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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  224 〝神秘部〟での戦い


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

色々──皆にはバレないように“逆転時計(タイム・ターナー)”をいくつか〝複製〟してギったりなんて一幕も道中であったが、大して特筆すべき事もなく〝予言〟が置いてある部屋にたどり着いた。

部屋には(おびただ)しい数の棚がところ狭しと列べてあって、その棚にもこれまたところ狭しと不透明なガラス玉──〝予言〟が列べてあり、俺達8人はその棚の合間を縫う様に目的の〝予言〟が置いてあると思われる棚へと向かう。

53…64…75…86と棚に割り振られている番号を横目で数えながら歩いていると、軈て97番──目的の〝予言〟が置いてあると聞いた棚へと来た。

(1…2…3の──14か?)

「……あった」

〝不確定だった気配〟を数えている内にアニーはいつの間にやら〝予言〟を発見していて、〝予言〟手に取ったその時、殿(しんがり)で背後からの奇襲に備えてもらっていたフレッドとジョージの声が上がる。

「アニーっ」「アニーっ」

声につられ、双子の方を見てみれば、そこにはルシウス・マルフォイとベラトリックス・レストレンジが佇んでいた。

……否、二人だけではなく、他の12人も姿を表していて、俺達8人に杖を向けている。

「よくやった、ポッター。〝それ〟をこちらに渡すのだ」

「……うわ、本当に来てるよ」

「ひゃはっ♪ まるで私達が来る事を判っていたような言い方だね」

落ち着きはらってアニーに〝予言〟を渡すよう通告するルシウスだったが、アニーは憮然とした態度で通告を言外に拒否する。

「虚勢だ。構ってやるな、ベラトリックス。……もう一度通告しておいてやる──さぁ、ポッター〝予言〟をこちらに渡すのだ。……さすればお友達達を五体満足で帰そうじゃないか」

「何ならホグワーツまで子守りをしてやろうか、ひゃはっ♪」

「ベラトリックス・レストレンジ…っ!」

ネビルの、ありありと怨嗟が込められた怨敵の名前を呟く声が聞こえた。今にもベラトリックスに飛びかかりそうなので、それとなくネビルの前に立っておく。ベラトリックス達にもネビルの呟きは聞こえていたらしい。

……だが、しかしベラトリックスはネビルを知らなかった様だ。

「あんた誰だい?」

「ロングボトム夫妻のご子息のネビル君だ」

答えたのはルシウス。

「〝ロングボトム〟…? 〝あの〟ロングボトム夫妻の息子かい──あっはははははははははははははははっ!! こりゃあ傑作だ! 見なよ、ルシウス! 小さなネビル君がご丁寧にご両親みたいに廃人に成りに来たよ!」


――“武器よ去れ(エクスペリアームス)”


「っ! “護れ(プロテゴ)”! ……なんだい、ポッターちゃん。ご挨拶じゃないか」

「……〝これ〟が欲しいんじゃなかったの?」

アニーはネビルを嘲笑するベラトリックス腹が立ったのか取り敢えずのところは〝武装解除呪文〟で黙らせ、〝予言〟を示しながら話を戻す。そして何故か始まるアニーの煽りターン。

「……ところで、話を戻すけどさ本当に虚勢だと思っているの?」

「……どういう意味かね?」

「さてね? ……でも、マルフォイ家のドラコ君は誰からボク達がここに来るのを聞いたのでしょうか?」

アニーは相手が〝予言〟を〝ご主人様〟──つまりは〝お辞儀さん〟の元へ持っていかなければいけない事を知っているので〝予言〟を盾に煽る煽る。

(……なるへそ)

〝かの〟ベラトリックス・レストレンジとルシウス・マルフォイを煽りに煽っているアニーだったが、ふと俺に目配せをしたその瞬間、アニーが二人を──≪死喰い人(デス・イーター)≫を無駄に煽っている意図が判った。

……時間稼ぎだ。

そうとなれば俺も何もはしないわけにはいかない。

――「……俺がアニーに付くからそっちは2・2・2で分かれてくれ。全員生き残る事だけを考えろ──いいな?」

「何…?」

「ドラコに情報源(ソース)について聞いてない? ……ボクの予想が正しいなら〝虫〟なはずなんだけど」

「……っ、どうやら貴様は不遜にも我々を(たばか)ったと思っているらしいが…」

アニーが時間稼ぎをしている内に人数割りを小声で6人に伝えておく。……すると、フレッドてジョージ、ハーマイオニーとルーナ、ネビルとジニー──といった塩梅でそれとなく身を寄せ始めた。無事俺の言葉が聞こえていたようだ。

……アニーに良いよう煽られてなお、手を出しあぐねいているベラトリックス・レストレンジを見て溜飲が下がったのか、ネビルも先ほどよりはいくらか落ち着いている。

(だが、これじゃあ──ちっ…)

内心で舌打ち。ある意味で意図していた状態ではあるが、こうも状況が膠着(こうちゃく)するのは(かんば)しくない。……こう大人数で固まっていたら〝救助されづらい〟のだ。

「……≪闇の帝王≫はお前の浅はかな考えは全てお見通しだぞ、ポッター」

「ボクの思考なんていくらでも〝お見通し〟してくれて結構結構。……でもさ、知ってる? 〝挑発〟って──のった時点でお終いなんだよ?」

「(アニー、こっちは良い感じに割れた。これから俺が1、2、3で隙をつくる)」

『了解、それから〝救助〟されるまで散開するんだね?』

「(その通りだ)」

「つべこべ言わず、あんたはその〝予言〟を寄越せばいいのさ──“来たれ(アクシオ)”!」

「“護れ(プロテゴ)”──おおっ、怖っ。……怖すぎてうっかり落として割っちゃいそうだ」

「(カウントいくぞ──1、2…3!)」


――“動け(ロコモーター)”


「落ち着けベラトリックス、それにポッターも──っ!?」

カウントが終わったので目についた棚を倒してやる。〝予言〟は棚の三脚の様な台座に置いてあるだけなので、そうなれば〝予言〟の込められたガラス玉は万有引力の法則によって落ちてくるわけで…。

「フレッド、ジョージ!」

「おうよ!」「了解!」


「“麻痺せよ(ステューピファイ)”!」「“麻痺せよ(ステューピファイ)”!」


――“護れ(プロテゴ)”!

――“護れ(プロテゴ)”!


「甘いよ!」

(隙在りっ!)


――“石になれ(ペトリフィカス・トタルス)”!


「うしっ!」

アニーの言葉を瞬時に悟ったフレッドとジョージは、夥しい数の〝予言〟が降り注ぐ中、フレッドはベラトリックスに──ジョージはルシウスに〝失神の呪文〟を放つ。しかしどちらも〝盾の呪文〟で防がれる。……が、そこでベラトリックスが気を抜いたのが判ったので、ベラトリックスの鳩尾(みぞおち)目掛け〝全身金縛り呪文〟を放ってやる。

「っ!!」

俺の杖がどこに向いているかをベラトリックスが気付いて改めて〝盾〟を張ろうとするが、その時には既にに遅くて。呪詛はベラトリックスの杖腕をくぐり抜け寸分の狂いなく鳩尾に刺さる。

するとベラトリックスは[I]の字で棒立ちとなり、そのまま後ろに倒れ込んだ。……ほんのちょっと多目に魔法力を込めたので、ベラトリックスの実力を加味したとしても少なくとも1時間から2時間くらいは解けないだろう。

ルシウスはベラトリックスが無力化された事に驚いたが、それも束の間。その杖先をネビルへと向けて…


――“麻痺せよ(ステューピファイ)”


「プ、“護れ(プロテゴ)”!」

ルシウスが放った〝失神術〟の光線を何とかネビルは防ぐ。〝魔法ケイドロ〟での成果は出ているらしい。……などと、ネビルを上から目線で評価している間にアニーがフォローに入っていた。

「ボクが受ける! “妨害せよ(インペディメンタ)”──皆は散開して!」

「……“護れ(プロテゴ)”──逃がすな! 何としてでも捕まえろ!」

アニーの指示で今もなお降り注いでくる〝予言〟を避ける様に二人一組で散っていく6人。ルシウス・マルフォイの指示で他の≪死喰い人(デス・イーター)≫どもも俺達の確保しようと本格的に動き始めた。

……本来、今回の様に個人個人の戦力が拮抗していて頭数が劣っている集団戦に()いて戦力の分散は悪手であることが多いのだが、今回に至っては悪手とはならない。

――「よくやった。……後は〝我々〟が引き継ごう」


――“武器よ去れ(エクスペリアームス)”

――“護れ(プロテゴ)”


「シリウス・ブラック…っ!」

不意の第三者の声と共にルシウス・マルフォイの横面へ〝武装解除呪文〟が到来する。ルシウスはその〝武装解除呪文〟自体は防御したが、その声の主──シリウスに対して毒吐()く。

他の散っていた≪プロメテウス≫のメンバー達にも〝騎士団〟のメンバーが援護に入っているのが気配で判る。

……要は、〝いつから≪プロメテウス≫のメンバーだけで魔法省にやって来ていたと錯覚していた?〟と云うことだ。

フレッドとジョージに父さんが、ジニーとルーナにはトンクスがハーマイオニーとネビルにはリーマスと云った具合にフォローに入っていく。

「ハーマイオニー達の事はこっちでフォローする! ロンとアニーは上へ!」

「シリウス──判ったっ! 行こうロンっ!」

「応よっ!」

彼我の戦力を単純計算するなら、≪プロメテウス≫のメンバー二人で≪死喰い人(デス・イーター)≫1.5人分くらいで、そこに≪不死鳥の騎士団≫のメンバーが加わるのだから、形勢はすでに決まったと云っても良いだろう。

俺と顔を見るにアニーも──同じくそう考えたらしいシリウスの提案を受け入れた俺とアニーはこの場をシリウス達に任せ、この鉄火場を走り抜けてエレベーターに乗り込んだ。

SIDE END 
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