのだった。なお、花輪達は次の日にはスキーをやる予定らしい。
「それじゃあ、また学校でね」
「ええ」
「じゃあね、皆」
「Good bye!」
「さようなら」
藤木とリリィはヒデじいのマイクロバスから降りた。
「藤木クンの氷滑凄かったわね。本当の選手みたい!」
「ははは、似たようなことをルリ子ちゃんにも言われたよ。でもあんなの僕にとっては基本中の基本だよ。もっと凄い技もできるよ」
「へえ、帰ったらまたいつか氷滑しよう!」
「うん、いいよ」
藤木は幸せな気分に浸っていた。
後書き
次回:「帰還」
飛騨高山の旅行を大いに満喫した藤木。藤木は永沢のための土産を購入して清水に帰る。そして永沢の家に行くのだが・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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