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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  215 15歳、リトル・ウィンジングから


SIDE アニー・リリー・ポッター

「……19時──もうすぐか」

時は7月31日の夕方。今日はボクの15回目の誕生日で、場所はイギリスのサレー州、リトル・ウィンジングがプリベット通り4番地──要はダーズリー邸の、そこに()いての、ボクの私室。

自慢ではないがボクの部屋はそれなりに片付いている。大して面白くもない部屋内に、興味が引かれるものが有るとするなら、大きめの鳥籠の中で静かにしている純白の梟、アルビオンくらいなものか。

そんな──控え目に云ってこじんまりとした部屋で、ボクは時計を見ながら人を待っていた。今や≪不死鳥の騎士団≫の本部となったシリウスの家までボクを送ってくれる〝護衛〟だ。

「それにしても──ふふっ」

〝護衛〟と云う単語(ワード)が頭に浮かび、思わず破顔してしまう。護衛が必要な身分となったから──と云うわけではないが、〝護衛〟が必要となった理由に対して些か不謹慎ではあるが心を弾ませていた。

その理由は大まかに云えば、15年ほど前にダンブルドア校長先生がトレローニー先生から聞いたと云うとある〝予言〟のせいである。

―〝闇の帝王を打ち破る力を持った者が近付いている…。七つ目の月が死ぬ時、帝王に三度抗った者たちの間に産まれる。……そして闇の帝王はその者を自分に比肩する者として(しる)すであろう。彼の者は闇の帝王の知らぬ力を持ち、闇の帝王を叡知(えいち)を持つ赤き龍と共に玩弄(がんろう)するであろう。……一方が他方の手に掛かって死なねばならぬ。なんとなれば一方が生きる限り、もう一方は生きられぬ…。……その者、赤き龍の寵を受けし者なり〟―

以上がダンブルドア校長先生が聞いたらしい〝予言〟なのだが、ボクが破顔させている理由は一番最後の(くだり)にある…

「〝その者、赤き龍の寵を受けし者なり〟か──えへへ」

部屋に鏡が無くて良かった。ボクが今どんな顔をしているかはアルビオンの心無しか呆れたような顔で判る。きっとさっきよりもだらしなく緩ませているのだろう。

さてこの〝予言〟だが、ボクはおおよそ当たっていると思っている。根拠としては〝そして闇の帝王はその者を自分に比肩する者として(しる)すであろう。〟と云う文言通り、ボクには〝傷痕(しるし)〟があるからだ。

そしてこの〝予言〟自体からも他に判ることがある。

ダンブルドア校長先生の話ではこの〝予言〟は、15年前──人の出入りがそれなりにある店でなされたと云う。

……〝15年前〟と云えばボクの両親がヴォルデモートによって殺される年の一年前であり──どの様な手段を用いたかは判らないが一年もあるならピーター・ペティグリューを探し出すのも不可能ではないはず。

(……あ、でもピーター・ペティグリューが自分からヴォルデモートに接触していった可能性もあるか──っ)

〝15年前、凋落(ちょうらく)するまではヴォルデモートの勢力の最盛期だったらしいし、その公算も高そうだ〟と適当なところで思考に区切りを着けようした時、タイミングの良い事にダーズリー邸の玄関が開く音が聞こえた。……きっと〝護衛〟の人達が来たのだ。

そんなボクの予想は当たっていて、玄関が開かれてから一分ほどした後、ドアの向こうから(しわが)れた声で呼び掛けられる。聞き知った声──マッド‐アイ・ムーディこと、アラスター・ムーディの声だった。

――「アニー・ポッター、居るか」

「居ます」

……〝都合よく〟ボクを除く3人が出掛けていて助かった。何しろムーディ先生の(かんばせ)にはボクでも目を剥いたほどだったから…。

閑話休題。

「開けるぞ」

「どうぞ」

一応ドアから離れて、ドアの方に杖を向けながらムーディ先生(?)にドアを開かせる。……不躾(ぶしつけ)な態度かもしれないがドアを開けたムーディ先生はそんなボクの対処に気を咎めた様な様子ではなく、寧ろ感心した様な顔をしていた。

「ほぅ、些か無用心かと思ったが杖は準備している辺り不意討ちに対しての用心くらいは出来ているらしいが…」

「やぁ、アニー」

「ルーピン先生?」

「……しかし、多人数で来ている事を想定していなかった様だが──その辺りはまだ未熟なようだな」

正味な話、ムーディ先生の言う通りで。入室してきたのがムーディ先生の他に、二人も居た事に対して驚かされた。……もちろん、片方が知っている人物──リーマス・ルーピンその人だったからと云う事もある。

〝護衛〟とは云っても一人や二人で──それもウィーズリーおじさんやシリウス辺りが来ると思っていたがボクのそんな予想は容易く外されたのだ。

〝護衛〟としてリトル・ウィンジングに来てくれたムーディ先生とルーピン先生──そして知らない女性だった。

……しかも階下からしないはずの人の息遣いの様な音が少なからず聞こえるので〝護衛〟の人はまだ居るらしい。

(〝赤き龍の寵を受けし者〟──ねぇ)

今度は浮わついた気分ではなく、階下に耳を澄ませながら改めてボク自身の〝価値〟を改めて噛み締めていると、杖を持っているので魔女なのだろう──知らない女性がテンション高めに話し掛けてきた。

「わぁ! 貴女がアニー・ポッター? 写真で見たリリーにそっくりだわ」

「は、はぁ…。貴女はボクをご存知かもしれませんが、ボクは貴女を存じ上げません。……ですので、不躾なのは承知ですがどなたか()いても?」

「待て、紹介なら下の連中と纏めてやる。時間は有限だぞ」

「はぁ…」

ムーディ先生に言われ、予め纏めておいたトランクとアルビオンを持ち部屋を出る。

〝勝手知ったるや〟、と云った(てい)でこのダーズリー邸を歩くムーディ先生に続いてキッチンまで降り──て、明らかになった〝護衛〟の人数に改めて驚かされた。

……そこには、一緒に降りて来た3人の他に、6人もの魔法使いや魔女が居たのだ。驚愕してしまったボクを誰が責められようか。

ボクが皆を視認するのを確認していたのか、(やが)てムーディ先生が口を開いた。

「諸君、写真で既に顔を見せた思うが、こやつがアニー・ポッターだ。……しかしルーピン、こやつがちゃんとアニー・ポッターかどうか確認してくれ──≪死喰い(デス・イーター)≫がこやつに扮していたら笑い話にもならんからな」

「判った。……そうだな──アニー、君は〝何を恐れているか〟を教えてくれ」

「ボクが〝恐れているもの〟…?」

〝ボクが恐れているもの〟──となルーピン先生からの抽象的な質問に首を傾げかけるが、ふとルーピン先生がホグワーツで〝闇の魔術に対する防衛術〟の教鞭(きょうべん)()っていたのを思い出した。

ついでに、授業で習った〝マネ妖怪〟について習った事も…。

「ボクは〝鉄骨〟が怖いかな」

「……答えてくれてありがとう、アニー──アラスター、この子はアニー・ポッターに間違いないようだ」

ムーディ先生は「そうか」と、鷹揚(おうよう)に頷くと〝護衛〟の皆をボクに紹介してくれた。

「さて、簡単ながらポッターにも〝護衛〟を紹介しよう。ルーピンと──一応私は知っているだろうから除外して、さっき部屋で会ったそこの紫髪の魔女からだな。そいつは…」

「マッド‐アイ、自己紹介くらいは自分で出来るわ。……アニー、私はニンファドーラ・トンクスよ、〝ニンファドーラ〟とは呼ばないで」

「よろしく、トンクス」

紫髪の魔女──トンクスを皮切りとして次々と魔法使いや魔女達が自己紹介してきた。

「初めまして、キングズリー・シャックルボルトです」

と、まずは背の高い黒人の魔法使いが落ち着いた口調で。

「エルファイアス・ドージ」

二番手として掠れた声の魔法使いが短く自己紹介を終える。

「ディーダラス・ディグルと申します──お会い出来て光栄です…っ」

テンションと声が高めの魔法使い。紫のハットが特徴的だ。

「エメリーン・バンス」

マクゴナガル先生を彷彿とさせる色のショールを巻いた魔女がディグルさんに堂々とした態度で続く。

「スタージス・ポドモア」

亜麻色と云うのか、はたまた麦わら色と云えばいいのか──そんな髪を豊かに蓄えた四角い顎の魔法使いが最後の六人目の人に自己紹介のバトンを渡す。

「ヘスチア・ジョーンズ」

六人目、つまり最後の魔女は黒髪で頬がピンク色なのが目についた。

そんなこんなで軽くだが自己紹介も終わり、時刻も20時を回ったところでダーズリー邸の前に出て、ボクの〝護送方法〟についての話になる。

……ちなみにボクはまだ夕食を済ませていないが、〝本部〟でウィーズリーおばさんが用意してくれているらしい。

閑話休題。

「さて方法ついてだが──箒で飛んでいこうと思っている。ポッターは相当な飛び手だと、ルーピンから聞いているぞ」

「ジェームズもびっくりするだろうと思うくらいにはね」

ルーピン先生からの称賛にこそばゆい気持ちになっていると、ムーディ先生は改めてボクに向き直り、そして神妙な面持ちになっていて…

「良いか、ポッター。私達の任務は〝本部〟までお前さんを無事届けることだ。もし誰かの身に何があってもお前さんは飛び続けろ」

「やめてよね、マッド‐アイ。縁起でもない」

「大丈夫ですよ、今夜は誰も殉職しません」

「判っておる、ただ私が言いたいのは…」

「〝油断大敵!〟──ですよね?」

ボクがムーディ先生の言葉尻を奪うと、ムーディ先生は鷹揚に頷く。そして何かを忘れていたようでムーディ先生はポケットから何か──紙切れの様なものを取り出す。

「ああその通りだ。……ああそうポッター。お前さんに〝これ〟を見せるのを忘れていた。それを読んでこの場で覚えろ」

ムーディ先生から渡されたのは紙切れではなくて羊皮紙で、その羊皮紙には簡潔にこう書かれているだけだった。

――――――――――――――

≪不死鳥の騎士団≫の本部は、ロンドンのグリモールド・プレイス12番地に存在する。

――――――――――――――

(グリモールド・プレイス12番地ってもしかして…)

ボクは羊皮紙に記されている住所に一瞬だけ瞬かせる。知っている住所で──実際に一年前に訪れた事がある住所でもあったから。

……とどのつまり、≪不死鳥の騎士団≫の本部は…

「シリウスの家」

SIDE END 
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