レーヴァティン
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第三十五話 北の大地その九
「もう凄いからね」
「麻雀のプロはか」
「おいらはまだまだだから。二十歳でプロになった人なんかは」
淳二は半ば笑って半ば真剣で久志に話した。
「天才って言ってもいいから」
「二十歳でプロか」
「その歳で十段になったんだ」
「剣道だと有り得ないな」
首を傾げさせてだ、久志は淳二のその話に唸った。
「それこそな」
「精々三段?」
「それ位だな」
「じゃあその人がどんな人かわかったかな」
「そのつもりだよ、とにかくな」
「博打する?」
「いや、いい」
久志は淳二のその誘いは断った。
「とりあえずこっちの世界ではそんな場所今は見えないしな」
「近くの街までこの調子だと三日ですね」
「歩いてだとか」
「はい、それ位です」
「三日か」
「北北西に進みますと」
三日程歩いてとだ、順一が地図を見つつ久志に話す。
「コペンハーゲンに着きます」
「結構大きい街か?」
「この世界の街ではそうなりますね」
「そうなんだな」
「少なくともこの辺りで最も大きな街です」
それがコペンハーゲンという街だというのだ。
「その近くに行けば村もあるそうです」
「つまりあと三日は村もないか」
「そうです」
まさにというのだ。
「暫くは」
「本当に人口が少ないな、北は」
「他の場所だったと一日歩いたら村の一つ位あるからな」
正もこう言う。
「馬だけどな、この場合は」
「ああ、それが三日だからな」
「やっぱり人が少ないな」
「それだけ人口が少ないんだな」
北はとだ、久志はこのことをしみじみと思った。
「寒いとな」
「人間ってのは本当に快適な場所に住むな」
「生きものの習性ってやつだな」
「本当にな」
「じゃあ三日、夜は休んで昼は進んで」
源三は今も明るい、見れば今はチーズを食べている。
「そうして進んでいこうね」
「そうでござるな、では途中モンスターが出れば倒してでござる」
「三日歩いてね」
「コペンハーゲンへ行くでござる」
一行はその北北西に進んでいった。そして実際に三日程歩くと雪原の中に城壁に囲まれた街を見た。久志はその街を見てしみじみとした口調で言った。
「やっとだな」
「うん、三日間お昼はずっと歩いてね」
「着いたな」
「本当にようやくだね」
「何しろ雪を歩いてきたからな」
久志は足元も見て言った、その雪原を。
「余計に疲れたな」
「雪だとね」
「ああ、本当に歩きにくいな」
「ブーツでもね」
その雪や氷の上を歩く為のそれを履いて進んでいてもだ。
「それでもね」
「しんどかったぜ」
「こういうのは慣れだね」
「雪の上を歩くのもな」
「これが日本でも東北の人なら別だけれど」
「神戸にいるとな」
「ちなみにおいらも東北生まれじゃないから」
そのせいでというのだ。
「雪の上は歩き慣れてないよ」
「そうなんだな」
「だから結構疲れたよ」
淳二にしてもというのだ。
「この間ね」
「そうだな、じゃあまずはな」
「街に入ったらね」
「ゆっくり休むか」
「そうしようね、サウナがあれば」
淳二は笑いながらこの風呂の話をした。
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