普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
223 魔法省へ
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
〝ふ・く・ろ・う〟は1日一教科のペースで行われ、全体的な期間は二週間にもわたる。……当然ながら筆記試験だけではなく、実技に関する試験もあり、筆記試験は午前──実技試験は午後と云う塩梅だった。
全体の出来としては、殆どの教科で〝O(大いによろしい)〟を獲れたと半ば確信している。
……特に〝O〟を獲れたと確信出来ているのは〝闇の魔術に対する防衛術〟の教科で、筆記の出来もそうだが──在りし日にダンブルドア校長が言っていた〝力添え〟のおかげなのだろう、≪プロメテウス≫のメンバーに〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟を使わせてもらえるチャンスを貰えたのだ。
(あの時のアンブリッジの顔ときたら…)
〝闇の魔術に対する防衛術〟の試験の事を思い出し、思わず昏い笑みがこぼれそうになるのを堪える。
〝守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〟は〝ふ・く・ろ・う〟のレベルを遥かに越えた呪文なので特別点が貰えたのである。……それもアンブリッジの目の前で…。
(……これじゃあ、魔法省側からしたら良い面の皮だろうな…)
魔法省はダンブルドア校長の足を引っ張るためにアンブリッジをホグワーツを送り込んできた。……それがこのザマである。
……そして全てのテストが終わり、≪プロメテウス≫のメンバーは〝ふ・く・ろ・う〟や〝い・も・り〟を終えられたという事でちょっとした打ち上げを開く事になり、いつものごとく〝別荘〟へ。
≪プロメテウス≫のメンバー達もよほど〝ふ・く・ろ・う〟や〝い・も・り〟のストレスを感じていたのか、そのどんちゃん騒ぎは8時間近くも続いた。
軈て、下級生を中心に──眠くなった順にそれぞれの部屋に散っていき、ついぞ会場に残ったのはその場で眠りこけている数人と、遠い席で呑んでいる数人と今も俺の対面で蜂蜜酒を呑んでいるアニーだけとなった。
(バタービールも良いが、蜂蜜酒も中々…)
俺も俺でこのパーティーを楽しんでいて、もう何回空にしたか判らないカップに蜂蜜酒を注いでいると、アニーがおずおず、と口を開いた。
「……ねぇ、ロン」
「ん? どうかしたか、アニー?」
「……今夜、だね…」
「ああ」
〝今夜についての事〟だとすぐ判った俺は、短く返答するだけに留めておく。
「アニーには言うまでも無いだろうが、時間は…」
「判ってるよ、今夜10時に〝あそ〟に集合でしょ」
一応集合時間について訊ねようとしたが、どうやら大きな節介だったらしい。
……今日、俺とアニーは〝別荘〟を出て──10時になったら魔法省へ向かう。ダンブルドア校長の公の場に於ける発言力を復活させる為に〝お辞儀さん〟を引っ張り出そうと云う魂胆だ。
それでも、やはり不安があるのだろう──いつもより杯を傾けるペースが早いアニー。……然もありなん、これから罠であることが十中八九確定〝させてある〟場所に向かうのだからアニーの不安も尤もである。
(……ぶっちゃけ、≪プロメテウス≫のトップ10から何人か連れてっても戦力として申し分無いんだが──まぁ、無意味か)
一昨年、クィディッチ・ワールドカップを襲撃した≪死喰い人(デス・イーター)≫どもを思い出しながらそんな事を考えるも、直ぐ様その考えを棄却する。
〝お辞儀さん〟は、アニーに〝予言〟を取らせたいがゆえ、今夜の魔法省は人払いがされているのだろうが、ハーマイオニーとネビルだけならまだしも──十何人でぞろぞろと魔法省を闊歩するなんてさすがに考えられない。
(……まぁ、いつもみたいに〝流れに身を任せ精神〟でいくしかないか)
ある意味では思考停止な考えではあるが、結局は〝一歩〟を踏み出さなくてはならないのだ。
そして〝別荘〟を出る時間がやってくる。
……しかし、この時は脳内で掃き捨てた考えが現実になるとはちっとも考えていなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「どうしてこうなった…」
「あー」 魔法省への入り口となっているらしい電話ボックスの近くで、俺とアニーはセストラルから降りては、したり顔でこちらへ歩いてくる〝6人〟を見ながら頭を抱えた。
10時にアニーと《叫びの屋敷》から箒でホグワーツから魔法省へと飛び、そのフライト自体は恙無く成功した。
そう、〝フライト自体〟は成功したが、〝自体〟と付いている事から判るかもしれないが──〝イレギュラー〟があったのだ。その〝イレギュラー〟に気付いたのはこの場に着いた直ぐの事で。
「……こんなことになるなんて、考慮してないよ…」
「俺もだよ」
(……しかも〝二人〟多いし──マジでどうしてこうなった…)
来たのはハーマイオニー、ネビル、ルーナ、ジニー、フレッド、ジョージの〝6人〟で。俺とアニーだけが先行して──フレッドとジョージがホグワーツから退学していなかったがゆえのバタフライエフェクトなのは何となく理解したが、どうしてこうなったのかが判らない。
……それ以上に〝どうやって追跡出来た〟のかも判らなかった。
「ありがとう」
(……セストラル──あっ)
何となくルーナがセストラルを撫でながら礼を述べるところを見ていたら、不意にどうやって追跡出来たのかが判ってしまった。
「……追って来た方法は俺とアニーの〝匂い〟か?」
「そうだよ、セストラルにアンタ達の所持品の匂いを嗅がせたんだ」
いけしゃあしゃあと答えるルーナ。ともすれば、連鎖的にいろんな謎が解けてくる。
恐らくだがフレッドとジョージが“忍びの地図”で俺とアニーがホグワーツを出るタイミングを観測していて、それからセストラルに俺とアニーの匂いを追わせたのだろう。……それも──〝一定の距離を空けながら〟。
俺がここに到着するまで6人の気配に気付けなかったと云う事は、1Km以上離れていたと云うことだ。
……〝魔法ケイドロ〟などのレクリエーションによって、俺が気配察知能力に長けているのは公然の秘密となっているが、アニーを除きその〝範囲〟までを詳しく知っているのはハーマイオニーくらいなもので…。
「ハーマイオニー」
「言わないで、ロン」
(……マルフォイあたりか…)
じとり、とハーマイオニーを見てやればハーマイオニーは顔を逸らす。そこでハーマイオニーが──と云うより、ここに来た皆が誰かしらに──多分マルフォイあたりに唆されてここに来る事を決めたのだと推測出来た。
「……ロン、時間」
「そうだな」
アニーに言われ時間が差し迫っていたのを思い出す。……追い返すのにも問答している時間も既に無い。
……それに、マルフォイに焚き付けられてここに来ている以上≪死喰い人(デス・イーター)≫についても承知なはずなので、〝ここまで来てセストラルにくくりつけて追い返すのも野暮か〟とも思ってしまったのだ。
「皆、聞いてくれ。俺とアニーはダンブルドア校長の頼みで〝魔法省〟に来た。……そして皆も判っている通り、今〝魔法省〟に≪死喰い人(デス・イーター)≫どもが罠を張っている公算が高い──そこまではいいな?」
頷く一同。……ふとアニーがどんな顔をしてるかが気になり、アニーを見れば、アニーもまた俺と同様に諦めた様な──欧米人がよくやるようなポーズを取っている。
「……はぁ…」「……はぁ…」
アニーもまた、本格的に諦めたらしく、俺と同じタイミングでため息を吐いてから、皆に指示を出すのだった。
SIDE END
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