普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
220 帰ってきたハグリッド
前書き
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
スリザリンとのクィディッチの試合があった。……あったのは良い。
クィディッチのピッチでグリフィンドールとスリザリンが顔を合わせるまでに、両寮で凄まじい妨害合戦が──スネイプ先生がピッチを独占したり、呪いを直接的に掛けてきたり、〝負け犬の遠吠えが得意だワン〟と〝誰かさん〟をモチーフとしたキャラクターに呟かせているステッカーをばら蒔いたり、とか色々あったのだがそれもいい。
……スネイプ先生のピッチの独占はグリフィンドール・チームの主力メンバー全員が≪プロメテウス≫に所属していて〝在ったり無かったり部屋〟に箒を持ち込めば済む話だったし、呪いを掛けられた相手も≪プロメテウス≫に所属していたので、〝魔法ケイドロ〟で鍛えられた〝対・不意打ちスキル〟が仕事をしたらしく返り討ちだったが…。
閑話休題。
……ちなみに、ステッカーのモチーフ元の〝誰かさん〟とはフォイのことで──尚且つそれをデフォルメ化しているので、本人からしたら憤懣モノだろう。……何故か人気だったが。
また閑話休題。
スリザリンとのクィディッチの試合があったのは良い。
ただ、その試合内容がそれはもうひどいもので、簡潔に述べるなら〝翔んだ〟〝探した〟〝見つけた〟〝追った〟〝捕った〟〝勝った〟と、6つの要素だけで表現が可能な試合だった。
去年は〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟で潰れたりしていたので──地味に初めて俺がシーカーを務める対スリザリン戦だったのだが、スリザリン側が〝ウィーズリーこそ我が王者〟と挑発してくれたので、テンションが上がりハッスルしすぎてしまった結果が、以下の有り様。
スコアにして150対0。試合時間にして約7分。……云ってしまえばパーフェクトゲームである。
……当然だが150点がグリフィンドールで0点スリザリンだ。スリザリンからしたら二年前の悪夢以上の悪夢だったろう。パーフェクトゲームにしてしまった俺が言っていい事ではないが──これはひどい。
マルフォイなんかも、終了後に負け犬の遠吠えよろしく絡みに来ると思っていたのだが、今日の試合がよほど堪えたらしく、そうはならなかった。
スリザリン戦の所感についてはそこらにしておいて、俺──否、俺とアニー、ハーマイオニーの三人の現状だ。
俺達三人は、そろそろ三人で被るには手狭さを覚えてきたアニーの“透明マント”を被りながらハグリッドの小屋へと向かっていた。ダンブルドア校長に巨人の住みかへ使者として遣わされていたハグリッドがホグワーツに帰ってきたのだ。
……ちなみに、雪が積もっているので足跡の処理をハーマイオニーに頼むのも忘れていない。
軈て【禁じられた森】の近くにあるハグリッドの小屋に辿り着いた。小屋の中にハグリッドの気配が感じられるのを確認してノックする。
「誰だ?」
「ハグリッド、ボクたちだよ」
「その声はアニーだな? しっかし姿が見えんが──ああ、〝あのマント〟を被っちょるのか」
「~~~っ!!」
戸を開けて小屋から顔を出したハグリッドを見たハーマイオニーが声にならない悲鳴を上げる。
「ハグリッド、どうしたの?」
「なんでも無ぇ。大丈夫だから安心してくれ、ハーマイオニー」
強がるハグリッド。だが、ハグリッドは控えめに云っても血塗れの傷だらけだった。俺は言わずもがなだとして、円もグロに対して耐性が有ったがハーマイオニーからしたらショッキングな光景だったらしい。
「ああ、お茶はボクが用意するよ」
「じゃあ俺は茶請けを用意しようか」
ハグリッドの痛むだろう──その体に鞭を打たせるわけにはいかないので俺とアニーで紅茶とお菓子を用意する。……お菓子とは云っても、城の厨房務めの屋敷しもべ妖精からちょくちょく融通してもらっているクッキーやマカロンなどの簡単なお菓子だがハグリッドは喜んでくれる。
……とりあえず一息ついた頃、ハーマイオニーがハグリッドが訊ねた。
「……〝それ〟、巨人にやられたの?」
「二人とも、ハーマイオニーに話したのか?」
ハグリッドは詰るような──とまではいかないが呆れた様な視線で俺とアニーを見るが、〝それはない〟と、二人して首を振って否定する。
「いや、マルフォイが訳知り顔で〝巨人にちょっかい〟云々って言ってたからな」
「それでか…。……全くマルフォイの倅も余計な事をしよる…」
「ボクもそれは同感。……で、マルフォイが知ってたって事は、ルシウス・マルフォイと──とは限らないとしても≪死喰い人(デス・イーター)≫の誰かと巨人の住みかでかち会ったんだね?」
「まぁな。……マクネアってのが居た。あいつぁ一応魔法省勤めだが、〝危険生物処理委員会〟っちゅう、面白い生き物を〝法〟の名の許に殺してまわる残酷かつ薄情な組織の一員だ」
ハグリッドの云う〝面白い生き物〟がどんな生き物かは、この際さておいて──アニーの問いにハグリッドは声を重くしながら答える。……そしてこれまでの出来事を訥々と語り始めた。
最初はマダム・マクシームとのノロケ混じりの逃避行の話だったが、軈て巨人達の集落の話しに移ろう。
巨人の集落に着いたハグリッドは、まず友好の証としてダンブルドア校長から持たされていたらしい〝グブレイシアンの火の枝〟──〝永遠の火〟をカーカスと云う巨人の首領に渡したとのことだ。
……ちなみ巨人の生息数は、昔は沢山居たそうだが、今では大分減ったらしい。そのおおよの理由は同士討ちとのこと。
閑話休題。
ハグリッドが巨人に〝グブレイシアンの火の枝〟を渡したと語ったあたりで、ハーマイオニーから実に〝尤も〟な疑問が出る。
「〝グブレイシアンの火の枝〟──〝永遠の炎〟ね。……でも巨人にそんなものなんて渡して喜ぶのかしら?」
「ああ、大層喜んどった。カーカスもダンブルドアの巨人保護運動を知ってるのか悪い様な感じ見せんかった。それからゴブリン作の壊れねぇ兜を贈った。……そん時にゃ、もう俺はダンブルドアからの任務を遂行出来たと思った──だが、その日の晩、全部がダメんになった」
「≪死喰い人(デス・イーター)≫が、そのカーカスを殺したとか?」
「……いや、それならまだ諦めもついた」
俺が問えば、ハグリッド悲しげな顔で溜め息を吐きながらカーカスとやらが死んだ本当の理由を語る。どうやらハグリッドが語るには、巨人の頭が死んだのは≪死喰い人(デス・イーター)≫の所為と云う訳では無かった様だ。
……そこで先ほどハグリッドから聞いた〝巨人が生息数を減らしている大部分の理由〟が俺の頭に過った。
「カーカスを殺ったのは、ゴルゴマスって奴だ」
ハグリッドは手刀でとんとん、と首のあたりを叩く動作をする。……恐らくだが比喩的な表現ではなく、本当にカーカスの首は〝ポトリ〟と逝ったのだろう。ハーマイオニーもそれが判ったのか、また顔を白くする。
ハグリッドの話はまだ続く。
「そして、そのゴルゴマスがカーカスに代わって頭になってからカーカス渡すはずだった最後の贈りものをゴルゴマスに渡そうとしたんだが、俺はカーカスに渡した被ったゴルゴマスのにやついた顔を見た瞬間、無理だと悟ったな」
「その時のいざこざで、そんな傷まみれなのね」
「……あー、うん…。……まぁ、そんな感じだな」
(……ん…?)
ハーマイオニーが問い、ハグリッドの口から出たのはなんとも歯切れの悪い答えで。
「……えへん──とりあえず、オリンペが居なかったら俺もここには居りゃせんかったかもしんねぇ。あん時の──ゴルゴマスの眼に〝結膜炎の呪い〟をぶつけた時のオリンペは凄かった…」
……ハグリッドもこちらが訝っている事を察したのか、誤魔化すように咳払いして、そう話を続けた。……またもやノロケ混じりに。
ハグリッドから漂っていたビミョーな雰囲気を払ったのはハグリッド自身だった。
「……で、一旦はその集落から離れた」
「じゃあハグリッドはその──ゴルゴマスってのと友好関係を結ぶのは諦めたの?」
「ああ、ゴルゴマスとはな。多分だがゴルゴマスと≪死喰い人(デス・イーター)≫は繋がっていたしな──そして、それからオリンペと相談して≪死喰い人(デス・イーター)≫と出会わないように注意しながら夜中にゴルゴマスを頭にしたくなかった連中に声を掛けた。……そして〝一度〟は7人ほどがこちらの話に乗ってくれた」
「〝一度〟は…? って事は…」
「アニーの想像通りだ。ゴルゴマスに襲撃されてな、それ以来俺とオリンペに見向きもせんくなった。……まぁ、連中にダンブルドアからの言葉は伝えたし、それで任務は果たしたとするしかなかった」
苦虫を噛むような顔でハグリッドは締めた。どこからどう見ても納得しているようには見えない。
「ハグリッド…」
「そう気にすんな、ハーマイオニー。……ゴルゴマスの支配が嫌になって、ダンブルドアの言葉を覚えてた奴らが山から降りてこっちに合流するだろうさ」
そこからはハグリッドも口をつぐみ、俺達ももう何も訊けなかった。それからアンブリッジが小屋に訪れ、有耶無耶の内に小屋から離れる羽目になるのであった。
……《禁じられた森》に居る〝巨大な気配〟について訊くのも忘れていたのを思い出したのはベッドに潜る直前の事だった。
SIDE END
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