緋弾のアリア ~とある武偵の活動録~
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~oath of Hotogi~
「キンちゃんは……本当に私のこと、分かってくれてるね」
「まぁ、小さい頃から一緒にいたからな。そのくらいは分かるさ」
……あれ、何この雰囲気。邪魔しちゃ悪いかな?
と思った俺は、静かに立ち上がりリビングを抜けて自室へと戻ったのである。
―翌日―
現在俺とキンジは、白雪のボディーガードという仕事のために『アドシアード準備委員会』という(女だらけの)メンバーが集う部屋にいる。
今は会議中だ。
「―星伽さんには是非、閉会式のアル=カタには出ていただきたいわ」
「そうですね、星伽先輩は美人ですし。報道陣も好印象を持つかもしれません」
「ええ。枠も1名分空けてありますし」
いい後輩を持ってるなぁ、白雪。それも真面目な性格故なんだろうな。
「で、でも―私はあくまで裏方で貢献させてください 」
と、キンジがちらっ。白雪を横目で見た。
白雪もそれに気付いたのか―
「…じゃあ、今日の会議はここまでにしましょう。各自解散です」
『はーい!!!』
うわ…声がバカでけぇ。これだから女は……
「ねぇねぇ、この後台場行かない?」
「あー、行く行く!」
「台場で思い出したけど、エステーラの限定シュガーリーフパイ今日発売だよー!」
…武偵高女子はもっと荒々しいイメージがあったんだが、そこらへんは一般高校と変わらないんだな。こんなあり得ない高校でも。
「星伽先輩もどうですか?夏へ向けての私服、探しに行きません?」
「わ…私はこれから帰宅して、S研の課題とアドシアードのしおり作成を…………」
ちらっ。と俺が「行けばいいじゃないか」とアイコンタクトを送るが、白雪は小さくふるふる。首を横に振るだけ。
「流石ですね、星伽さんは」
「疲れを知らないんですねぇ、尊敬します」
同級生・後輩、皆に慕われてるな…まぁ、生徒会長だからというのもあると思うが。
―帰宅途中―
「…何で行かなかったんだ。行っても良かったろ」
と俺が言うと、
「私たち星伽の人間は、神社と学校以外は許可無く外出してはいけないの。… 星伽の巫女は護り巫女。生まれてから逝くまで身も心も星伽を離れるべからず」
まるで詩を諳じるかのように、小さい声で言った。
「でも神社から出てきたんだろ?なに良い子ぶってんだ。そんな習わし素直に守ることない。今からでもアイツらのとこ行ってこい」
キンジがちょっと反抗すると、
「でも―外はちょっと……怖いよ。買い食いとか1回はしてみたいなって思うけど、私は皆が知ってることを知らないから」
……小学校低学年の時の夏休みだっけか。家族と、星伽神社に遊びに行ったんだ。同じくそこに遊びに来ていたキンジ・金一さんと偶然会って、当時は小さかった巫女たち・白雪と一緒に遊んだ。
その時注意されたのが―「絶対に神社の外に出ちゃダメだ」ということだった。
そして―金一さんは、幼い星伽の巫女たちを哀れむように呼んでいた。曰く『かごのとり』、と。
今も、あの頃も変わらない。こんな生活で良いのだろうか?
「―でも、いいの」
俺の顔を見て、何かを感じたのか。そう言ってきた。
「いいの。2人がいるから。…今も昔も変わらず接してくれる。それだけで―十分です」
「白雪…………」
―その日の夜・家にて―
俺は今、昨夜見れなかった動物奇想天外2時間SPを見ている。…うわっ、なんだこのネコ!?垂直壁を駆け上がった!すげぇな。
...まぁ、んなことはどーでもいい。
俺の他、現在キンジはお風呂。アリアはコンビニでももまん調達。
え、 白雪はって?いなかったから境界で部屋を覗こうとしたら物凄い殺気を感じたからやめた。
―ガララッ。
あ、そろそろ出てくるかな。キンジ。
―ガチャっ!パタパタパタパタっ!!
今度は白雪か。騒がしいな…
目を閉じて、聞き耳をたてていると―
「キンちゃん!どうしたの!?」
「......はぁっ!?」
「え…だってキンちゃんが電話掛けてきてすぐバスルームに来いって! 」
「だいたいシャワー浴びながら電話が掛けられるか!なんでそんな変なことが起きる!?」
「で、でも…でん......でん―ごっ!ごめんなさいぃぃぃっ!! 」
何が起きてるんだ、我が家のバスルームで。
こんな混沌さが充満しているような家じゃないぞ、ここは。
「―おあいこっ!」
何がだ。…もう聞いてられん。特攻してくる。
「お前ら人の家のバスルームで何やってr ......!?」
と同時に、
「ただいまー..................!?」
アリアが帰ってきた。
手に持っていたももまん入りの袋を床に落とし、即座にガバメントを抜いた。
それに便乗して俺も、ベレッタとDEを抜く。
「こんの......バカキンジぃーっ!」
バギュュュュンッ!!!
「そうだぞキンジ。ボディーガードは依頼人と深い関係になってはいけない......あ、お前ら幼なじみか」
パパパン!ババババンっ!!
喋りつつ、ベレッタとDEを横薙ぎに振るう。もちろん弾が当たるギリギリで。
「ちょっ、待て!」
「男に二言は無いでしょ!」
「まだ一言もしてねぇよ!」
俺とアリアの発砲で、じわじわと廊下、ベランダに追い詰められていくキンジ。ねぇねぇ、今どんな気持ち?ねぇねぇねぇ?(ゲス顔)
「そこで頭冷やしてきなさい!(物理)浮き輪はあげない!」
ワイヤーでベランダ下に避難したキンジに向けて発砲し、さも当たり前かのように東京湾に落とした。
~キンジside~
「そこで頭冷やしてきなさい!浮き輪はあげない! 」
「うわっ!」
―ボディーガードは依頼人と深い関係になってはならない。いざという時に冷静な判断が出来なくなるからだ。
ただ、今回のははっきり言って教務科の過保護から始まった任務であり、ボディーガードごっこに過ぎない。
ピピッ。
体温計のアラームが鳴る。
「38.0℃か......」
そうボヤくと、
「キンちゃん、大丈夫?私も今日学校休んで......」
「俺のことはいいから行きな。アドシアードの準備とかで忙しいんだろ?」
「うん....」
心配しつつも、学校に行ってくれた。
「ボディーガードが体調崩してどうすんのよ。あたしたちは学校行くからね。彩斗、行くわよ」
「ああ、彩斗。ちょっと来い」
「うん?何だ」
俺は彩斗を呼び止める。
「悪いんだが、何時でもいいから特濃葛根湯を買ってきてくれるか? アメ横にある漢方薬の店にあるから」
「ああ。別に構わないぞ」
「悪いな」
その後―俺は自室で頭の痛みと闘いつつ、眠りに着いた。そして......午後1時辺りか。ぶわん、という音がしたのでそっちを見ると。
「ん......?」
虚空にスキマが出き、そこから手が伸び、ビニール袋をドアノブに掛けた。
「............誰だ?」
俺が思ったまま、そう言うと―その手がビクッと震えた。直後、聞こえてきたのは、
「あー...... ついに見られたか。元々隠す必要も無かったけどな」
彩斗の声だ。それと同時にスキマが大きく開き、彩斗が出てきた。
「特濃葛根湯を買ってきてくれたことは感謝する......が、何だその超能力は」
俺は風邪を引いていることも忘れ、ただ思ったことだけを口にする。
「時空間移動だが?ほら、これ飲め 」
と、彩斗が特濃葛根湯を手渡してくれる。
「チートか。......サンキュ」
俺は買ってきてもらった葛根湯を飲み、ベッドに横たわる。
「詳しい説明は帰ってきてからしてもらうからな」
「...ああ、分かったよ。白雪にも、アリアにもな」
そう言った彩斗は、スキマを潜り―学校に戻って行った。
~Prease to the next time!
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